母娘喰い 奪われた媚肉

ミニスカートが捲れそうになるのを気にしながら歩いていく。

やがて住宅街に真新しいマイホームが見えてきた。かなり急いだので、予定よりもずいぶん帰宅時間が早かった。

玄関の鍵が開いていた。

母親はたまに鍵を掛け忘れることがあるので、試しにドアレバーをまわしてみたら開いたのだ。最近は物騒なので、しっかり鍵をかけるように言っておこう、などと考えながら玄関に入った。

(あれ、この靴ってパパのかな?)

くたびれた感じの薄汚れた革靴が置いてある。見覚えがないような気がして、沙緒里は思わず首をかしげた。

若干の違和感を覚えるも、とにかくリビングに行ってみる。しかし、ドアを開けると、そこはシーンと静まり返っていた。

「ママ……?」

まったく気配が感じられない。買い物にでも行ったのだろうか。

在宅中ならともかく、外出するときに鍵を掛け忘れるのは不用心すぎる。空き巣に入ってくれと言っているようなものだ。

(もう、ママったら)

沙緒里は大人ぶって小さな溜め息を漏らした。

引っ越しの準備が大変だったので、疲れが溜まっているのかもしれない。もう少し母親の手伝いをしたほうがよさそうだ。とりあえず着替えようと、二階の自分の部屋に向かった。

階段を昇りきると、正面が沙緒里の部屋になっている。三部屋がL字形に配置されており、隣は父親の書斎で、さらにその隣が両親の寝室だ。

自分の部屋の前に立ったとき、どこからか声が聞こえたような気がして、はっと動きをとめた。

(なに……今の?)

気のせいだろうか。女の人の泣き声に似ていた。まさかと思いつつドアノブを掴んだ、そのときだった。

『あっ……あっ……』

今度こそはっきり声が聞こえた。しかも、自分の部屋のなかから……。

(う、ウソ……どうして?)

沙緒里は思わず全身を硬直させていた。

誰もいないはずの自室から声が聞こえてきたのだ。ドアノブを掴んだまま身じろぎひとつできない。恐怖が湧きあがってくるが、逃げだすこともできなかった。

『やっ……あっ……ああっ』

なにやら女性の悩ましい声がする。他にも聞き取れないが男性らしき低い声と、ベッドが軋むようなギシギシという音がした。

(や……やだ……誰?)

顔がカーッと熱くなる。どこかで聞いたことがあるような声だが、驚きのあまり思いだせない。とにかく、ヴァージンの沙緒里にも、それが男女の行為の声だというのは想像がついた。

恐怖が消えることはないが、同時に興味も湧きあがってくる。

学校でも家庭でも優等生で通っている沙緒里だ。しかし、その前に十六歳の健康的な少女でもある。これまで男の人と付き合ったことはないが、恋をしてみたいとは思う。恋人と手を繋いで歩いたり、映画を観たり、キスをしたり……。

彼氏のいる友だちが素直に羨ましい。進んでいる娘は、すでにセックスも経験しているという。そんな話を思いだして、夜ベッドに入ったとき自分の股間をいじってしまったことも一度や二度ではなかった。

『あンっ、ダメ……ああンっ』

ドア越しなのではっきりとは聞こえないが、セックスしているのは間違いない。沙緒里はこみあげてくる好奇心を抑えることができなかった。

汗ばんだ手で恐るおそるドアノブをまわし、ほんの少しだけ押し開く。途端に生々しい声が溢れだしてきた。

『そんなに奥まで……ああっ』

『奥が好きなんだろう?』

ベッドが軋む音に混じって、男女の会話が耳に届いてくる。

沙緒里は思わず生唾を飲みこみながら、ドアの隙間に顔を寄せていく。すると、ちょうどベッドを真横から見ることができた。

(あっ……)

思わずあげそうになった声を懸命に呑みこんだ。

やはりベッドの上には裸の男女の姿があった。女性が仰向けになっており、肥満体で頭髪の薄い男が覆い被さっている。女の人は脚を大きく開いて、男の腰を挟みこむような格好になっていた。

女性は顔を反対側に向けている。少し茶色がかったロングヘアで、その裸体からは熟した色気のようなものが感じられた。

『あっ、ダメ……ああっ、ダメぇっ』

男が腰を使うたび、大きな乳房が揺れて女性の唇から卑猥な声が溢れだす。

苦しそうに見えるが、それだけではないらしい。その声にはどこか妖しい響きも混ざっているのだ。

女性は両手を男の胸板にあてがっている。押し返そうとしているようだが、その手には力が入っていない。口では抗っているが形ばかりの抵抗だ。男の為すがままに喘がされているといった感じだった。

(やだ、すごい……でも、あの女の人、どこかで……)

沙緒里はもう目が離せなくなっていた。

ドアの隙間に顔を押しつけるようにして凝視する。もちろんセックスを見るのは初めてだ。男が腰を前後させる動きも、女の人が腰を揺する様も淫らだった。

『どうだい、奥さん。もうすっかり俺のチンポがクセになってるだろう?』

『そんな……い、いやなだけです』

『いやだって言う割りには、ずいぶん締めつけてるぞ』

『ああンっ、そんなのウソです……ああっ』

互いに腰を振り合いながら会話を交わしている。いったい二人はどういう関係なのだろう。すでに何度か身体を重ねているらしい。だが、女性のほうは嫌がっているようだ。そのとき、男が顔の角度をわずかに変えた。

(あっ……おじさん?)