「い、いやです、こんな格好……」
美帆は自分の脚の間から中年男を見あげて、羞恥と屈辱に震える声で訴えた。
すぐ目の前に、嫌でも自分の股間が見えてしまう。汗と体液でぐっしょりと湿った陰毛が、恥丘にべったりと貼りついているのがいやらしい。中出しされた精液の匂いが漂ってきて、思わず眉を八の字に歪めていく。
「どうして……こんなことばっかり……」
「それはね、奥さん。あなたのことが好きだからですよ」
酒井は粘着質な声でつぶやくと、剛根の先端を膣口にあてがった。
「え? ま、待ってくだ──あううっ」
まんぐり返しの苦しい体勢で、太すぎるペニスがズブズブと沈みこんできた。しかも、この体位だと媚肉を貫かれる瞬間がはっきりと見えてしまう。
「ンああっ、いや、また……ああっ、また犯されるなんて……」
「奥さん、あんまり大きな声は出さないほうがいいですよ」
酒井はゆっくりと腰を落としながら、襖のほうをチラリと見やった。
そう、隣の四畳半には晃司と綾乃がいるのだ。すいぶん興奮している様子だったから、もしかしたらこちらと同じように二回戦に挑んでいるかもしれない。
(晃司さん……そこにいるのですか?)
生涯をともにすると誓い合った伴侶がすぐそこにいる。それなのに、心が通っていないことが哀しかった。
「あふっ、や……動かないでください……ンああっ」
真上から挿しこまれたペニスを、ゆっくりと出し入れされる。性感を開発された媚肉はそれだけで反応して、早くも肉塊を咀嚼するような動きをしてしまう。
「そんな、あンっ、いやなのに……ああンっ、いやぁっ」
根元まで押しこまれて引き抜かれる。その単純な動きが、絶頂直後で燻っていた官能を再び燃えあがらせていく。ねちっこく抜き差しされる肉竿の表面は、たっぷりの華蜜で恥ずかしいほどに濡れ光っていた。
「この体位だと奥まで突き刺さって気持ちいいでしょう?」
酒井がにやけ顔で語りかけてくる。確かにこの『まんぐり返し』だと、剛根がいつもより深く沈みこんでくるような気がした。だからといって、こんな卑劣な男に同調するつもりはない。
「い、いやなだけです……気持ちよくなんて──あううッ」
否定しようとした途端、極太ペニスをグイッと強く押しこまれる。亀頭の先端が子宮口にめりこみ、破滅的な悦楽が膨らみはじめた。
「ひッ……ひッ……や、やめてください……ひいッ、怖いです」
「気持ちを楽にすれば大丈夫です。怖がることはありません。奥さんも積極的に楽しめばいいんです。旦那さんみたいにね」
酒井に投げかけられた言葉で、先ほどの晃司の醜態がよみがえってくる。綾乃夫人の熟した肉体にむしゃぶりついて、あさましく腰を振りたくっていた。夫婦の夜の閨房でも、あれほど激しく興奮したことは一度もなかったのに……。
(晃司さんにとって、私はなんだったのかしら……)
もしかしたら、女として見られていなかったのではないか。だからセックスもあんなに淡泊だったのではないか。そう思うと、言葉で言い表せないほどの寂しさと哀しさがこみあげてくる。
「旦那さんは、家内とよろしくやってるんです。私たちも楽しみましょう」
再三に渡る誘いの言葉が、なぜかそれほど嫌ではなくなっていた。愛などあるはずもないが、少なくとも女として見られているのは間違いない。
「あうンっ、やだ……どうして? あっ……あンンっ」
中年男のいやらしい視線を意識しただけで濡れてしまった。セックスのことしか考えていない男に、こうして大切な身体を貪られている。拒絶しなければいけないのに、なぜかどうしようもなく感じてしまう。
性感が華開いて成熟期を迎えようとしている女体が、より強い牡を求めるのは自然の摂理というものだ。しかし、奥手で性の知識に乏しい美帆が、そんなことを知る由もなかった。
「ハァ……ハァ……さ、酒井さん……いや、動いちゃ、あふンっ……ああっ」
相変わらずねっとりとした抽送が続いている。この焦らすような中途半端な刺激が、人妻の官能をますます狂わせていく。
「フフッ、また濡れてきましたね。身体のほうは正直みたいですよ」
くぐもった低い声が耳孔に流れこんでくる。鳥肌が立つほど嫌いだったのに、なぜか今は甘い囁きに聞こえていた。
「どうせ後戻りできないんですから、心も正直になりましょうよ。奥さんのオマ○コは、旦那の粗チンじゃ感じなくなってしまったんですよ」
「いやンっ、そんな……私は晃司さんの──」
「もう建て前はどうでもいいじゃないですか。ほら、こうやって速く動かすと、すごく感じるでしょう?」
酒井がほんの少し腰の動きを速めただけで、蕩けるような快美感が膨れあがる。肉体は否応にも反応して、膣道が誘いこむように蠕動をはじめていた。
「あっ……あっ……駄目、こんなの……ああっ、太すぎるの……ンああっ」
再び狂わされるのかと思うと恐ろしくなる。無意識に身を捩らせるが、まんぐり返しで極太を埋めこまれているので大して動くことはできない。
「どんなに拒絶しても、絶対に私からは逃れられませんよ。なにしろ、半年前に奥さんをひと目見たときから、ずっと狙っていたんですから」
酒井が経営する不動産屋を初めて訪れたときに、目をつけられていたらしい。蛇のようにしつこい性格の一端が垣間見えて、冷水を浴びせかけられたように背筋がゾッと寒くなった。