新妻【贖罪】 私は牝になる

「そんなに泣かれると、私が苛めてるみたいじゃないですか。そもそも事故の示談で、私の性欲処理をすることに決まったんでしたよね?」

「でも……こんなのって……あんまりです」

「わかりました。私も鬼じゃありませんから、これで慰めてあげますよ」

酒井はボストンバッグから、うずらの卵のようなピンク色の物体を取りだした。

「ローターですよ。使うのは初めてでしょう?」

妖しげなそれを横目で確認した美帆は、不安そうに眉根を寄せていた。

プラスティック製と思われる物体からはコードが伸びていて、やはりピンク色の小さな箱に繋がっている。いずれも初めて見る物だが、いかがわしいことに使う道具であるのは間違いないだろう。

「楽しませてあげますよ、奥さん」

酒井は片頬をいやらしく吊りあげると、見せつけるようにしてコントローラーのスイッチをオンにした。するとブーンという小さな音が響き、指先に摘まれているローターが小刻みに震えはじめる。

「なに? あぅっ……や、やめて……ンンっ」

怯えて顔を背けると、隙ができた首筋にそっとあてがわれた。肌をくすぐるような細かな振動が、顎のラインから鎖骨にかけてを這いまわる。皮膚の表面に触れるか触れないかの、やさしく掃くような繊細なタッチだ。

「いかがですか? 人間の指とは違うから新鮮でしょう」

「はぅっ、や……ンぅっ、いやです、酒井さん……」

首を反対側に捩るけれど、決して逃れることはできない。左右の首筋を執拗に責め嬲られ、羞恥に歪んだ顔がボーッと桜色に上気する。

「こういうところも性感帯なんですよ。ほら、感じますか?」

黒髪を掻きあげられて、耳の裏側にローターをあてがわれた。ゾクゾクするような感覚がひろがり肩を竦めると、卑猥な攻撃はさらに激しさを増していく。

「くっ、や、耳……ンンっ、いやンっ」

むず痒いようなくすぐったさが、緊張していた神経を妖しく痺れさせる。すると今度は首筋をゆっくりと這いおり、無防備な腋の下を責められてしまう。

「ひゃンっ、あっ、いや……やめ……はぁぁンっ」

思いがけず艶っぽい声が溢れて、耳まで真っ赤に染めあげる。しかし、急速に大きくなる甘ったるい感覚を、はっきり否定することはできなかった。

(どうしてなの? こんなの、いやなだけなのに……)

全裸で椅子に縛りつけられて、激烈な羞恥とレイプの恐怖に晒されている。極限状態に置かれたことで、張りつめた精神が逃げ場所を探していたのかもしれない。

でも、そんなことは言いわけにならない。美帆はフォトスタンドのなかで微笑む夫の顔を見つめると、瞳を潤ませながらも決意を新たにした。

(私、晃司さんの力になりたいんです……)

酒井の要求に逆らわず、とにかく従順にしているしかない。綾乃夫人が退院するまで辛抱すれば、屈辱的な性欲処理から解放される。もし約束を破ってしつこく付きまとわれたら、そのときは自分の口で夫に打ち明けると決めていた。

卑劣な中年男との関係をずるずる続けるくらいなら、悲しいけれど自ら破局の道を選ぶつもりだ。愛する夫をこれ以上裏切ることはできなかった。

「はンっ……く……ふぅぅっ」

美帆は唇を真一文字に結び、気持ちを落ち着けるためにそっと瞳を閉じていく。このまま無反応を装えば、退屈になってやめてくれないだろうか。

「おや、感じてないフリですか? 我慢は身体に毒ですよ」

酒井は薄笑いを浮かべて、汗ばんだ柔肌にローターを滑らせてくる。そして左右の腋の下を散々くすぐると、ミルクを溶かしこんだように白くて柔らかい乳肉を、周囲からじっくりと責めたててきた。

「ン……ン……うンンっ」

魅惑的なラインを描く乳房を、裾野から円を描くように刺激される。ローターから生みだされる微細な振動が、新鮮な果実を思わせる大きなバストをフルフルと艶めかしく震わせていた。

「気持ちいいでしょう? これを乳首に当てたらどうなりますかねぇ」

中年男のねっとりとした声が聞こえてくる。だが、一切反応することなくマネキンのように無反応を装い続けた。

「腰がモゾモゾしてますね。いつまで我慢できるか楽しみですよ」

乳房の表面を刺激しながら、ゆっくりとローターが這いあがってくる。そして、ついに丘陵の突端で揺れる乳首に触れた瞬間、目が覚めるような快感電流が四肢の先まで走り抜けた。

「ひいッ! やっ……くぅっ、だ、駄目っ……ひぅぅっ」

思わず顎が跳ねあがり、こらえきれない喘ぎが唇の隙間から溢れだす。

強烈な振動で乳首がブルブルと震えて、蕩けるような愉悦に包まれた乳輪がぷっくりと膨らんでいく。乳頭は血を噴きそうなほど硬く尖り勃ち、ますます感度が高まってしまう。

「やっぱり乳首は弱いみたいですねぇ。反対側も苛めてあげますよ」

「ひあッ、やめ……ひッ……いや、ひいッ」

全身が火照って汗だくになり、気を抜くと意識が蕩けそうになる。今までとは異なる鮮烈すぎる快美感が、美帆の神経を妖しく責めたてていた。

「さっそく、こっちも硬くなってきましたよ。本当に感じやすいんですね」

もう片方の乳頭も瞬く間に充血して、恥ずかしいくらいに勃起してしまう。それでも懸命に奥歯を噛み締めて、送りこまれてくる愉悦に抗おうとしていた。