「娘にしてもそうだ。母親がよその男と腰を振り合ったと聞いたら軽蔑するぞ。思春期だし、悩んで自殺なんてことも──」
「もうやめてっ!」
とてもではないが聞いていられない。現実になりそうな気がして、唇から血の気が引いていた。
「します……から……」
答えた直後に瞳が潤んで涙が溢れそうになる。しかし、幸せな家庭を守るためには従うしかなかった。やっと新築のマイホームを手に入れて、夫も娘も喜んでいる。二人の笑顔を奪うことなどできなかった。
「まずは舌を伸ばして舐めてもらおうか」
牛島の悪魔のような声が聞こえてくる。由香里は怯えきった瞳で、目の前に突きつけられた男根をちらりと見やった。
(こんなに大きいなんて……怖い)
その威圧感に言葉を失い、頬を引き攣らせた。
亀頭部分はパンパンに張りつめて、まるで空気を限界まで吹きこんだ風船だ。肉胴部分はがっしりと太く、血管が稲妻状に浮かびあがっていた。
「ソフトクリームを舐めるみたいにやるんだぞ」
執拗にうながされて、諦念にまみれながらピンク色の舌先を覗かせる。そして、男の太腿に両手を添えると、震える舌先を反り返った男根に近づけた。
「ンっ……」
亀頭の裏側に触れた途端、火傷しそうな熱気とピリリとした苦味がひろがった。汚辱感がこみあげて、全身の毛穴がいっせいに収縮した。
「おいおい、行儀が悪いな。ちゃんとチンポの根元を手で支えるんだよ」
言うとおりにしなければ、写真をバラ撒かれて家庭崩壊させられてしまう。由香里は意を決して、肉柱の根元に指を触れさせた。
(あっ……どうしてこんなに太いの?)
思わず手を引きそうになるのをこらえ、陵辱者の男根に右手の指を巻きつける。その太さは凄まじく、由香里の手首ほどはありそうだ。それに硬さも強烈で、まるで鉄の棒を握っているようだった。
(やだ……全然違う)
無意識のうちに夫のモノと比べていた。
夫婦の夜の営みのとき、少しだけ触れたことがある。勃起していてもどこか愛嬌があり、やさしく撫でてあげたくなるようなペニスだった。しかし、牛島の剛根には女を無条件で平伏させる迫力が備わっていた。
「舌を動かしてみろ。下から上に舐めあげるんだ」
命令されるまま、舌先をゆっくりと動かしてみる。太幹の真裏にあたる縫い目のような部分を、震える舌でそっと舐めあげた。
「ンン……」
気持ち悪くてなるべく触れたくないので、まるで刷毛で掃くような微妙なタッチになる。だが、逆にそれが男の性感を刺激したらしく、牛島が低い声で呻くのが聞こえてきた。
「おううっ……そうだ、いいぞ。なかなか筋がいいじゃないか」
好きでもない中年男が悦んでいると思うと複雑だったが、これで幸せな家庭を守ることができるのだ。嫌でもつづけるしかなかった。
「ンぅ……ンン……」
由香里はゆっくりと首を振り、繰り返し男根の裏筋を舐めあげる。舌先だけをそっと触れさせて、ツツーッと縫い目に這わせていった。
「同じことばっかりやっててもダメだぞ。男を飽きさせないようにしないとな」
そう言われても、どうすればいいのかわからない。由香里は戸惑いながら、裏筋に触れさせた舌先を左右に振ってみた。
「おっ、悪くないな。それも気持ちいいぞ」
牛島が満足そうな声を漏らす。それを聞いて、ほっと胸を撫でおろしている自分が嫌だった。
新築のマイホームのリビングで、夫の部下である中年男のペニスに舌を這わせている。昨夜、このペニスでレイプされているのだ。
(どうしてこんなことに……)
まったく理不尽極まりない話だった。
由香里には一片の落ち度もない。だが、恥ずかしい写真という弱みを握られていては、もう言いなりになるしかなかった。
「裏筋だけじゃなくて、竿のまわりも舐めてみろ」
仁王立ちした牛島が新たな命令をくだす。人妻にフェラチオさせることで昂ぶっているのか、ペニスの先端に透明な滴が浮かびあがっていた。
由香里は思わず眉根を寄せるが、それでも言われたとおりに肉胴に舌を這いまわらせる。根元を指で支えて、首を傾けながら屈辱の口唇愛撫をつづけた。
「ンンっ……ンぅっ」
胴体部分にはミミズがのたくったような太い血管が浮かんでおり、ゴツゴツした感触が薄気味悪い。舌先に感じる熱さが、徐々に強くなっているような気がした。
「そのまま竿を咥えろ」
「え……そんなこと……」
思わず舌を離し、男の顔を見あげていく。すると、牛島は目をギロリと剥き、威圧的に見つめ返してきた。
「口答えするつもりか?」
そのひと言で、由香里は弱気になってしまう。視線を逸らしてうつむくと、牛島は満足そうに太鼓腹を揺すった。
「それじゃあ、つづけてもらおうか。竿を横から咥えるんだ。歯を立てるんじゃないぞ。唇でやさしく挟むんだ」
言われるまま、再び顔を傾けて男根のサイドに近づける。そして唇を開き、太幹をそっと挟みこんだ。
「はふっ……」
硬くて熱い。まるで焼いた鉄棒に触れているようだ。とても人間の身体の一部とは思えない感触だった。
「チンポが気持ちよくなるように、唇を滑らせてみろ」
「ンっ……ンむむっ……こ、こうですか?」
どうするのかよくわからない。フルートを吹くように男根を咥えたまま、ゆっくりと首を左右に振ってみた。