新妻【贖罪】 私は牝になる

(なんだか、薄気味悪いわ……)

自分が住んでいる街に、こんな旅館があるとは知らなかった。

周囲は雑草が伸び放題でまったく手入れがされておらず、とても営業しているようには見えない。そもそも旅館の名前が書かれた看板すら立っていなかった。とにかく、普通の人が訪れる場所ではないような気がした。

「趣があっていいでしょう? 日本の伝統を意識したデザインです」

酒井はなぜか自慢げに言うと、歩くようにうながしてくる。美帆は股間を疼かせて極端な内股になり、下唇をキュッと噛み締めた。

「あ……ふ……ンンっ」

ゆっくりと歩を進めるたびに、ローターを咥えこんだ媚肉が擦られる。微妙な振動と甘美な摩擦感が、人妻の官能をドロドロに蕩かしていく。

酒井が建て付けの悪い引き戸を無理やりこじ開けると、奥から和服姿の老婆が現れた。白髪で死んだ魚のような目をしており、まったく生気が感じられない。この旅館の女将らしいが、ひと言もしゃべらないのが不気味だった。

「菊の間を使わせてもらうよ」

酒井が声をかけると老婆は無言で頷き、ガラス玉のような瞳を美帆に向けた。

女将の双眸には意思が一切感じられないが、美しい人妻を見て微かに哀れみの情を浮かべたような気がした。

「この宿なら、どんなに大声を出しても大丈夫ですよ。まわりは鬱蒼とした森に囲まれてるし、一般の客なんて来るはずないですから」

廊下を歩きながら、酒井が嬉しそうに話しかけてくる。美帆はどう返答したらいいのかわからず、黙ったままうつむいていた。

「以前は由緒正しい日本旅館だったんですけど、この不況でね……。十年ほど前でしたか、土地と建物を売りたいと相談を受けたんですよ」

意外なことに、不動産屋としての仕事も一応こなしているらしい。だが、話を聞いているうちに、中年男の偽善に気づかされていく。

「潰すには惜しいと思って出資したのですが、経営は改善しませんでした。そこで私がアドバイスしまして、なんでもありの宿として生まれ変わったんです」

「なんでも……あり?」

ローターの刺激で神経を昂らせているせいか、頭のなかがボーッとしている。ほとんど無意識のうちに聞き返していた。

「売春、賭博、怪しげな取り引き……。なにが行われようと、女将は見て見ぬふりをする。裏社会で噂が広まれば、自然とそういう連中が集まってくるんです」

今では経営もすっかり波に乗っているという。しかし、先ほど見かけた女将の様子からすると、売り上げのほとんどは酒井の懐に流れこんでいるに違いない。

結局のところ、借金で首がまわらない女将を脅迫したということだ。そして、この旅館を自分の都合がいいように利用しているのだろう。

(いやだわ、こんな場所……売春だなんて……。え? ま、まさか……)

いつの日か、自分もここで身体を売らされるのではと恐ろしくなってくる。それでも、ローターの摩擦感にビクつきながら歩を進めていくしかない。

「さあ、奥さん。ここが菊の間ですよ」

廊下の一番奥に位置するカビ臭い和室に案内された。

みすぼらしい裸電球が室内の様子を照らしだしている。八畳と四畳半の二間続きで、昼間だというのに雨戸が閉め切られているのが陰気だった。

そして、なにより八畳間に敷かれている一組の布団が、美帆の気持ちを落ちこませた。枕がふたつ並べられているのは、嫌でも男女の関係を連想させる。もしかしたら、事前に連絡を受けた女将が準備しておいたのかもしれない。

「こ、ここで……なにをするのですか?」

くすんだ色の土壁を横目に掠れた声で訊ねると、酒井は好色そうに唇のまわりをペロリと舐めてみせた。

「ご自宅だと、どうしても遠慮してしまうでしょう? でもここなら、どんなに大声で啼いても、誰にも聞こえませんからね」

「そんな……ひどいです……」

思わず涙ぐむが、最初から予想していたことだ。夫と過ごすマンションで不貞を犯すよりは、確かに罪悪感が少なくて済むかもしれない。

(晃司さん、許してください……私はまた……)

怯えながらも、今日はここで抱かれるのだと覚悟を決めていた。どんなに泣いて頼んだところで、この淫鬼のような男が陵辱をやめるはずがない。それに長時間に渡って挿入されているローターを、一刻も早く抜いてもらいたかった。

「汗を掻いたから一緒にお風呂に入りましょう。奥さんも脱いでください」

酒井はとっとと服を脱いで醜い肥満体を露わにすると、だらりと垂れさがっている男根をわざと揺らしてみせる。勃起していないにもかかわらず、夫の興奮状態をはるかに凌駕していた。

牡の強さを目の当たりにしただけで、抵抗力は瞬く間に萎えてしまう。

(やっぱり、脱ぐしか……ないのね……)

鋭い眼光でうながされたら、か弱い牝でしかない美帆は従うしかなかった。

男の視線を感じながらワンピースを脱ぎ、恥じらいつつもブラジャーをはずす。まろびでた乳房を隠すように前屈みになり、ゆっくりとパンティをおろしていく。すると、濡れそぼった蜜壺からローターがヌルリと滑り落ちた。

「ンンンっ……」

思いがけず色っぽい鼻声がもれて赤面する。嬲られ続けていた媚肉はビクビクと震えて、驚くほど大量の華蜜にまみれていた。

「ほお、大洪水じゃないですか。かなり興奮されていたようですな」