彼女が制服を脱いだら 清楚な学級委員と快活巨乳同級生と女教師

「前に住んでた山梨の山だよ、美術室の窓から見えたんだ」

カンバスに描かれているのは、故郷の山々だ。前の学校にいる時に描き始め、引っ越し前には仕上げるつもりだったのだが、結局間に合わなかったのだった。

途中で放り出すわけにもいかず、とりあえずの完成を目指して描き続けているものの、この教室から外を覗いても、ビルとその隙間からかろうじて見える狭い空しか見ることができない。

「へぇー、いいところに住んでたんだねっ!」

「何もない街だったけど、自然だけはね」

亜季と会話しながらも、気になるのは窓の外だ。まみの姿をもっと見たくてそわそわしてしまう。

「もうっ、トシくんってば、亜季と話してるのに、なんか上の空なんだからぁっ!」

寿治の心ここにあらずの態度に、亜季が拗ねたようにぽってりとした唇を尖らせた。

「山川くん、片付けが終わったら、帰る前に美術準備室に寄ってくれる?」

「はい、吉永先生」

部活を終えて、使った道具を片づけていると、絵里子に呼び止められた。なかなか帰ろうとしない亜季とのおしゃべりに時間を取られ、今日もあまり進まなかったカンバスを美術室の隅へと移動させると、準備室へと向かう。

「失礼します」

ノックしてドアを開けると、ぷんと香ばしい珈琲の匂いに迎え入れられた。

大小さまざまなイーゼルや頭だけの石膏像、卒業生たちが残していった絵などがところ狭しと置かれている。絵の劣化を防ぐためか、カーテンが閉められていて、そのせいか、少しひんやりとした。

絵里子は壁に沿って置かれたソファに座って珈琲を飲んでいた。茶色い革製で、かなり年季の入った代物だ。

「山川くんって珈琲、飲める?」

「あ、はい、ありがとうございます。いただきます」

部活を終えてちょうど喉が渇いていたところだった。寿治の返事を聞くと、絵里子は立ち上がり、窓際に置かれたコーヒーメーカーからカップへと珈琲を注いだ。テーブルの上にカップを置くと、寿治を手招きする。

「転校してきて、もう二週間になるけど、学校には慣れたかな?」

「はい、みんなが親切にしてくれるんで、助かってます」

勧められるがままにソファの右隣へと腰を下ろすと、珈琲のカップを持ち上げた。いつもは砂糖もミルクもたっぷりと入れて飲むのだが、大人の女性の前でくれと頼むのも恥ずかしく、そのまま口へと運ぶ。

(苦い……けど美味しい!)

舌の上にほどよい苦味が広がった。いい豆を使っているのかコクが深くて美味しい。

珈琲をブラックで飲むだなんて、少し大人になったようで胸が騒いでしまう。

「そう、それならよかった。美術部も、このままじゃ廃部も免れないって感じだったから、山川くんが入ってくれて嬉しいわ」

受験校のせいか、部員は寿治を合わせて五人しかいない。その中には、もう引退してしまった三年生がふたり含まれるので、実質、二年生の部員は寿治ひとりだけだ。

「いえ、僕なんて、下手糞だし……」

「ううん、そんなことないわよ。山川くんはデッサンがとってもしっかりしてるし色彩感覚もいいもの持ってると思うの。まぁ、ただね、ひとつだけ、言わせてもらうとすれば、ちょっと集中力に欠けてるかな。今日も部活中、ずっと外を見てたでしょ。バレー部の部活。そりゃあ、思春期だから、女のコが気になるのはわかるけど、あんまりジロジロと見過ぎるのは、感心できないな」

「あっ……すっ、すみません。ぼく、そんなつもりなかったんですけど……あの……つい……」

ズバリと言い当てられてしどろもどろになってしまう。

(ううっ、まさか、バレてただなんて……)

恥ずかしさに顔がカーッと熱くなり、頭に血がのぼったようにクラクラしてしまう。

「そんな声出さなくても大丈夫よ。次から気をつけてね」

顔をトマトのように真っ赤に染め、しゅんと項垂れている年下の少年を慰めるかのように絵里子が寿治の肩に手を回した。

「先生、ごめんなさい……」

「いいのよ、次から気をつければ」

優しく慰めの言葉を口にする年上の女性の、柔らかな身体が密着して、かすかに珈琲の匂いのする息が吹きかかる。

(女の人の身体って……温かい……)

とくんとくんと心臓の音が伝わってきて、その安心感にふっと身体の力が抜けた。心地よい温もりに、思い出せないほどの昔に母親に抱きしめられた記憶が蘇ってくる。

もう違う名前になってしまった母親が、いつかまた再び、寿治のことを抱きしめてくれることはあるのだろうか──。

「先生、あの……もう少し……もう少しだけ、こうしていてもいいですか」

「仕方ないわね……ちょっとだけよ」

寿治の家庭の事情を知っているせいか、絵里子は目をすっと細めて優しげな微笑みを浮かべると、寿治の懇願を快く受け入れてくれた。

「先生……先生の腕の中、すごく気持ちがいいです……」

すっぽりと身体ごと包み込まれるような夢心地に、うっとりと身体を預けていると、今度は下半身がムズムズとしてきた。

(気持ちいいけど……おちんちんが勃ってきちゃいそうで……どうしよう)

絵里子の唇から漏れる、珈琲の匂いの混じった吐息が耳元へと吹きかかった。息をする度に白いシャツに包まれた豊乳が、寿治の肩口でゆさゆさと揺れる。

(このままでいたいけど、あぁっ、ど、どうしよう!?)