新妻【贖罪】 私は牝になる

晃司の肉棒は興奮状態で、旅館の薄汚い天井に向かってそそり勃っている。夫婦の閨房で見たのなら、頼もしいと溜め息がもれたかもしれない。しかし、夫が腕枕をしている相手は、自分ではないということが悲しかった。

綾乃夫人は妖艶な笑みを浮かべて、釣り鐘型のたわわに実ったバストを晃司の胸板に押しつけている。そして恥毛が鬱蒼と茂った股間で、太腿をいやらしく撫でまわしていた。その誘うような腰の動きが、あまりにも淫らすぎる。

『お、奥様っ……』

晃司が耐えかねたように、夫人のぽってりした朱唇を奪っていく。

『あンっ、藍沢さん……はふン……うンン』

綾乃は拒絶することなく受け入れて、ごく自然にディープキスがはじまった。夫人の手が晃司の頭にまわされて、頭髪をやさしく掻きまわすように蠢いていく。

「や……晃司さん……そんな……」

美帆は思わず小さな声でつぶやき、下唇をキュッと噛み締めた。

目の前で展開されている光景が信じられなかった。あのやさしい夫が、自分以外の女性と口づけをするなんて……。

「ショックですよね。私も驚きました。なにしろ自殺まで考えたんですから」

酒井がそっと肩を抱いてくるが、今はなんの感情も起こらない。心に受けた傷が大きすぎて、思考と感情が一時的に停止していた。

『ンはぁっ……もう、せっかちなんだから』

『でも、奥様が……』

『二人きりのときは、他人行儀な呼び方をしたらいやよ』

綾乃がやさしい口調でたしなめると、晃司はまるで叱られた子供のように肩を竦めて上目遣いになる。そして、しきりに照れながらも口を開いていく。

『あ……綾乃さん……』

すると夫人はウェーブのかかったロングヘアを掻きあげて、艶っぽい流し目を晃司に送った。

『フフッ……なあに? こ・う・じ・さん』

自分の夫がなれなれしく名前で呼ばれるのを、美帆は今にも泣きだしそうに見つめていた。大人の女性である綾乃なら、真面目な若い男を籠絡するのは簡単なことなのかもしれない。

(晃司さん、お願いです……正気に戻ってください)

心のなかで必死に繰り返すが、新妻の願いは天に届かなかった。晃司は鼻息を荒げて夫人の乳房に顔を埋めると、濃い紅色の乳首にむしゃぶりついてしまう。

『綾乃さん……綾乃さんっ』

『あンっ、晃司さん、慌てないで』

綾乃が声をかけるが、もう夫の耳には聞こえていないらしい。乳首を口に含んだまま夫人の腰を撫でまわし、下半身にも手を伸ばしていく。

むっちりと熟した太腿を開いた瞬間、色素が沈着して黒みがかった陰唇が露わになる。ねっとりと濡れ光る割れ目は、若い牡を求めるように蠢き、内側のどぎつい紅色の粘膜を覗かせていた。

『したいの? フフッ……仕方ないわね。いらっしゃい』

綾乃が色っぽく誘うと、晃司は目を血走らせて下半身を重ねていく。妻帯者だというのに、躊躇することなく正常位で肉棒を挿入してしまう。

『ううっ、綾乃さんのなか……すごくあったかいです』

『入ってるわ、晃司さんのオチンチンが……ああっ、素敵よ』

しなやかな両手が夫の背中にまわされる。そして甘く爪を立てると、晃司は小さく呻き、まるで発情した犬のように腰を振りはじめた。

「い、いや……晃司さん、やめて……」

美帆の双眸から、こらえきれない涙が溢れだす。悲しみに打ちひしがれて、その場にズルズルと崩れ落ちた。

しかし、最愛の夫は美熟女を相手に腰を振り続ける。その信じがたい光景の一部始終が、相変わらず襖の隙間から見えているのだ。

「うっ……うぅっ……いやです……」

いったい、二人はいつから関係しているのだろう。事故を起こしたことがきっかけなのか、それとも結婚する前から二股をかけられていたのか。とにかく、心の支えだった夫を信じられなくなってしまった。

「わかります。私も奥さんと同じ気持ちなんですよ。奥さんが旦那さんを寝取られたように、私も家内を寝取られてしまったんです」

肩を抱いてしゃがみこんだ酒井が、同情するような言葉をかけてくる。美帆は啜り泣きをもらしながら、中年男の声を呆然と聞いていた。

「私たちは言わば同志じゃないですか。悪いようにはしません。私の言うとおりにすれば、嫌なことを全部忘れさせてあげますよ」

いつもの粘着質な口調に戻った酒井が背後にまわりこみ、くびれた腰を鷲掴みにする。嫌な予感がして振り返ると、四つん這いの姿勢をとらされてしまった。

「あっ……」

「お静かに願います。旦那さんに気づかれますよ」

中年男は唇の端に下卑た笑みを浮かべて。ねっとりとヒップを撫でまわしてくる。

「さ、酒井さん、なにを? ……ああっ」

怯えた瞳を男の股間に向けた途端、絶望感の滲んだ溜め息が溢れだした。

青筋を浮きあがらせた剛根が、凄まじい勢いで反り返っている。夫とはまるで比べ物にならない巨大で逞しい逸物だ。とてもではないが、無反応を装うことはできなかった。そのペニスの威力は嫌というほど思い知らされていたから……。

『綾乃さん……僕は綾乃さんとセックスしてるんだ!』

『あっ……あっ……いい……ああンっ、すごく気持ちいいわぁ』

聞くに堪えない情事の声が、絶えず耳孔に流れこんでくる。夫が不倫セックスをしているすぐ隣の部屋で、美帆もまた中年男に迫られていた。