そこまで言われて逆らえるはずがない。由香里は沙緒里を背後に隠すと、諦めたようにカーディガンを脱ぎはじめた。
「わかりました……でも、娘は許してください。娘の分まで、わたしが……」
「ダメだ。母娘丼ができるチャンスなんて二度とないかもしれない。しかも、由香里くんとそのお嬢さんだ。こんなに愉快なことはないよ」
黒木は興奮しているのか、早口になっている。この様子だと母娘二人が脱ぐまで、絶対に許しそうになかった。
「ママ、大丈夫……わたしも……」
沙緒里は母親の背後から出ると、自ら制服のブレザーを脱いでいく。自分ひとりが助かろうなどとは思っていなかった。
「ああ、沙緒里ちゃん……」
由香里は申し訳なさそうな顔をしたが、もうそれ以上は言葉にならず涙を流しはじめる。沙緒里も釣られて嗚咽が溢れだすのをとめられなかった。
「下着はまだ脱がなくていいよ。そのほうが却って色っぽいからね」
黒木の指示を聞きながら、由香里が仕方なく服を脱いでいく。
母親が身に着けているのは、レースがセクシーな薄いピンク色のブラジャーとパンティだ。肉感的な完熟ボディがますます強調されており、じつの娘の目から見ても悩ましかった。
「フフフッ。じつに素晴らしい身体じゃないか。由香里くんのこんな色っぽい姿を見ることができるとは、夢にも思わなかったよ」
「そんなに見ないでください……」
由香里は目もとを染めあげて、恥ずかしげに腰をくねらせた。
(ママ……つらいよね)
母親の気持ちを思うと、沙緒里まで悲しくなってくる。
夫以外の男に身体を見られているのだ。しかも、その男は夫が勤務する会社の社長で、母親も顔見知りだという。そのうえで卑猥な行為を強要されるのだから、苦悩は想像を絶するほど大きいに違いなかった。
「ムチムチしてて、人妻らしいふくよかさがいい。ご主人が羨ましいよ」
黒木が満足げに何度も頷き、由香里の肌にねばついた視線を這いまわらせる。還暦を過ぎても、牡であることは変わらないようだった。
沙緒里も顔を真っ赤にしながらセミヌードを晒した。
飾り気のない純白のブラジャーとパンティが、ひどく子供っぽい気がして恥ずかしい。スレンダーな肢体もコンプレックスとなっていた。母親の隣に立っていると、華奢な身体がなおさら目立ってしまう。
「やだ……恥ずかしいよ」
思わずぽつりとつぶやくと、黒木が血走った目をぎろりと向けてきた。
「そうだ、お嬢さんは制服のリボンを首につけておいてください。そのほうがさらに可愛いからね」
「え……?」
そういうのが、この男の趣味なのだろうか。とにかく命じられれば、それに従うしかなかった。
沙緒里は下着姿になったうえで、制服の赤いリボンタイを首に着けた。羞恥が大きくなり、顔から火が出そうなほど熱くなる。涙をとめどなく溢れさせながら、母親の身体に寄り添った。
「由香里くんのお嬢さんも、初々しくていいじゃないか。細くてか弱そうなところが、じつにそそるよ。うんうん」
黒木はいかにも好色そうな笑みを浮かべながら、背広の上衣を脱ぎ、スラックスとトランクスをおろしていく。上半身はワイシャツにネクタイ、下半身は黒靴下のみを着用したどこか滑稽な姿だった。
腹部は贅肉で弛んでおり、牛島など比べ物にならないほどの肥満体だ。しかも臍から下は毛むくじゃらで、腹毛と陰毛が繋がっていた。
背広をきっちり着ていれば、その雰囲気も相まって恰幅のいい紳士と言えなくもない。だが、脱いでしまうと不摂生が丸わかりの醜悪な体つきだ。
股間からはくすんだ色の男根が垂れさがっている。勃起していない状態でもかなりの太さと長さで、牛島の逸物に負けず劣らずの巨根だった。
(気持ち悪い……どうして、こんなに大きいの?)
沙緒里は男根から慌てて視線を逸らした。
レイプでヴァージンを奪われ、すでに何度も犯されてきたが、やはりペニスを直視するのは苦手だった。好きな人が相手なら少しは違うのかもしれない。しかし、欲望の塊のような男に見せつけられても不快なだけだ。
由香里も困ったような顔でうつむいている。夫の男根よりもはるかに大きいのだから、困惑するのは当然のことだった。
「まずはフェラチオしてもらおうかの。ここのところ年のせいか、すっかり勃ちが悪くなってな。二人がかりで念入りに頼むぞ」
黒木に命じられて、沙緒里と由香里は思わず互いの顔を見つめ合う。屈辱的だが避けられない事態だった。
(やらないと、パパがクビにされちゃう……)
今の生活を守るためにはやるしかない。どちらからともなく進み出ると、男の足もとにひざまずいた。
まずは由香里が垂れさがったペニスの根元に指を絡めて持ちあげる。そして逡巡しながらも顔を近づけて、ピンク色の舌先で亀頭の裏側をペロリと舐めた。
「ううっ……」
途端に小さな呻き声が漏れる。由香里は唇と手を離し、のけ反るようにして男根から顔を遠ざけた。
眉を情けない八の字に歪めて、いやいやと首を左右に振りたくる。夫を守るという強い決意が、一瞬にして消滅してしまったらしい。そんな母親の姿を目の当たりにして、沙緒里はこれまでにない恐怖に震えあがった。
「どうかしましたか? つづけてください」
黒木が声をかけても、由香里は怯えたようにうつむいていた。よほど目の前の男根に拒否反応があるようだった。