揚げ物のジューッという派手な音がキッチンに充満すると、ここぞとばかりに酒井が小声で囁きかけてくる。
「奥さんのここ、ぐっしょり濡れてるじゃないですか」
「はぅっ……」
陰唇の合わせ目を軽く押されただけで、ヌチャッと卑猥な音がして膣口が開いてしまう。なかに溜まっていた蜜汁が溢れだし、内腿をトロトロと垂れてくるのが見ないでもわかった。
(やだ、そんな……どうして? こんなのいやなのに……)
なぜ淫らな反応をしてしまうのか、自分の身体なのに理解できない。思わず涙ぐみそうになるが、夫に怪しまれるので嗚咽はなんとか呑みこんだ。
「フフッ、わかりますよ。旦那さんの姿を見ながらオマ○コを弄られて、いつもよりも興奮してたんですね」
「ち、違います。興奮なんて──ひうッ!」
いきなり中指を埋めこまれて、鮮烈な感覚が突き抜ける。第一関節までの浅い挿入だが、こらえきれずに裏返った悲鳴をあげてしまう。
「美帆、なにか言った?」
正面を向いていた晃司が、声に反応して再び振り向いた。
「ンンっ……や……」
すぐに誤魔化せばよかったのだが、蜜壺に指を入れられたショックで言葉が浮かばない。せめて顔を隠そうとうつむくだけで、どうすることもできずに下唇を噛み締める。結果としておかしな間ができて、晃司の顔が訝しげに曇っていく。
「……どうかしたのかい?」
さすがに異変を察知して、ソファーから腰を浮かしかける。
(だ、駄目っ……あなた、来ないでくださいっ)
美帆は夫の動きを視界の隅に捉えて、すべてが崩壊していく恐怖に膝をカタカタと震わせた。
しかし、酒井はまったく気にする様子がないどころか、泥濘に埋めこんだ指先を抜き差しするではないか。わざと媚肉を刺激するように掻きまわし、溢れた華蜜をクリトリスに塗りつけられてしまう。
「ううっ……だ、駄目……」
美帆は気が狂いそうな恥辱のなか、どす黒い悦楽が膨らんでいくのを感じていた。
「美帆さん、フライのときは水分をしっかり切らないと危ないわよ」
またしても綾乃の柔らかい声音がリビングに響き渡る。
「あ、油が……跳ねて……」
美帆はとっさに答えると、「でも大丈夫ですから」と付け加えた。
「藍沢さん、お座りになって。お料理はできないのでしょう? 主人にまかせておけば、どんな素材でも美味しくなりますから」
夫人に諭された晃司は釈然としない様子だったが、それでもソファーに腰をおろしてくれた。
「危ない危ない。まさに危機一髪でした。奥さんは料理だけじゃなくて、嘘も上手なんですねぇ」
耳もとで酒井がからかってくる。悔しさに涙が滲むけれど、蜜壺を掻きまわされる愉悦がすべてを塗り潰していく。
(あなた……許してください……)
美帆は夫を騙す背徳感にまみれながら、さらなる蜜汁を垂れ流していた。
「もっと奥まで挿れてあげましょう。声を出したら駄目ですよ」
「あむむっ……ンンっ」
中年男のごつい中指が根元まで埋めこまれる。でも、今度は最初から宣言されていたので、喘ぎ声をこらえることができた。
「や、やめて、ンふっ……ください……ンぅぅっ」
涙声で訴えるけれど、もちろんやめてもらえるはずがない。心ではどんなに抗っても、指を巧みにピストンされると否応にも性感が昂ってしまう。
華蜜がどんどん溢れて、意思とは裏腹に媚肉が中年男の指に絡みつく。すでにこの時点で、昨夜の夫とのセックスで得られた快感を凌駕していた。
(晃司さん、ごめんなさい……でも……でも……)
愛する人の背中を見つめながら、いつしか最後の瞬間を期待してしまう。
目も眩むようなオルガスムスを知ってしまった今となっては、この押し寄せてくる快楽に逆らうのは不可能だった。酒井の繊細なテクニックで膣口は潤み、望まない愉悦が急速に膨れあがる。
「奥さんのオマ○コ、お漏らししたみたいに濡れてますよ」
「や……嘘です……ンンっ。そんなはず……」
「嘘じゃありませんよ。ほら、クチュクチュいってるでしょう? オマ○コが泣いてますよ、もうイカせてくれって」
酒井のくぐもった声が、まるで媚薬のように耳の穴に流れこむ。心のガードをひとつひとつ崩されて、人妻の理性は今にも吹き飛びそうになっていた。
(そこ、駄目……これ以上されたら……あああっ)
官能が蕩けるほどに指の動きが速くなる。まるで心を見透かされているように、感じるところばかりを刺激されてしまう。
「イキたいんでしょう? いいんですよイッても」
「うぅぅっ、い、いや……駄目です……ンンっ、ふむぅっ」
血が滲むほど下唇を噛み締めて首を左右に振るが、どうせ抗えないことも心のどこかでわかっていた。
「まったく強情な奥さんですね。イカせてあげますから声を我慢してください」
酒井が呆れたように囁き、甘い期待感が膨張する。緊張しながら身構えると、蜜壺に根元まで押しこまれた中指がゆっくりと鉤状に折り曲げられていく。
「あっ……うっ……うっ……うむむっ」
膣道を拡張される感覚と同時に、敏感な粘膜をこれでもかと抉られた。途端に強烈な絶頂感が押し寄せて、あっという間に理性が霧散する。
「くううっ、ンンっ……ンむううぅぅぅぅッ!」
油の跳ねる音と換気扇の音が、必死に抑えこんだ呻き声を掻き消していた。