新妻【贖罪】 私は牝になる

事故のことを黙っているのは、きっと妻に心配をかけたくないからだろう。

昇進することよりも、夫婦が仲睦まじく暮らしていくほうが大切だと思う。自分と夫の考えが同じだということを窮地に陥っている状況で悟り、思わず涙が溢れそうになってしまう。

しかし、そんな新妻の想いを嘲笑うかのように、ぶ厚いタラコ唇と唾液を乗せた舌が、首筋から耳の裏側にかけてをねちっこく舐めまわしていた。

「あっ……や……ンンっ」

その汚辱感はあまりにも強烈で、思わず肩を竦めて下唇を噛み締める。だが、執拗な愛撫は一瞬たりとも途切れず、全身にゾワゾワと鳥肌がひろがっていく。

「はンンっ、いやです……あふっ、やめてください……」

囁くような声で抗議するが、遠慮がちに身を捩るだけで激しい抵抗はできない。夫の深い愛情に気づいて、なおのこと酒井の機嫌を損ねられなくなっていた。

「どうやら立場がわかってきたようですね。私は事故の被害者で、旦那さんは加害者なんです。少しだけ話を聞いてもらえますか?」

「ああ、そんな……だからって、こんなこと……やンンっ」

どう対処したらいいのかわからず、ただ必死に顔を背けていく。すると中年男は調子に乗って、耳朶にねっとりと舌を這わせてきた。

「やぅっ、耳、駄目です……あふっ、やめ……あぅっ、いやぁっ」

くすぐったいような気色悪い感触に襲われ、反射的に拒絶の声が溢れだす。生温かい舌がしつこくヌメり、たっぷりの唾液にまみれてしまう。さらに甘噛みされて真っ赤に充血した耳朶は、カァッとけるように熱くなっていた。

それでも夫の想いを無駄にするわけにはいかず、身を硬くして耐え続ける。しかし、中年男の愛撫は加速して、今度は胸の谷間にむしゃぶりつかれた。

「あああっ! いやですっ、胸は──ひああっ」

舌腹が肌理の細かい肌に貼りつき、無遠慮に這いまわる。唾液を塗りこめられる汚辱感は強烈で、たまらず首を左右に振りたくった。だが、舌が離れることはなく、柔らかさを確認するように、ときおりグイッと押しこんできたりする。

「ひいッ、いや、やめてください……ああっ、いやぁっ」

優美なラインを描く柔肌が、瞬く間に腐臭漂う唾液でコーティングされていく。夫からプレゼントされたブラジャーの精緻なレースを汚されて、ついに新妻の双眸から涙が溢れだした。

「うっ、うぅぅっ……晃司さん、許してください……」

「ほほう、いい心がけですね。ご主人を大切に思う気持ちは大切ですよ」

酒井は卑猥な笑みを浮かべながら、人妻の胸もとや首筋を愛撫し続ける。

その自信に満ちた態度は、ただの中年男のものとは思えなかった。人妻というのは貞淑であればあるほど、旦那との愛が深ければ深いほど、抵抗できなくなることを経験上知っているのだ。

「どうです。そろそろ気持ちよくなってきたんじゃないですか?」

「そ、そんなはず……あっ、駄目──」

男の言葉を否定しようとしたそのとき、ブラジャーを強引に押しあげられて乳房がタプンッと剥きだしになってしまう。

「あああっ! いやぁっ……」

「これは大きいですね。乳首は綺麗な桜色じゃないですか」

酒井の嬉しそうな声が神経を逆撫でする。美帆は涙で頬を濡らしながら、屈辱と羞恥に歪んだ顔を左右に打ち振った。

「やっ、いやです、見ないで……お願いだから見ないでください」

身じろぎするたび、お椀型の美乳がプルプルと揺れてしまうのが恥ずかしい。

じつは、夫にさえ明るい場所でまともに胸を晒したことがない。サイドスタンドだけ灯した夜の寝室で、チラリと見られたことがあるだけだ。

心やさしい晃司は、恥ずかしがっている妻の裸体を無理やり見ようとはしない。だからセックスをするときも布団を被ったままだった。それなのに、夫以外の男性に剥きだしの乳房をじっくりと観察されている。

(こんなことって……ああ、恥ずかしい……)

羞恥のあまりに眩暈がしてくるが、悲劇はまだ終わっていなかった。乳頭に生温かい息遣いを感じたと思ったら、いきなり男の唇に含まれてしまう。

「ひゃうッ! い、いや、いやぁっ」

敏感なポッチに吸いつかれて、たまらず総身をこわばらせる。夫しか触れることの許されない場所に、欲情を剥きだしにした中年男が舌を這わせているのだ。

「おほほっ、奥さんの乳首はじつに美味しいですなぁ」

酒井は息を荒げながら、まるで飢えた犬が骨にしゃぶりつくように、人妻の瑞々しい乳頭を舐めまわす。同時に双乳の裾野に両手を添えて、ねっとりと揉みしだいてくるではないか。

「柔らかい。じつに柔らかいですよ、奥さんのオッパイ」

息遣いが荒くなっているのは興奮している証拠だろう。さらには舌を大きく伸ばして、乳房全体に這いまわらせてきた。

「ひっ、いや、駄目です、ひいっ、お願いだからやめてぇっ」

美帆はあまりのおぞましさに、涙を流して身を捩りながら懇願する。しかし、本性を露わにした男が願いを聞き入れるはずもなく、ヴァージンピンクの乳頭をまるで赤子のようにチュウチュウと吸われてしまう。

「吸っちゃいやですっ、ひああっ、もう許してください、ひッ、ひいッ」

「とか言いながら奥さんも楽しんでるんでしょう? ほら、乳首がコチコチに硬くなってきましたよ」