夏色誘惑アイランド 艶色母娘とビーチラブ

「狼!? なにそれ、面白ーいッ!」

「面白くないの。真面目な話なんだから。じゃあ、俺は行くからね」

「はーい、じゃあね、まったねー! 狼くんっ」

「だから、狼は俺じゃなくって……」

宣英の言葉を最後まで聞かぬまま、ちえりはパンティーが見えてしまいそうな超ミニスカートを翻し、ココナッツの匂いだけを残してさっと駆け去っていってしまった。

(ううっ……なんだか、危なっかしいコだなぁ)

島に着いて早々、とんだハプニングに巻き込まれてしまったものだと思いながら、海沿いの街道へと再び戻ると、気を取り直して再び歩き出す。そのまま十分ほど歩いていると、『さざなみ』と看板の掛かった和風の小さな宿屋が見えた。

「ここか……」

ひと夏を過ごすことになる民宿だ。宣英は手の甲で首筋に滲んだ汗を拭うと、宿に向かって踏み出した。

「お邪魔しまーす」

インターフォンはなかった。仕方なく玄関の引き戸を開くと、古びていながらも綺麗に掃除された玄関が現れた。宿泊客の外出用だろうか。土間には綺麗に揃えられた下駄が五足並び、女性らしい筆致で『さざなみ』と書かれている。

「すみませ───ん。どなたかいらっしゃいませんか」

「はーい、いま行きますねぇ」

声をかけながら一歩中へと足を踏み入れると、ひんやりとした空気が身体を包んだ。廊下の奥から歌うような声が響くと同時に、スリッパをパタパタといわせて妙齢の女性が現れた。

(うわぁ……綺麗な人だなぁ)

年の頃は三十歳を少し過ぎたところだろうか。ちんまりとした小さな顔の中に、長い睫に縁取られた黒曜石のような瞳と、薄い唇が整ったバランスで配置されている。

清楚で上品な顔立ちだが、どことなく妖艶さが漂っているのは、その下の身体が思いのほかボリュームがあり、豊満なせいだろうか。

ラフに着こなした白いYシャツの上に身につけたエプロンを張り上げるバストはまるでマスクメロンほどにたわわ。ぐっとくびれた腰から、ぴたっとしたスキニーデニムに包まれたふくよかな尻が魅惑的なカーブを描いているのがエロティックだ。

耳の下辺りでひとつにまとめた艶やかな髪の後れ毛が、細い首筋に数本張り付いているのも艶めかしく、熟した大人の女性ならではの色香が漂っている。

「ええと、ご宿泊? 予約のお名前は何かしら」

思わず言葉を忘れて見惚れていると、女性は優しい微笑を浮かべて、かすかに首をかしげた。

「あっ、あの、そうじゃなくて……ええと、今日からこちらでアルバイトをさせていただく吉川宣英と申します」

「あら、あら。アルバイトの方だったのね。遠いところようこそ、いらっしゃい、さぁさ、中に入って。遠くから疲れたでしょう」

「あ、大丈夫です。重いですから」

女性が宣英のボストンバッグへと手を伸ばした。慌てて制すると、先に鞄をたたきに置き、次に靴を脱いであがる。

「わたしは、この民宿の女将のかみなぎです。まぁ、女将っていっても、わたしと娘だけでやってるんだけど」

「あ、よろしくお願いします」

「うちの人は、今は東京に出稼ぎに行ってるの。けれど、男手がないといろいろ不便なことも多くてアルバイトの募集をかけたのよ。吉川くん、今日から頼むわね」

「あ、はい! がんばります」

「うふふ。頼もしいわね」

凪子は嫣然とした微笑みを浮かべながら、首筋にはらりと零れた毛を掻き上げて耳にかけた。島の女性だというのに、生白い首筋が目に眩しい。

「吉川くんの部屋は、二階に用意したわ。わたしと娘の住居スペースと、台所、お風呂は一階ね。お風呂はお客様と共用。入るのは夜の十二時以降から朝の十時まで、あとはお昼休憩の二時から四時の間にしてね。入る時は一応清掃中の札をかけること」

「はい」

「じゃあ、部屋に案内しましょうか。ちょっと階段が狭いけど、荷物、大丈夫よね」

宣英が頷くと、凪子はじゃあ、と言って先に階段を昇り始めた。ボストンバッグを持ち上げるとその後に続く。

(う、うわぁ……お尻が目の前に……)

凪子の数段下を昇っている宣英の目前に、凪子の無防備なヒップがちょうど位置してしまっていた。

ぴったりとしたデニムパンツにぎゅっと詰め込まれている、むっちり張り出したハート型の大きめな双山は、いかにも弾力ありげ。ぷりっとした膨らみの付け根の部分にうっすらと入っているラインはパンティーが透けてしまっているのだろうか。

凪子が階段を上がるたびに、食い込んだ股間がちらちらと誘うように見え隠れするのもたまらない。

(あんまりじろじろ見たら……まずいよな)

いくら背中を向けているとはいえ、人妻の臀部をじろじろと凝視するだなんて、決して行儀がいいことではない。その上刺激的な光景を目と鼻の先にして、膨張し始めた股間が邪魔をして歩きにくくて仕方ない。

(参ったな……)

目のやり場に困って横を向くと、ちょうど目の前の窓から海が見えた。

どこまでも続く大海原と、太陽の光を受けてキラキラと輝く小波、遠い水平線に浮かぶ一隻の漁船。

(うわぁ、綺麗だなぁ……)

景色に見惚れた次の瞬間、顔面に柔らかな衝撃を受けた。

いったい何が起きたのかと一瞬、頭が真っ白になる。なぜか世界が突然暗闇になってしまった。しかも、顔はむんにりとした何か柔らかいもので優しく受け止められている。