新妻【贖罪】 私は牝になる

「あ……最近はいろいろと物騒ですから、気をつけてくださいね」

「まったく心配性だな、美帆は。たった一泊じゃないか」

晃司がやさしく微笑んでくれるから、美帆は思わず涙ぐんでしまう。

本当は笑顔で明るく送りだそうと決めていた。でも、陵辱されたことを隠して普通に振る舞っていると、裏切っているという気持ちが余計に強くなる。

愛している気持ちに変わりはないが、夫の顔を見ているのがつらかった。それなのに、いざ出張となると、どうしようもない寂寥感に襲われる。

「明日はなるべく早く帰ってくるから、キミも気をつけてくれよ。美人の奥さんを持つと気が気じゃないんだ。街にはオオカミが溢れてるからね」

晃司が肩にそっと手を置き、湿っぽい空気を和まそうと冗談めかして微笑んだ。

「フフッ、晃司さんたら……」

美帆は頬が引きつりそうになるのをこらえて、一生懸命に笑みを返す。

すでに二人の愛の巣には飢えたオオカミが入りこんでいる。しかし、生真面目で少し鈍いところのある夫が気づくはずもなかった。

晃司が一泊の出張に出かけていくと、入れ代わりに酒井がやってきた。どうやらマンションの前で、邪魔者がいなくなるのを待っていたらしい。

「留守番は寂しいでしょう。明日の夜まで、私がたっぷり楽しませてあげますよ」

我が物顔でリビングにあがりこんだ中年男は、喉の奥でククッと笑った。

今日は珍しく黒いポロシャツを着て、同じく黒のスラックスを穿いていた。全身黒ずくめになっているせいか、いつもと雰囲気が違って見える。薄くなって地肌が覗いている頭頂部も、なぜか貫禄があるように感じられた。

「明日の夜までって……そんな、まさか……」

「なにか問題でも? 旦那さんは留守なんだから、バレることはありませんよ」

ふてぶてしい態度を目の当たりにすると、なにを言っても無駄なような気がしてくる。実際、綾乃夫人が退院するまで、という約束も守られていないのだから。

昨夜は椅子の上での対面座位で犯されたあと、病院から戻ってきた晃司と綾乃を交えて食卓を囲んだ。どす黒いアクメの余韻で頬を火照らせたまま、夫の前で平静を装うのは、まるで拷問のような時間だった。

──美帆さん、お熱があるんじゃないの? 顔が赤いわよ。

綾乃の言葉にドキリとしたが、おかげで地獄の晩餐を切りあげることができた。

そして今、またしても悪夢がはじまろうとしていた。

「時間がもったいないので、さっそくはじめましょうか。まずは、どれくらい感度がよくなったのか調べさせていただきます」

酒井はポケットからピンクローターを取りだすと、美帆の前にしゃがみこんだ。

「な、なにを……されるおつもりですか?」

いやらしいことをされるのはわかっているのに、訊ねずにはいられない。黙って陵辱を受け入れたら、心まで夫を裏切ることになるような気がしたから。

「スカートを捲りあげてください。パンティが見えるまであげるんですよ」

卑猥な命令に思わず表情を曇らせるが、今さら拒絶できるはずがない。たくさんの弱みを握られて、諦念ばかりが胸の奥にひろがっていた。

「こんなことばかり……ひどいです……」

涙目なりながらワンピースの裾を摘み、ゆっくりと持ちあげていく。むちむちした太腿が露わになり、やがて純白のパンティが男の視線に晒されてしまう。

「もっと足を開くんです。絶対に閉じてはいけません。もし勝手なことをしたら、そのときはわかってますね?」

「酒井さん、お願いですから……主人にだけは……」

今の願いはそれだけだった。とにかく夫にだけは屈辱の体験を知られたくない。愛する人の前では、清楚で貞淑な妻を演じていたかった。

「わかってます。私は物わかりのいい男ですから、奥さんが反抗しなければ悪いようにしません。さあ、足を開いてください」

屈辱を噛み締めて、うながされるまま足を肩幅に開いていく。すると、中年男の脂肪で膨らんだ顔にいやらしい笑みがひろがった。

「素直なのはいいことです。ご褒美にうんと気持ちよくしてあげますからねぇ」

粘着質な声が聞こえて、パンティの上から恥丘を撫でまわされる。総身がビクッと震えるが、ワンピースの裾を摘んだ指は離さなかった。

「はンンっ、いやです……ンンっ」

柔らかい肉の感触を確かめるように、指先でそっと圧迫してくる。たったそれだけで、望まない肉の愉悦がじんわりとひろがっていく。

「やだ、そんな……あふっ、やめてください」

「恥丘もかなり感じるみたいですね。次は膣内の感度を調べてみましょう」

酒井はひとり言のようにつぶやくと、いきなりパンティの股布を脇にずらしてしまう。うっすらとした陰毛も女の割れ目も、すべてが丸見えになっているはずだ。

「ああ、恥ずかしい……見ないでください、いやです……」

消え入りそうな声で訴えるが、スカートをおろそうとはしない。命令に背いて、夫に秘密を知られることのほうがはるかに恐ろしかった。

「よおく見えますよ。奥さんの可愛いピンク色の割れ目がはっきりとね」

「や……い、いや……ンンっ」

陰唇にフゥッと息をかけられ、反射的に腰を小さく震わせる。連日に渡ってのいやらしい行為で、ただでさえ敏感な場所はさらに感じやすくなっていた。