横顔がはっきり見えた途端、記憶のなかの人物と重なった。
引っ越しの日に初めて会った牛島に間違いない。父親の部下で、母親とも昔の知り合いだという。
(どうして、おじさんが……あの女の人って、まさか……ち、違うよね)
嫌な予感がこみあげて頭のなかが混乱している。なぜ牛島がここにいるのかわからない。生のセックスを見ただけでもショックなのに、それが知り合いだったのだ。完全に気が動転して、どうするべきなのかわからなかった。
牛島に対しては、さほど悪い印象は持っていない。ちょっと不潔そうなところは嫌だったが、変わったおじさんといった程度の認識だった。しかし、獣じみた姿を見てしまったことで、嫌悪感が湧きあがってきた。
『奥さん、そっぽ向いてないで顔を見せてくれよ』
牛島が腰をねっとりと使いながら、女性の顎に手を添える。そして、向こう側を向いていた顔を上に向けた。
『あンっ、いやです……』
女性が長い髪を揺らし、濡れた瞳で牛島を恨みっぽくにらむ。その整った横顔に、沙緒里の視線が吸い寄せられた。
(そ、そんな……)
その瞬間、顔からサーッと血の気が引いていくのがわかった。
見まがうはずがない。信じられないことに、牛島に組み敷かれているのは沙緒里の母親、由香里だった。
(ママが……どういうこと?)
頭のなかが真っ白になっていく。全身から力が抜けて、フローリングの廊下にぺたりと座りこんだ。
大好きな母親のセックスを覗き見てしまった衝撃は大きすぎる。しかも相手は父親ではなく、父親の部下の男なのだ。いったい、なにが起こっているのか想像もつかない。だが、見開かれたままの双眸はベッドの上に向けられていた。
『いい顔になってきたな。牝の顔だ。オマ○コがたまらないんだろう?』
『いやらしいこと言わないでください……はンンっ』
牛島が卑猥な言葉をかければ、由香里は困ったように眉根を寄せて抗議する。しかし、その声には甘えるような響きも含まれていた。
『今さら照れることないぞ。ほら、また締まってきた』
『ああっ、そんなにしたら……あっ……あっ……』
母親の唇から発せられたとは思えない、艶めかしい女の声だった。牛島が腰を振ると、豊満な乳房がタプタプ揺れる。その双つのなだらかな丘陵の頂点では、ピンク色の乳首がいやらしく尖り勃っていた。
(いや……いや……どうしてなの?)
母親の恥態を見つめる沙緒里の瞳から、大粒の涙が溢れて頬を伝う。
どう贔屓目に見ても、母親が感じているのは間違いない。認めたくないが、父親以外の男に犯されて悦んでいる。しかも破廉恥な行為に耽っている場所は、なぜか沙緒里のベッドの上なのだ。
牛島の大きな手が、由香里のたっぷりとした乳房に伸びていく。柔らかい双丘をグニグニと無遠慮に揉みしだき、先端で充血している乳頭をごつい指で摘みあげた。
『あううっ、い、いやです……』
『相変わらずでかくて柔らかいな。乳首がピンピンになってるぞ』
『やンっ、摘まないで……あああッ』
乳房に十本の指を食いこまされて腰を力強く振られると、由香里の喘ぎ声がいっそう激しくなった。
『あッ、あッ、もうダメですっ』
『またイキそうなのか? クククッ、奥さん、今日は昼からイキっぱなしだな』
牛島は腰の動きを激しくしながら、下卑た笑い声を振りまいている。醜い肥満体を揺するたび、由香里のグラマーな裸体も大きく揺れた。
『む、娘が帰ってきてしまいます……ああッ』
『まだ大丈夫なはずだろう? だから外回りの合間に来てやったんだぞ』
父親の部下である牛島は、フューチャー事務機で外回りの営業をしている。おそらく仕事をサボって、昼から母親のことを犯しているのだろう。
『娘のベッドで犯される気分は格別だろう。そらそらっ!』
『あああッ、激し……あッ、ああッ、沙緒里ちゃん、許してぇっ』
二人は汗みどろになって腰を振り合っている。由香里は娘の帰宅時間を気にしつつも快楽に溺れて、あられもないよがり泣きを響かせていた。
(やめてママ……そんな声出さないで)
沙緒里は涙を流しながら、犯される母親の姿を見つめつづけている。穢らわしいと思いつつ、淫らになっていく母親から目を離せなかった。
『そんな奥ばっかり……あッ、あッ……う、牛島さんっ』
『イッていいぞ。そらっ、また奥さんひとりでイクんだ!』
腰の動きがさらに速くなり、グチュッニチュッという湿った音が聞こえてくる。男の人のモノが、女の人の穴を掻きまわしている音だった。
『ああッ、もう……もうダメっ、奥を突かれると、あうッ、すごいぃっ』
牛島の腰がぴったりと密着すると、由香里は裸体をググッと反り返らせた。まるで頭と尻でブリッジするように背中が浮きあがる。両脚はつま先までピーンッと伸びきり、両手を中年男の猪首に巻きつけた。
『あああッ、イッちゃう、あッ、ああッ、イクっ、イッちゃうううッ!』
由香里は美貌をくしゃくしゃに歪めてよがり狂う。悲鳴にも似た喘ぎ声を放ちながら、全身をビクビクと激しく痙攣させた。
(そ、そんな……ママ……)
沙緒里は母親の恥態を目の当たりにして愕然となった。
夫婦仲は円満に見えていた。喧嘩するなど考えられない。いつまで経っても恋人同士のような夫婦だった。浮気とか不倫などの世間を騒がすような言葉は、両親とは一生縁がないと思っていた。