「ひぐッ、おごおおおおおッ!」
由香里もくぐもった悲鳴を迸らせる。喉の奥に大量の精液を浴びせかけられて、こみあげてくる嘔吐感にたまらず胸を上下させた。
(息が……し、死んじゃう……)
粘性の高いザーメンを次から次へと注ぎこまれて、瞬く間に喉が塞がれる。呼吸が苦しくなり、窒息してしまうのではないかという恐怖がこみあげてきた。
「一滴残らず全部飲むんだ。濃くて美味いぞ。ほら、飲め!」
剛根で喉奥を突かれた瞬間、反射的にゴクリとザーメンを飲みこんだ。いずれにせよ、このままでは息ができない。由香里は涙を流しながら、中年男のおぞましい樹液を嚥下していった。
「うはっ……ハァ……ハァ……ハァ……」
ようやく男根を引き抜かれると、フローリングの床にへたりこんだ。
一拍置いて汚辱感がこみあげてくる。最低の陵辱魔の精液を飲まされたのだ。身体の内側まで穢されて、死にも勝る屈辱に打ち震えた。
2
「俺様のザーメンは濃厚だったろう。少しは腹の足しになったか?」
見おろしてくる牛島の顔には、下卑た笑みが浮かんでいた。
由香里は糸が切れた操り人形のように、床にくずおれたまま啜り泣きを漏らしている。絶望感に胸を塞がれ、なにをする気力も起きなかった。
「帰ってください……」
ザーメンが喉の奥に絡んで、いがらっぽい声になってしまう。余計に屈辱感が大きくなり、思わず下唇を噛み締めた。
「おいおい、ザーメンを飲んだからって、俺を追い出すつもりか?」
「飲みたくて飲んだわけじゃありません……」
消え入りそうな声でつぶやき、頬を伝い落ちる涙を指先で拭った。
「まあ、そう冷たいことを言うなって。せっかく奥さんと過ごすために有休を取ったんだからさ」
牛島は急に猫撫で声を出すと、皺だらけの黒いポロシャツを脱ぎ捨てた。なぜか全裸になり、射精直後だというのに屹立したままの男根を見せつけてくる。そして、背後から由香里の二の腕を掴んで無理やり立ちあがらせた。
「や……触らないでください……」
手を振り払おうと身を捩るが、牛島は離そうとしない。それどころか、脂肪で弛んだ巨体を背中に密着させてくるのだ。
「ひっ……もう、いやです……」
スカートのヒップに硬直した男根を擦りつけられて、反射的に逃げようとする。だが、牛島の大きな手が、カーディガンの上から乳房を鷲掴みにしてきた。
「ああっ、またそんなこと」
布地越しとはいえ、双乳を揉みしだかれるのは屈辱だった。女の身体を性欲処理の道具としか思っていないのか、好き勝手に指を食いこませてくるのだ。
「いつまで、こんなことつづけるんですか?」
「俺の気持ちは十六年前から変わってないんだ」
牛島は由香里の質問を無視して、胸を揉みながら語りはじめた。まだ由香里が働いていた頃のことを言っているのだろう。
フューチャー事務機の経理をしていたとき、ひとまわり年上だった牛島にしつこくアプローチされた。いったい何度食事に誘われたかわからない。すでに浩志と付き合っていたので、もちろん一度も応じなかった。
「毎晩電話をしてたよな。覚えてるか?」
牛島はまるで恋人に語りかけるように、耳もとで囁きかけてくる。思いだしたくもない昔の出来事を、二人だけの甘い秘密であるかのように語っているのだ。
(この人、なにを言ってるの?)
由香里は否定も肯定もせず、ただ身を硬くしていた。
妄想に取り憑かれたような牛島が恐ろしい。なにか恐ろしいことが起こる前触れのような気がした。
「じつは奥さんの声を聞きながらオナニーするのが習慣になってたんだよ」
それは衝撃の事実だった。
無駄に長話をしながら妙に息遣いが荒かったのを覚えている。この男は毎晩電話をかけてきては、由香里の声を聞きながらペニスを握り締めていたらしい。知らないうちに、毎晩オナニーのおかずにされていたのだ。
「そんな……いや……もういやよ」
その姿を想像するだけで寒気に襲われる。首を左右に振りたくり、思わずその場に座りこみそうになった。
「おっと、お休みするのはまだ早いぞ」
牛島の大きな手が双乳を強く掴んでくる。背中には脂肪だらけの体が密着しており、尻たぶには勃起した男根が触れていた。
「専業主婦なんだから、いろいろやることがあるんじゃないのか?」
牛島はテーブルの上に置かれている皿を指差し、洗い物をしろと言う。なにかを企んでいるのは間違いないが、従わないわけにはいかなかった。
背後に張りつかれた状態で、テーブルの食器類を対面キッチンのカウンターに置いていく。そしてキッチンに移動するが、やはり牛島がそのままついてきた。
「俺のことは気にせず、洗い物をはじめていいぞ」
そう言いながらもカーディガンのなかに手を入れて、シャツのボタンを外しはじめる。純白レースのブラジャーが露出すると当然のように押しあげられて、いきなり豊かな膨らみを剥きだしにされてしまった。
「いや……」
思わず両手で覆い隠すが、その手を強引に引き剥がされる。昨夜とは異なり、昼間の光のなかだと隅々まで見られてしまう。肩越しに中年男の粘りつく視線を感じ、新たな羞恥が由香里の胸を締めつけた。
「でかいのに垂れてなくて、乳首もいい感じのピンクだ。これだけの身体をしてたら、旦那の粗チンだけじゃ物足りないだろう」