新妻【贖罪】 私は牝になる

悦楽の小波が押しては返し、新妻の理性を少しずつ確実に狂わせる。たまらなくなって首を振ると、自宅のバスルームとは異なるタイル張りの壁が目に入った。

(私、こんな旅館のお風呂で……夫ではない男の人と……)

切ない胸を灼きつくす羞恥と屈辱も、倒錯的な快楽を高めるスパイスとなってしまう。ずっぽり嵌まった結合部からは、卑猥な水音がひっきりなしに聞こえていた。

「奥さん、ずいぶん濡らしてますね。グチョグチョじゃないですか」

「だ、だって、それは、あンンっ、酒井さんが……あふっ、あッ、あッ」

命令されたから腰を振っているのか、自ら望んだのかもわからない。男の脂肪だらけの腹に爪を立てて、貪欲なまでに腰を揺すりあげていく。

「濃いのをたっぷり中出ししてあげます。奥さんも一緒にイクんですよ」

アナルバイブを抜き差ししながら囁かれると、破滅と隣り合わせの悦楽が爆発的に膨れあがる。美帆はたまらず涎を垂らしながらガクガクと頷いた。

「あううっ、い、イキたい……あッ、あッ、ああッ、イカせてくださいっ」

もう昇りつめることしか考えられない。風呂場のドアが微かに開いていることなど、理性が麻痺しかけている状態で気づくはずもなかった。

「ひッ、あひッ、駄目っ、お尻もすごいの……あああッ、おかしくなっちゃうっ」

積極的に腰をしゃくって、中年男の極太ペニスを根元まで味わいつくす。頭の片隅では男のことを嫌悪しながら、ついに発狂しそうな愉悦に呑みこまれていく。

「そろそろ出しますよ。奥さんの一番奥に……くおおおおっ!」

「きひいいッ、熱い、なかは駄目っ……うああッ、お尻も駄目ぇっ、もう狂っちゃう、ひいいッ、イクっ、イキますっ、あひああぁぁぁぁぁぁぁッ!」

下劣な呻き声とともに、溶岩のようなザーメンを子宮口に浴びせかけられる。美帆は白眼を剥いてアクメに達しながら、恥も外聞もなく腰を振りたくった。

どこかで小さな物音がしたような気がする。しかし、背徳のプレイでよがり泣く美帆の意識は、どす黒い快楽に呑みこまれていく。

「旦那さんが出張から帰ってくるのは、確か明日の夕方でしたよね。まだ、たっぷり時間があるじゃないですか」

中年男のペニスは射精直後にもかかわらず、膣のなかで勃起状態を保っていた。

美帆は戦慄を覚えながらも悩ましい溜め息をもらし、逞しすぎるペニスと肛門を抉るアナルバイブをギリギリと締めつけていた。

第六章 身も心も……

美帆は華奢な肩を抱かれて、八畳の和室へと連れ戻された。

焦らしに焦らされて与えられたオルガスムスは、気が狂いそうなほどの快楽を新妻の身体に刻みこんだ。

(また……犯されちゃった……)

悲しみが大きすぎると、涙は出なくなるらしい。

忌み嫌う中年男のペニスを心から欲して、自分から受け入れてしまった。取り返しのつかない暗い諦念だけが、胸の奥でとぐろを巻いていた。

(夫以外のモノを……。ああ、晃司さん……私、どうしたらいいのか……)

絶頂の余韻で思考能力が働かず、手足は鉛をつけたように重くなっている。美帆は呆けたような表情で、虚ろな瞳を室内に巡らせた。

裸電球の頼りなげな光があたりをぼんやりと照らしている。くすんだ色の土壁に囲まれた陰気な和室。カビ臭い畳の上には、薄汚れた布団が敷かれていた。

「さあ、奥さん。じっくり楽しみましょうか」

この精力絶倫の中年男は、まだ満足していないらしい。おそらく、夫が出張から帰ってくる直前まで嬲るつもりなのだろう。

湿った布団に横たえられると、朦朧とした頭に夫の顔が浮かんだ。

今ごろは出張先の営業所に到着して、額に汗して働いていることだろう。真面目な彼のことだから、幸せな家庭を築くためにがんばっているに違いない。一戸建てを購入することが二人の夢だった。

それなのに、美帆はヴィーナスのような裸身を卑劣な中年男の前に晒している。

「奥さんの身体、すごく綺麗ですよ」

酒井が添い寝をするように肥満体を横たえて、耳もとでねっとりと囁いた。

なだらかな曲線を描く乳房も、折れそうなほどにくびれた腰も、薄い陰毛に彩られた恥丘も、すべてを好き放題に視姦されている。最初は死にたいくらい恥ずかしかったのに、いつの間にか慣らされているのが恐ろしい。

(あなた、許して……もう、どうにもならないんです……)

ふと夫が以前出張したときのことを思いだす。心配性で何度も自宅に電話をかけてきた。今回も同じだとしたら、留守電ばかりで不審に思われてしまう。

気づくと頭のなかで言いわけを考えていた。愛する人に嘘をつくのは心苦しいけれど、結婚生活を守るためにはそうするしかなかった。

(きっと、晃司さんも同じ気持ちだったのね……)

美帆は複雑な心境になり、睫毛をそっと伏せた。

夫は人身事故を起こしたことを妻に隠し、妻はレイプされたことを夫に隠す。信頼し合っているはずの夫婦が、お互いに明かせない秘密を抱えている。こんなことをしていて、本当に幸せになれるのだろうか……。

「このオッパイ、柔らかくて最高の手触りです」

酒井のぶ厚い手が乳房に重なり、ねちっこく揉みしだいてきた。マシュマロのような感触を堪能しようと、柔肌にごつい指を食いこませてくる。

「あっ……ンンっ……や……」