彼女が制服を脱いだら 清楚な学級委員と快活巨乳同級生と女教師

絵里子が宥めるように言うと、ぽかんと口を開けているまみと寿治には気がつかないまま、男は甘えるように唇を尖らせた。

「もう、生徒の前でみっともないからやめてちょうだい……ごめんね、呼ばれちゃったから、先生、そろそろ行くわね。空腹で死なれたら困っちゃうし。また明日、学校で」

「あ、はいっ!」

絵里子はやれやれというふうに肩をすくめると、さっさと背中を向けて去っていく男性の後を追いかけるように小走りで駆け去っていった。

「ねぇ、山川くん、さっきの人って、先生の彼氏だったりするのかな」

「わからないけど……親密な雰囲気だったよね」

絵里子と別れた後、無事に油絵の具を購入し、そのまま家へと帰ることになったが、話してみると、まみの家は寿治と同じ方向だということだった。

駅前からバスに乗れば十分ほどで着くが、歩いても三十分もかからない。

外は暑いが、去り行く夏の暑さをもう少しだけ楽しみたい気分もある。まみも同じ気持ちだったのか、どちらからともなく、一緒に歩いて帰ることになった。

寿治だけではなく、まみの頭の中も、さっき見かけた吉永と一緒にいた男性のことでいっぱいのようだった。多感な思春期の少年少女にとって、身近な女性の恋愛問題というのは、やはり好奇心をそそられる。

「ねぇ……景井さんも彼氏がいたりするの?」

「ええ? わたし!? まさかぁ、いないよ」

今なら尋ねても自然な気がして、さりげなさを装ってそう聞いてみるとまみは笑って首を横に振った。

「そっか……ぼく、東京の人ってみんな彼氏や彼女がいたりするんだろうなぁって思ってたから」

「うーん、もちろん、クラスでも、付き合ったりとかしてる人もいるみたいだけど、わたしはまだ……なんだか恥ずかしいし」

まみの頬にぽっと赤みが差し込んだ。その初心な様子に、ほっとして気持ちがふわりと緩む。

「山川くんこそ、向こうで彼女とかいなかったの?」

「まさか! それどころか好きな子とかも別にいなかったし……ずっと絵ばっかり描いてたから」

「そうなんだぁ。じゃあ、わたしと一緒だね。ねぇ、山川くんってどんな絵を描くの?」

「うーん、人も描くし風景も描くよ。果物やなんかの静物画も好きだな」

「すごいなぁ、本当に尊敬しちゃう」

「景井さんだって、すごいよ、クラス委員なんて大変そうだし」

「えー、そうかな。でも、うちのクラスはまとまりがいいから、大変なことなんてひとつもないよ」

なんの変哲もない会話でも、まみと話しているだけで、胸がわくわくと騒いで楽しい。このままずっと家に着かなければいいのに……と思っているうちに、マンションの前へと着いてしまった。

「あ、着いちゃったみたい、うち、ココなの」

名残惜しい気持ちでいると、まみがマンションのエントランスを指差して言った。

「え? ここ? うちもここだけど……」

「あれ? そういえば、先週、引っ越しのトラックが止まってたけど、それって……」

「それ、きっとうちの荷物だよ!」

まさか同じマンションに住んでいただなんて! 驚きと喜びとで胸が高鳴ってドキドキする。

「すごい偶然。ねぇ、山川くんちは何階? うちは一○三号室なんだけど」

「僕の家は三階、三〇二号室だよ」

「そっか、じゃあ、よろしくね、ご近所さん、また明日、学校で!」

まみは鞄を身体の前にぎゅっと抱え直すと、プリーツスカートの裾をひらりと翻して廊下の奥へと消えていった。

(なんだかちょっとだけ、運命を感じちゃうけど……それは自意識過剰すぎかな……)

石鹸の残り香が残暑の太陽に燻されてふわりと香る。ときめきに心を高ぶらせながら、エレベーターの呼び出しボタンに指を伸ばした。

寿治がF学園に編入して二週間が経った。まみのおかげでクラスにも馴染んだと同時に美術部にも入部し、放課後は絵を描いて過ごす日々もすっかり日常になった。

(うーん、どんな雲だったかなぁ……)

青々と茂る山の背景、どこまでも澄んだスカイブルーのカンバスに、白絵の具をたっぷりと含ませた筆を伸ばしかけてふと止めた。

涼しげに棚引いた雲がいいだろうか、それとも、綿飴のようにふわっとした夏雲か──迷いながら、答えを探すように窓の外に目を向けた。

部活に励む生徒たちの声に誘われるように、校庭を見下ろすと、サッカー部や野球部に交じってバレー部の女子たちが輪になってボールを回す練習をしていた。

その中のひとりに、寿治の目は自然と惹きつけられる。ブルマ姿で部活に勤しむまみの姿だ。

白いボールを追いかけて、まみが弾みをつけてジャンプした。しなやかに伸びた手の先で、弾き返されたボールが大きな放物線を描いて飛んでいく。

地面に着地するまみの、体操服に包み込まれた双胸がぽわりと揺れてたわんだ。華奢な身体に不釣合いな胸のボリュームにとくんと胸が鳴る。ヒップにぴったりと張りついたブルマから伸びる太ももは、むっちりとしていかにも柔らかそうだ。

「ト~シ~くんっ!」

大人への成長と遂げている最中の少女だけが放つ、危うげな色艶に見惚れていると、背後から名前を呼ばれた。振り返ると亜季だった。

「ねぇ、ねぇ、これってどこの山?」

亜季はポニーテールをぴょんぴょんと揺らして近づいてくると、寿治の前に置かれたカンバスを覗き込んで首を傾げる。