「藍沢さん、主人の料理は絶品ですの」
そのひと言で晃司は視線をそらしてしまう。背後のソファーを振り返り、優雅な笑みを浮かべる夫人に語りかけていく。
「そうなんですか、それは楽しみだなぁ。男も厨房に立たないと駄目ですね」
すっかり調子を合わせている晃司が、妻の危機に気づくはずもなかった。
「私は料理のお手伝いをしますので、すみませんが旦那さんは家内の話し相手になってもらえますか?」
「あ、わかりました。それでは酒井さん、お願いします」
なにも知らない晃司は、妻をレイプした男に頭をさげる。そして美帆には微笑みを残して、綾乃夫人のもとへ向かってしまった。
「それじゃあ、はじめましょうか。奥さん」
汗臭い肥満体を必要以上に寄せると、酒井はニヤリと妖しい笑みを浮かべて舌なめずりする。そして、晃司に聞こえないように小声で囁いてくるのだ。
「おかしな真似をしたら、どうなるかわかってますよね?」
弱みを握られている新妻は、中年男の脅し文句で抗う気力を削がれていく。
(そんな、奥様が退院するまでの約束だったのに……どうして……)
陵辱魔と二人で料理をすることになり、美帆は内心激しく動揺していた。
夫が近くにいるのに、がっくりと頭を垂れて下唇を噛み締める。レイプされた挙げ句、為す術もなく何度も昇らされて、ビデオ撮影までされてしまった。妻としても女としても、絶対に知られるわけにはいかなかった。
対面カウンター越しに、晃司と綾乃の姿が見えている。二人はこちらに背中を向ける格好でソファーに並んで腰をおろし、のんびりとテレビを眺めていた。
「あっ……」
いきなりスカートの上からお尻を撫でられ、思わず小さな声がもれてしまう。驚いて隣を見やると、酒井が下卑た笑みを浮かべているではないか。
「さあ、張り切って作りますよ。お腹が空いてきました」
平然と声をかけながらも、手のひらは臀部に張りついたままだ。
もし大声で悲鳴をあげていたら、どうするつもりだったのか。テレビの音が掻き消してくれたが、夫に気づかれたときのことを考えると恐ろしくなる。
「や、やめてください……夫がいるんですよ」
囁くような声で抗議するが、卑劣な中年男が聞いてくれるはずもない。逆にスカートの上から尻肉を揉みしだかれて、さらなる屈辱を味わわされる。
「ううっ……いやです……」
愛する人の目の前で、卑猥で陰湿な悪戯をされてしまう。恥ずかしくて悔しくてならないが、絶対に抵抗することは許されない。淑やかな新妻にとって、これほどつらいことはなかった。
(あんまりだわ……奥様は退院したのに……)
示談などと言っておきながら、最初から約束を守るつもりはなかったのだ。
泣きたくなってくるが、今は辛抱するしかない。夕食の準備が整えばキッチンから出られる。夫に知られたくなければ、急いで調理を進めるしかなかった。
「私はなにをお手伝いしたらいいですか?」
やたらと肩を寄せてくる酒井には構わず、冷蔵庫からエビの入ったパックを取りだした。小麦粉と溶き卵とパン粉を用意すると、鍋に油を注いで熱していく。
「ほほう、エビフライですかな?」
酒井は今ごろになって、なにを作っているのか気づいたらしい。本当に料理ができるのか怪しいものだ。
その間、ずっと尻肉を揉まれ続けて嫌悪感が募っていた。それでも我慢してエビの背わたを取り、ほっそりとした指で小麦粉をそっとまぶす。
「奥さん、なかなかの手つきですね。さすがに人妻です」
酒井は偉そうに言いながら、ヒップに張りつかせた指を妖しく蠢かせる。その瞬間、美帆は思わず戸惑いの声をもらして身を捩らせた。
「え? ちょ……ちょっと……」
なんと、フレアスカートの後ろ側がたくしあげられていくのだ。
カウンターで下半身が隠れているとはいえ、夫の後ろ姿が常に見えている。最初は適当にやり過ごすつもりだったが、もうそんな余裕はなくなっていた。
しかし不幸中の幸いというべきか、晃司と綾乃はなにやら話しこんでおり、キッチンの異変にはまったく気づいていない。
「や……困ります……」
小声で抗議するが、スカートはさらにまくられていく。耐えかねて後ろ手に払いのけようとした途端、耳もとで脅し文句を囁かれた。
「旦那さんにビデオを見られたくなかったら、料理を続けるんですよ」
やがてストッキングに包まれた太腿の裏側とヒップの丸みが晒されて、スカートの裾をウエストにしっかりと挟みこまれてしまう。
「ああ、ひどいことしないで……」
美帆は声を震わせながらも、小麦粉がついたエビを溶き卵にくぐらせる。
すると、ごつい指先がストッキングのウエストゴムにかかり、パンティと一緒におろしにかかった。
(そんな、いやです、脱がさないでくださいっ)
ヒップを左右に揺するが許してもらえない。意外にも器用な手つきでストッキングを剥かれて、プリッとした双臀から太腿のなかほどまでの柔肌が露出した。
「や……ひどい……」
「ひどいとは心外ですね。私たちは交通事故の被害者なんですよ。いいですか、奥さん。これは、あなたがた夫婦が負うべき贖罪だと思ってください」
「しょ、贖罪……あっ……や……」
夫のすぐ近くで、生のお尻を撫でまわされる。これほどの恥辱を体験するのは初めてだ。それでも溢れそうになる涙を必死にこらえて、エビにたっぷりのパン粉を纏わせていく。