「美波ちゃ……」
下の浜へ着くと、美波がちょうど海からあがってくるのが見えた。陸に手をついて、手の力だけで身体を持ち上げると、くるりと身体を回転させて尻から浜へとあがる。
美波は黒いウエットスーツを身につけていた。
(うわぁ。なんかエロいな……)
身体にぴっちりと張り付いたウエットスーツの濡れて光る鈍い光沢が、尻や胸の膨らみをより一層に映えさせていた。たっぷりと水分を含んだ髪の先から滴り落ちる水滴が、じっとりと這うように滴り落ちて身体を濡らしていく。
(美波ちゃんって……スタイルがいいんだな)
まるで、海の泡から生まれたアフロディテのような美しさに、思わず言葉を忘れて見惚れていると、美波は濡れた髪をさっと掻き上げて後ろへと流し、ウエットスーツの前チャックに手をかけた。
(あっ、脱ぐ……)
宣英の視線には気がつかないまま、美波はゆっくりとチャックを下ろしていった。
細い首から浮き出た鎖骨、そして魅惑的なカーブを描くバストが曝け出される。
(うわぁ、おっぱい大きいなぁ……)
こうしてみると伸びやかなスレンダー気味の身体だというのに、バストだけは不釣合いなほどたわわだ。
眼に眩しいほどの純白のビキニに包まれた豊かな膨らみは、男の宣英の手で持っても余るほどに大きく成長し、布地をはちきれんばかりに張り上げていた。
(凪子さんも、おっぱい、大きかったもんな……)
顔形がこれほど似ている凪子と美波だ。ビキニに包まれた美波のバストトップも、先晩見た凪子のそれと似通っているのだろうかと思わず妄想してしまう。
(お尻も……あんなに大きいんだ)
ウエットスーツを足から抜くために前かがみになると、むっちりとした尻が強調された。ぷりんと張り出して綺麗なハート型の膨らみに視線が釘付けになってしまう。
(身体は大人なんだな……)
尻から太もも、そしてふくらはぎへとスーツを降ろしていくたびに、下を向いているせいで重量感がさらに増したバストがふるふるっと揺れた。うっかりするとビキニからはみ出してしまいそうな危うげな膨らみに胸がどきどきと騒いでしまう。
見惚れている宣英の前で、美波はウエットスーツを足首まで降ろした。しかし、ぴたりと身体に沿った生地のせいか、なかなかスムーズに足首が抜けないようで、片足をついた状態で苦戦している。ようやく両足首がスーツから抜けたその時、大きな波が寄せてきて、美波の足元に降りかかった。
「きゃぁっ」
急な水しぶきで驚いたのか、美波がバランスを崩してその場に崩れ落ちた。
(危ないッ!!!)
「美波ちゃんっ!」
着替えをこっそりと覗いていたことも忘れ、反射的に飛び出した。間一髪、岩肌に叩き付けられる寸前に、美波の身体を宣英の腕が捉えた。
ぴちぴちとした素肌で、弾力がありつつも柔らかな小麦色の肢体が、すっぽりと宣英の腕の中に収まる。
(うわぁ……いい匂いだ)
濡れた髪の毛からは、船の中で嗅いだのと同じ甘酸っぱい南国の果実の匂いが強く立ち昇っていた。長く海水に浸かっていたであろう肌はひんやりと冷たく、内側からとくとくと鼓動している。
期待と、不安と、失恋の切なさとを抱きながら島へとやってきた、船中の気持ちがふと蘇ってきて、胸がきゅんと締め付けられ、美波の身体に回した手に思わず力が入る。
「……あ、あの、吉川さん、もう、わたし、大丈夫ですから」
戸惑うように睫を震わせて美波が宣英を見上げた。
「あっ、ご、ごめん!」
「いえ……あの……ありがとうございます。でも、宣英さん、なんでこんなところに?」
慌てて腕の力を抜くと、美波は、はにかんだ微笑を浮かべて首をかしげた。その拍子に白いビキニに包まれた豊満なバストがふるふるっと揺れて水滴が飛ぶ。
(近くで見ると、すごい迫力だ……)
細い二の腕と鎖骨の辺りは華奢なのに、お椀型のおっぱいはまるでメロンの実を半分に割ってつけたようなボリュームだ。こんなずっしりと大きな胸を細いビキニの紐だけで支えているかと思うと、ハラハラしてしまう。
バストを包む三角の布地は小さく、そこからぷにっとはみ出した下乳は、陽に焼けておらずに真っ白なのが妙になまめかしい。
(本当は凪子さんと同じく色白なんだな)
ビキニからはみ出したセクシーな日焼け跡に、水着をすべて剥ぎ取ってしまいたい欲望がこみ上げてくる。
「あの……、凪子さんが、そろそろ朝ごはんだから美波ちゃんを呼んでくるようにって……それで、俺、呼びにきたんだけど」
「あっ……ありがとうございます。じゃあ、家に……痛ッ」
踏み出そうとした美波が、その場に右足首を押さえてしゃがみこんだ。
「だ、大丈夫?」
「はい。ちょっと足首が……」
「どれ、見せて? うん、血とかは出てないみたいだけど。痛む?」
「はい、ちょっとだけ」
「捻挫かな」
きゅっとくびれた足首に外傷は見つからない。どうやら、さっき波に足を取られた拍子に捻ってしまったようだ。
「歩ける?」
「はい。たぶん……」
とは言いながらも、右足首を庇いながら片足でひょこひょこと歩くさまはいかにも不自由そうだ。上道へとあがるためには階段も昇らなくてはいけない。
「ううん、ちょっと、無理そうだね。困ったなぁ……そうだ。俺がおぶってあげるよ」