(やっぱり……帰っちゃったのかな)
長時間、野外で待っていたせいで、いい加減、身体は冷えきっている。学校にいるまみのことも心配だ。けれど、もしも亜季がまだ、トイレに閉じこもって泣いているのなら、置いて帰るわけにはいかない。どうしたものかと悩んでいると、洗面台で水を使う音がして、トイレの奥から亜季が出てきた。
「あ……よかった。大丈夫?」
瞼は少し腫れぼったくはあるが、もう涙は綺麗に拭かれていた。しかし、その顔には、何か思いつめたような表情が浮かんでいる。
「トシくん、ちょっといい? こっち来て」
亜季は寿治の傍らに近寄ると、手を取ってぎゅっと握り締めた。そのまま無言で、女子トイレの入り口前にある『だれでもトイレ』のドアを開けると、中へと身体を滑り込ませる。
「えっ、亜季ちゃん、どうしたの?」
「いいから」
亜季の迫力に押されて中へと入ると、亜季は素早く扉を閉めて鍵をかけた。繋いでいた手を解いて寿治に抱きつくと、ぶつけるように唇を重ねる。
「あっ……ダメだよ」
「なんでダメなの? だって亜季はトシくんの彼女でしょ? 彼女がキスするのって普通のことだよ」
「だけど……」
「その先は言っちゃダメ」
寿治の口を塞ぐように、再び亜季がくちづけた。
(あ……なんか……この感触、久しぶりだ……)
身体が憶えているというのだろうか。慣れ親しんだ亜季の唇の感触はしっくりと馴染んだ。甘酸っぱい果実のような亜季の匂いがふわりと漂ってきて、途端、亜季と過ごした楽しい日々が脳裏に蘇る。
「トシくん、亜季、トシくんのことが好きだよぉ」
亜季は唇を離して切なさげに呟くと、もう一度唇を合わせた。今度は、すぐにぬるりとした舌が入り込んでくる。いつも以上の積極さに亜季の切実さと健気さを感じて胸がジンと熱くなる。
薄目を開けて亜季の顔を見ると、ぎゅっと顰められた眉毛の下、目尻にまた少し涙が浮かんでいるのがわかった。けれど、亜季の舌に誘われるがまま、寿治も舌を絡み返すと、眉根に入っていた力が抜けて亜季の顔がほころんできた。
(久しぶりの亜季ちゃんとのキス……気持ちいい……)
口の中に広がる馥郁とした芳香に身体中の力が抜けてしまう。寿治を求めるように、歯茎をノックするようにトントンと叩いた後、上あごまでも這い舐める亜季の舌技に、とろんと蕩けるような劣情が沸き起こってくる。
「あっ……」
くちゅくちゅと舌を味わっていると、股間に亜季の手が触れた。デニムパンツの上から円を描くように動いて寿治の性感を刺激してくる。
(やばいよ……そんなことされたら……)
幾度も身体を重ねて寿治の性感の居所を知っている亜季だ。亀頭の段を指先でなぞられ、睾丸を手のひらで包み込まれてやわやわと刺激されると、たちまち肉竿に血液が流れ込んで、硬くなってきてしまった。
「おちんちんが、亜季に触られるの、気持ちよがってる……」
亜季は唇を離すと、寿治の肩を軽く押して、壁へと押し付けた。その場に腰を下ろすと、しゃがんだ体勢で寿治のウエストに手を伸ばしてするするとズボンを下ろす。
「あ……亜季ちゃん、いったい何を」
「ん? 気持ちいいことだよ……トシくんの大好きな気持ちいいこと」
亜季は下半身の膨らみに頬を当てると、トランクスの上からでもはっきりとわかる膨らみをじりじりと指先で辿った。すると、ぽちりとした染みがたちまち布に浮き上がって変色する。
「あらら、もう濡れちゃってるよ?」
「あ……う……」
亜季がその染みを、ほっそりとした指でちょんと突くと布越しに鈴口が刺激されて身体がぶるると震えた。
公共の場所でこんなことをしていてはいけないと思いながらも、火照った身体が理性を抑え込む。
「うわぁ、すごい硬くなってる。トランクスがこんなにパンパンになって。きついでしょ? 脱がせてあげるね」
「あ……」
亜季はトランクスの腰ゴムに手をかけると下ろした。途端、カチコチに勃起したペニスがぴょこりと曝け出される。
(ど、どうしよう……)
そもそもは別れ話をするつもりで来たのだ。なのに、なぜ下半身丸出しにされてしまっているんだろう。しかし、靴の上には脱がされたデニムパンツとトランクスが溜まり、身動きも取れない状態だ。
「ちょ、ちょっと待ってよ、亜季ちゃん」
「ダーメ、待てないもんっ」
すっかり本来の明るさを取り戻した亜季が、剥き出しになったペニスに手を伸ばすと亀頭のクビレに指を絡みつけた。亜季の指が触れた瞬間、肉竿が馬鹿正直にきゅんと上を向く。
「ほらぁ、おちんちんだって、喜んでるよ」
冬休みだからだろうか、パールピンクのマニキュアが施された指先が大人っぽくてぞくっと背筋が慄いてしまう。
「あ……ダメだよ……ダメなのに……」
「ダメなことなんて、何もないもん。だってトシくん、気持ちいいの好きでしょ? 亜季、知ってるよっ」
積極的なクラスメイトは、人差し指を亀頭の裏側に当てると、裏筋を爪先で辿っていった。陰嚢が疼く快感に、先端からカウパー液が浮き上がって鈴口の周りに垂れ、ぬらぬらと淫猥に光る。亜季はそこに顔を近づけると、桃色の舌を出してぺろりと舐め取った。
「あ……あぁっ」
柔らかな舌の感触に、ビリビリと痺れるような快感が背筋に奔った。膝がガクガクと笑い、頭の中が真っ白になる。