母娘喰い 奪われた媚肉

「やるなら殺すつもりでかかってくることだ。もし、しくじったら、写真を旦那と娘に見せるからな」

この男なら本当にやるだろう。昨夜は泥酔した夫の隣で犯されたのだ。写真を見せるのなど、牛島にとっては造作もないことだろう。

(ああ、どうしたらいいの?)

由香里はフォークに伸ばしかけていた手を慌てて引いた。

蛇ににらまれた蛙とはこのことだ。冷徹な視線を向けられただけで、すべての気力が萎えていた。殺すことなんてできるはずがない。だが、中途半端に傷つければ、恐ろしい報復が待っているのだ。

がっくりと肩を落としてうつむくと、牛島は勝ち誇ったように「フンッ」と鼻を鳴らした。

「奥さん、なんにも食べてないだろう。少しは栄養を摂ったほうがいいな」

この鬼畜のような男が、本気で人の心配をするはずがない。なにを考えているのか、いきなりスラックスを脱ぎはじめる。さらに薄汚いトランクもおろすと、巨大な男根がぶるんっと胴震いしながら剥きだしになった。

「ひっ……」

思わず後ずさりするが、背後にはテーブルがある。すぐに肩を掴まれて、その場に無理やりしゃがみこまされた。フローリングの冷たい床にひざまずく格好だ。

「ザーメンをたっぷり飲ませてやる。俺のは濃いから栄養満点だぞ」

牛島の声が頭上から降り注ぐ。目の前には太い男根があった。

「い……いやですっ」

恐怖のあまり全身が硬直していた。

昨夜は薄暗い寝室だったが、こうして明るいなかで、しかも間近で見ると凄まじい迫力だ。まるで鎌首をもたげたコブラのようで、先端の尿道口がにらんでいるような気がしてくる。

(昨日の夜はこれで……こ、怖い……)

おぞましい記憶がよみがえり、恐怖と屈辱が胸の奥にひろがった。

「な、なにを……」

「フェラチオだよ。旦那にやってるんだろう?」

怯えながら首をかしげると、牛島は苛ついたように男根をグイッと突きだした。

「人妻のくせに今さら純情ぶるなよ。旦那のチンポをしゃぶるようにやればいいんだよ。ほら、舌を出してペロペロしろや」

「ひっ……し、知りません、そんなこと」

由香里は思わず顔を背けて、男根を視界から消し去った。

こんな醜悪な物体を舐めることなどできるはずがない。そういう愛撫の方法があるというのは、女性誌の過激な特集などで読んだことはある。しかし、普通の人がする行為だとは思っていなかった。

もちろん、愛する夫がそんなことを要求するはずがない。つまり、由香里にとってフェラチオという愛撫はまったく未知の世界だった。

「まさか、旦那にもしたことないのか? おいおい、どうなってんだよ」

牛島はおおげさに肩を竦めると、馬鹿にしたような目で見おろしてきた。

「昨日はクンニも初めてだったんだろう。で、フェラもしたことないのか。おまえたち夫婦、冷めきってるんじゃないのか?」

「そ、そんなことで、愛の深さは測れません!」

その瞬間、由香里は反射的に言い放った。

夫婦のことをとやかく言われる筋合いはない。一生を添い遂げると誓っている。関係が冷めきっているなんて、あり得ない話だった。

「愛の深さねぇ……。クククッ、笑わせてくれるじゃないか。愛なんてもんは、なんの役にも立たない。一瞬で壊れちまうんだよ」

「そんなことありません。わたしは、夫だけを──」

「それにしちゃあ、昨日は俺様のチンポでずいぶん感じてたみたいじゃないか。旦那とするよりもよかったんだろう?」

懸命に訴えようとした声は、牛島の意地の悪い言葉に掻き消された。

「旦那のことを本当に愛してたら、感じたりしないんじゃないのか?」

かさに懸かって責めたてられる。由香里は返す言葉もなく、ひざまずいた姿勢のまま下唇を噛み締めた。

(愛してるのは浩志さんだけ……)

自分に言い聞かせるように心のなかで繰り返す。昨夜のことは、なにかの間違いに決まっている。きっと悪い夢を見ただけだ。夫以外の男とセックスして感じるなんて、絶対にあってはならないことなのだから……。

「せいぜいがんばって証明するんだな。あんたの言う愛ってやつが、本物なのかどうか。本物なら、俺になにをされても感じないはずだろう?」

牛島は口もとをいやらしく歪めながら手を伸ばすと、いきなり服の上から乳房を握り締めてきた。

「ほれ、どうだ感じるか?」

「いやなだけです、感じるわけがありません」

男の手を振り払い、下からきっとにらみつける。こんな下劣な男に触られて感じるはずがない。嫌悪感ばかりが膨らんでいた。

「いつまで強がってられるか楽しみだな。じゃあ、まずはフェラしてもらおうか」

腰をグイッと突きだして、勃起を鼻先に突きつけてくる。いつから風呂に入っていないのか、蒸れたような匂いが強烈だった。

「うっ……」

「旦那や娘にバラされたくなかったら言うとおりにするんだ。家庭を壊されたくないだろう?」

それを言われると途端に抵抗できなくなる。いくら愛があるとは言っても、昨夜の恥ずかしい写真を見られたら、浩志がショックを受けるのは間違いない。正直どうなってしまうのか心配だった。

「普通なら離婚だろうな。自分の女房が部下に犯されて、しかもイカされたなんて知ったら、夫婦でいられるはずがないからな」

非情な言葉を浴びせかけられ、一瞬にして背筋が寒くなる。繊細なところのある浩志が耐えられるとは思えなかった。