「同じことはしなくていい。今度はケツの穴を舐めてもらおうか」
片頬にいやらしい笑みを浮かべた牛島が、信じられない言葉を放った。きっと聞き間違いだろう。そう願いながら、男の顔を見つめ返した。
「聞こえなかったのか? 肛門をペロペロしろって言ったんだよ」
牛島の顔に凄絶な笑みが浮かぶ。本気で排泄器官を舐めろと要求してきたのだ。
「そ、そんな……いくらなんでも……」
「いやなら別にいい。お嬢ちゃんにやらせるまでだ」
「待って! 待ってください……」
立ちあがろうとする男の脚に縋りつく。たとえ地獄に堕とされようとも、娘の部屋に行かせるわけにはいかなかった。
「奥さんがアナル舐めをやってくれるのか?」
「は……はい……やります」
「やらせてください、だろう?」
牛島が嵩に懸かって責めたててくる。もちろん由香里が逆らえないことをわかったうえで、猫が鼠をいたぶるように嬲ってくるのだ。
「や、やらせてください……」
「なにをだ? はっきり言わないとわからないだろうが」
「ああ、もう苛めないでください」
屈辱の涙が頬を伝うが、牛島は冷徹な目で見おろしていた。この男には人間の血が流れていないのかもしれない。だとしたら、泣いて懇願したところで通用するはずがなかった。
「甘えるな。なんでもやるんじゃなかったのか?」
確かにそう口走ったが、ここまで苛め抜かれるとは思っていない。まさか肛門を舐めることを要求されるとは、想像すらしていなかった。
「う、牛島さんの……お、お尻を、舐めさせてください」
震える唇を開き、牛島が満足しそうな台詞を絞りだす。屈辱のあまり、頭がクラクラした。
「お尻じゃない。ケツの穴だ」
「け……ケツの穴を……舐めさせてください……うっぅぅっ」
言い終わった途端に嗚咽が溢れだす。今日はまだ指一本触れられていないのに、心は深く傷つけられていた。
「そんなに頼まれたら仕方ないな。俺も鬼じゃないんでね。奥さんの願いを叶えてやろうじゃないか」
牛島はようやく満足したらしい。どっかりと座ったまま、両足をベッドの端に乗せた。
股を開いているので、勃起の下方に自然と肛門が剥きだしになった。黒ずんだ排泄器官はあまりにも汚らしい。人の肛門を目にするだけで、これほど嫌悪感をもよおすとは知らなかった。
「いやっ……」
思わず視線を逸らすと、牛島が嬉しそうにニヤリと笑う。そして勃起したペニスをヒクつかせた。
「いいぞ、舐めさせてやる」
それは命令に他ならない。由香里は泣き顔になりながら、中年男のアナルに唇を近づけた。ペニスとは異なる強烈な汚臭に顔を顰める。だが、娘を守るためにはやるしかなかった。
「うむぅっ……」
震える唇をそっと菊門に押しつける。途端に嘔吐感が湧きあがって、思わず顔を離してしまった。
「なにをしている。舌を伸ばしてペロペロするんだ。今度中断したら、お嬢ちゃんの部屋に行くからな」
「ああ、それだけは……わたしに舐めさせてください」
由香里は懸命に媚びを売りながら、震える舌先を伸ばして薄汚いアナルの中心部に触れさせた。
「うっ……に、苦い……うンンっ」
舌先にピリリとした苦味が走り、反射的に顔を引きそうになる。またしても猛烈な吐き気に襲われて、死にも勝る屈辱が胸のうちを埋めつくす。それでも中年男の肛門から舌を離さなかった。
「やればできるじゃないか。よし、今度は舌を使うんだ」
牛島に言われるまま舌を蠢かす。放射状にひろがる皺を一本いっぽんなぞるようにして、そろそろと舌先を動かしていった。
「ンっ……ンっ……ンンっ」
男の毛だらけの内腿に両手を着き、涙を流しながらアナルを舐めしゃぶる。気が狂いそうな汚辱感に苛まれながらも、感じさせなければと必死だった。
「おおっ、いいぞ。ケツの穴がムズムズしてきたぞ。奥さんのこんな姿、旦那が見たら驚くだろうなぁ」
牛島はわざと夫のことを話題に出していたぶってくる。そして由香里が苦悩する様を眺めて楽しんでいるのだ。
「あの人のことは……言わないでください……うむううっ」
中年男のアナルを舐めながら遠慮がちに訴える。聞き入れられるはずがないのはわかっているが、それでも抗議せずにはいられなかった。
「フッ……そんなこと言っても、奥さんの身体は俺のチンポが忘れられないんじゃないのか? もう濡らしてるんだろう?」
「そんなはず……」
「おい、ケツの穴から舌を離すなよ。同時に手コキもしてもらおうか。ほら、アナル舐めしながら手でチンポをシコシコするんだ」
牛島は支配者として君臨している。その命令は絶対だった。
由香里は右手を伸ばすと、ほっそりした指を屹立した男根に巻きつけた。そして、命令通りねっとりと扱きあげていく。たっぷりの唾液が潤滑剤となり、指はヌルヌルと卑猥に滑りまくった。
「おうっ、気持ちいいぞ。ケツの穴に舌を挿れろ」
またしても変態的な命令が下される。信じられない言葉だが、もちろん冗談で言っているわけではなかった。
(舌を挿れるなんて……そんなこと……)
いったい、どこまで辱めれば気が済むのだろう。こうして舌を這わせているだけでもおぞましいのに、排泄をする穴に舌を挿入するなど考えられない。だが、指に伝わる剛根の息吹が、由香里を屈服させようとしていた。