夏色誘惑アイランド 艶色母娘とビーチラブ

「ぐ……はぁっ……」

急激に脱力する身体を、振り返った凪子が受け止めてくれた。

「ありがとう、吉川くん……最高……だったわ」

ふたりで抱き合いながら湯船へと崩れ落ちる。

(はぁ……凪子さんと……こんなふうになっちゃうだなんて……)

最高のセックスを経験した感激に浸りながら顔を埋めた凪子の胸からは、とくんとくんという心臓の鼓動が聞こえた。

第三章 ウブ娘のバージンブレイク ─祭りの夜に─

どこからともなく祭り囃子が聞こえてくる。

祭りの日のせいだろうか。なんだか町全体の空気がそわそわしているようだ。

大量のビールが入ったダンボールを抱えた島の若い衆が威勢よく駆け抜けて行った。浴衣や甚平を身につけた子供たちが、両親に手をひかれ、カラコロと下駄を鳴らしては、楽しげに目の前の道路を通り過ぎていく。

(女の子と夏祭りに行くなんて、初めてだな……)

自然と浮き立つ心を弾ませながら、民宿の前のガードレールに腰掛けて、いつになく忙しない様子で行きかう島民たちや、観光客らを横目で眺める。

美波に夏祭りに誘われたのは、先週のことだった。

磯場で転んで足首をくじいた時に助けてもらったお礼にと、夏祭りに一緒に行かないかと誘われた時は嬉しい反面、少し複雑な気分だった。

なにせ、その数日前に、美波の母である凪子と道ならぬ関係を持ってしまったのだ。

後ろめたい気持ち半分、それでも、船中で一目ぼれした美波とデートできるのは嬉しく、しばし悩んだ後に「バイトを休めるかどうか、凪子さんに聞いてみる」と返事を返した。

さっそくその日の晩、仕事が一段落したのを見計らい、美波に夏祭りに誘われたのだが行ってもいいかと凪子に尋ねると、凪子は「ゆっくりしてらっしゃい、こっちに来てから、全然休んでないものね」と快く許可してくれた。

(そうだよな……凪子さんが俺に嫉妬するわけもないよな)

いくら身体は結ばれたとはいえ、所詮、凪子は人妻。手の届かない存在なのだ。

(あれからも……特に何も変わらないし)

露天温泉での情事からはもう一週間が経とうとしている。誰もいない廊下ですれ違う時や、食堂でふたりっきりになった時、ふと視線が絡み合うたびに、胸がきゅんと締め付けられるような思いをしていたのは宣英のほうだけだったのかもしれない。

(ただの遊びだったのかな……それとも、俺のセックスがあんまりよくなかったとか……俺はあんなによかったんだけど……)

夏の夕暮れの心地いい風さえも、宣英のセンチメンタルな気分を掻き立てるようだ。

なんだか急に行き場のない思いに襲われていると、カラカラという下駄の音とともに、玄関の中から美波が出てきた。

「うわぁ、美波ちゃん、浴衣なんだ。すっごく可愛い!」

「ありがとう、恥ずかしいな」

現れた美波は浴衣姿だった。その艶やかさに沈んでいた気持ちがぱっと明るくなる。

紺地に上品な紫陽花あじさいの柄が染められた浴衣は、美波の可愛らしさを引き立てながらもいつもより少しだけ大人っぽく見せていた。きゅっと胸下で締められた帯は、紫陽花の色に合わせた薄紫で、長い髪の毛をアップにしてお団子に結んでいる。

いつもの健康的なショートパンツ姿も魅力的だが、こうして浴衣などを身につけていると、ほんのりしっとりとした色香が漂い、思わず見惚れてしまうほどだ。

(こんなコと一緒に夏祭りに行けるだなんて、夢みたいだ)

さっきまでのセンチメンタルはどこへいったのか、自分でも呆れてしまうほどに、胸がときめいてきゅんきゅん弾む。

「じゃあ、吉川くん、美波のこと、頼んだわね」

遅れて凪子が玄関から顔を出した。

(あ……凪子さんの浴衣姿も見たかったな……)

一瞬、浴衣を期待したが、宿の仕事がある凪子は、当然のことデニムパンツにエプロンをつけた普段着姿だった。

「すみません。凪子さんひとりで、本当に大丈夫ですか?」

「ええ、大丈夫よ。今日は、お泊まりのお客様たちもみんな、お祭りに行くからって、食事の準備もないし。ゆっくりしてきて頂戴」

美波も宣英もいないとなると、夜の仕事はすべて凪子がひとりですることになる。今更ながらに申し訳なく思って尋ねると凪子は快く送り出してくれた。

「ありがとうございます。じゃ、美波ちゃん、行こうか」

(やっぱり……凪子さんにとっては、俺なんてただの遊びだったのかな……)

いくら自分の娘とはいえ、別の女のコと遊びにいくというのに、まるで平然とした凪子の態度に、一抹の寂しさを覚えながらもさざなみを後にすると、美波とともに島の中腹部の山中にあるおやしろへと向かう。

「あのね、この島の神社の神様は、竜神様なんだ。だから今日は、この島の漁師の人たち総出でお祭りするの。すごく賑やかなんだよ」

美波が指差す方向を見ると、大きな魚を抱えたはっ姿の漁師たちが、社へと続く階段を昇っていく途中だった。

「へぇ、楽しみだな。お祭りなんて、久しぶりだよ」

「東京にはないの? 夏祭り」

「あるにはあるけど……あんまり行かないかな。子供の頃はよく行ったけど。綿あめ、好きだったな」

「わたしは今でも大好き」

「じゃあ、買ってあげるよ」

「わぁ! すっごく嬉しい!!」

美波が顔をくしゃくしゃにして喜んだ。