新妻【贖罪】 私は牝になる

「この際だからお教えしましょう。じつは旦那さんが起こした追突事故は、私が仕組んだことなんですよ」

「え?……な、なにを……ああンっ、動かないでください」

こうして話している間も、酒井はねちっこい抽送を続けている。執拗で巧みな腰遣いは、新妻の性感を少しずつ確実に追いこんでいく。

「旦那さんが真面目な性格で助かりましたよ。いろいろとね」

大きく開かされた脚の間から、酒井が妖しい笑みを浮かべて見おろしてくる。

「どういう、ああンっ……ことですか?」

「旦那さんが運転する車の前で、ちょっと強めにブレーキを踏んだだけですよ。いつも同じ時間に同じ道を通って帰宅するから、見つけるのは簡単でした」

「どうして、そんなことを……あっ……あっ……だ、駄目です」

胸の奥に不安がひろがるのを感じながらも、剛直がもたらす魔悦にますます惹きこまれる。蟻地獄に嵌まった蟻のように、蜘蛛の巣に捕らわれた蝶のように、もがけばもがくほど官能の渦に巻きこまれてしまう。

「もちろん、奥さんの身体が目当てですよ」

「ああっ、いや……いやです、もう許してください……」

「許すもなにも、奥さんだって夢中になってるじゃないですか」

酒井は唇のまわりを舐めまわすと、技巧をこらした抜き差しを開始した。

亀頭が抜け落ちる寸前まで後退させて浅瀬を掻きまわしてから、勢いをつけて根元までびっちりと叩きこむ。そして、再び焦らすように浅瀬を責める。三浅一深の絶妙な腰遣いで、人妻の肉体と精神を翻弄していく。

「あっ……あっ……あっ……ひううッ! やっ……お、奥は駄目です」

長大なペニスの利点を最大限に生かした大きなストロークのピストンだ。これほどの巨根で巧みに責められたら、どんなに貞淑な女でも喘ぎ狂わされてしまう。

「いや……いやぁ……こんなのって……ああっ、あんまりです」

まんぐり返しに押さえこまれた美帆は、怯えた泣き顔を左右に振りたくった。

すべての発端である追突事故まで酒井の策略だったと知らされ、ショックを隠しきれない。それなのに、この異常な状況にもかかわらず、際限なく膨れあがっていく愉悦が恐ろしかった。

「すべては計画どおりです。と、言いたいところですが、まさか家内が旦那さんに誘惑されるとは予想外でしたよ」

そのとき酒井の目が狡賢い光を放ったのだが、動揺している美帆は気づかない。真実のなかに、都合のいい嘘が織り交ぜられているとは考えもしなかった。

実際には綾乃夫人が晃司を誘惑して、お見舞いのたびに淫らな要求を突きつけていたのだ。加害者である晃司は断りきれず、清拭という名のクンニリングスを強要されたり、リハビリを装ったフェラチオを受けることになった。

もちろん、綾乃は怪我などしていない。すべては酒井が思い描いたシナリオどおりに進められた。晃司はいつしか熟夫人の色香に惑わされて、今ではすっかり円熟した性戯の虜になってしまった。

いずれにせよ、今さら真実を知ったところで、新妻にとっては夫が浮気をしたという事実に変わりはない。

「あっ……あううっ……いや、やめてください……ああンっ」

ピストンスピードを微妙にコントロールされて、悦楽がきわどく膨張した状態を維持される。アクメを知ってしまった女を生殺しにする、中年ならではの粘着質で意地の悪いテクニックだ。

「今ごろ、隣の部屋でも腰を振り合ってるかもしれませんねぇ」

酒井は腰をまわして膣壁を抉りつつ、意味深なセリフを吹きこんでくる。美帆は聞きたくないとばかりに、哀しげに睫毛を伏せていった。

「あむむっ……いやです……ンンっ、夫のことは言わないでください……」

もう、なにも考えたくない。あまりにも異常なことの連続で、今にも頭がパンクしてしまいそうだ。できることなら、このままどこかに消えてしまいたかった。

「いいですか、奥さん。私たちがこうしてセックスするのは、家内や旦那さんに対するささやかな復讐でもあるんですよ」

「ふくしゅう……?」

「そう、復讐です。二人のセックスを思いだしたら悔しくなりませんか? まるで恋人同士のように、息を合わせて腰を振りまくってたじゃないですか」

確かに先ほど襖の隙間から覗き見た不倫セックスは、本気で愛し合っているとしか思えないほど濃厚なものだった。

あのとき、美帆はバックから無理やり犯されて、望まない絶頂を味わわされたというのに、夫は涎を垂らさんばかりの恍惚の表情を浮かべて射精したのだ。

「ひどい……晃司さん……ひどいわ……うっぅぅっ」

中年男の剛根を抜き差しされながら、こらえきれない嗚咽が溢れだす。犯されているのが悲しいのではなく、最愛の夫に裏切られたことが悔しかった。

「奥さん、復讐しましょう。家内と旦那さんに負けないくらい、思いっきりいやらしいセックスをするんです」

酒井が薄笑いを浮かべつつ、真剣な声で語りかけてくる。

すでに何度も犯されて、目も眩むようなオルガスムスを教えこまれた。しかも最愛の夫は、艶っぽい年上女性に寝取られてしまった。今さら抗ったところで、もう幸せな新婚生活を取り戻すことはできない。

暗い諦念と絶望感に胸を塞がれ、呼吸をするだけでも苦しくなっていく。

「わかり……ました……」