「たまには旦那以外の男に舐められるのもいいもんだろう?」
牛島の言葉に思わず首を左右に振りたくる。こんな変態のようなことを、夫がするはずなかった。
「おいおい、まさか旦那はクンニもしないのかよ。これはクンニリングスって言って、夫婦なら普通にやってることだぞ。旦那に愛されてないんじゃないのか?」
呆れたようにつぶやきながらも舌の動きは休めない。割れ目を下から上に舐めあげては、上端に位置する肉の芽に唾液を塗りたくってきた。
「ンふぅぅっ……」
その部分はとくに敏感で、舌の動きに合わせて内腿が痙攣してしまう。腰を捩らせるが、もちろん逃げることはできず、好き放題に舐めまわされるしかなかった。
「ほら、気持ちいいだろう。オマ○コが濡れてきたぞ」
牛島の言葉を証明するかのように、股間からピチャピチャという湿った音が響きはじめる。それはあまりにも淫らがましい音だった。
(う、ウソよ……そんなはず……)
いくら心のなかで否定しても、濡れているという事実は変わらない。好きでもない男に股間をしゃぶられて、なぜか愛蜜が染みだしているのだ。
「旦那はろくに愛撫もしないで突っこんでるんだろう。真面目なだけが取り柄のつまらない男だから、きっと退屈なセックスなんだろうな」
牛島は浩志のことを馬鹿にしながら、執拗に割れ目を舐めてくる。ときおり舌を入れられて、そのたびに腰が浮きあがりそうな刺激が脳天まで突き抜けた。
「ひぐううっ……」
こらえきれない嬌声が迸る。このときばかりは猿轡を噛まされていてよかったと思う。とてもではないが、意志の力で声をこらえることはできなかったろう。
「おお、また濡れてきた。マン汁がどんどん溢れてくるぞ」
牛島はタラコのような唇をぴったり密着させると、ジュルジュルと音を立てて華蜜を啜りあげた。すると魂まで吸いだされそうな感覚に襲われる。死ぬほど嫌でならないのに、なぜか次から次へといやらしい蜜が分泌されるのだ。
(いや……いやっ……こんなのって……)
心では抗っているが、肉体は確実に反応している。認めたくないが、それはまぎれもない事実だった。
夫の愛撫とはまったく次元の異なる感覚だ。華蜜が滾々と溢れて、まるでお漏らしをしたような状態になっていた。
「ひうッ……ひむううッ」
声をこらえなければと思うが、どうしても喘ぎ声が漏れてしまう。肉の芽に舌を這わされると、腰がビクビクと跳ねあがった。
「イキそうなんじゃないのか? ほら、イキたかったらイッていいんだぞ」
牛島の愛撫は的確で執拗だ。女の感じる部分を熟知しており、いつしか尖り勃ったクリトリスを重点的に責めたててきた。
(そこばっかり……ああっ、もうやめてぇっ)
もう自分を誤魔化しようがなかった。強烈な快感が全身にひろがり、腰が卑猥に揺れてしまう。「イク」という感覚はわからないが、これまで経験したことのない快感が急速に膨らんでいた。
(いけないわ……浩志さんじゃないのよ、絶対にダメっ)
夫以外の男に愛撫されて感じるなど許されない。懸命に自分を戒めようとするが、いったん昂った性感は鎮めようがなかった。
牛島は器用に舌を動かしつづけて、勃起したクリトリスを転がしている。ときおり唇でキュッと挟みこまれる刺激もたまらなかった。
(許して、もう……もうおかしくなってしまいますっ)
はしたなく腰が浮きあがり、意志とは無関係にクイクイと動いてしまう。その直後、華蜜がピュッ、ピュッと間歇泉のように噴きだした。
「ううッ……ううッ……ひむううううッ!」
凄まじい快感が突き抜けて、頭のなかが真っ白になる。生まれて初めて体験する愉悦が、全身の細胞を沸騰させていた。
(な、なに? ああっ、いや、そんな……い、いやなのに……)
もしかしたら、これが「イク」ということなのかもしれない。由香里は涙を流しながらも腰を卑猥にしゃくりあげて、凄まじい快感に溺れていった。
3
「潮まで噴くとは、すごいイキっぷりだな」
牛島のからかう声で、闇に沈みそうだった意識が引き戻された。
頭の芯までジーンと痺れている。手足にも力が入らない。もう押さえつけられているわけではないのに、下肢はしどけなく開かれたままになっていた。
(ウソ……い、イカされちゃったの?)
由香里は心のなかでつぶやき、愕然となった。
まさか夫以外の男に感じさせられるとは、自分で自分のことが信じられない。もちろん、今でも愛しているのは浩志だけだ。しかし、肉体は心を裏切り、激しく反応してしまった。
手錠をかけられたままの手首が痛むが、絶頂の余韻のほうがはるかに大きい。とにかく、夫とのセックスでは味わったことのない快感だった。
浩志は性に関しては淡白で、夜の営みはあっさりしていた。
新婚当初はそれなりの回数があったが、今は月に一、二回といったところだ。一回あたりの時間も短く、胸を軽く揉んで股間をさっと撫でると挿入する。そして数回腰を振ったら、あっという間に射精して終わりだ。
由香里が達することはないが、絶頂を知らなかったのだから不満はなかった。
(どうして、わたし……浩志さんじゃないのに……)
罪悪感が湧きあがり、自己嫌悪に陥ってしまう。思わず啜り泣きを漏らすと、牛島がにやけながら顔を覗きこんできた。