母娘喰い 奪われた媚肉

「ひっ……」

「奥さん、鍵を掛け忘れてましたよ」

よれよれのグレーの背広を着た牛島が立っていた。

薄汚い革靴を脱ぎ捨てて、当然のようにあがりこんでくる。禿げた頭頂部を光らせながら贅肉だらけの巨体を揺らし、唇の端にいやらしい笑みを浮かべた。

「悪い奴が狙ってるかもしれないから、戸締まりは気を付けないと」

自分のことを棚にあげて、よくそんなことが言えるものだ。

「か、帰ってください……」

勇気を振り絞って口にする。怖くてたまらなかったが、娘を守りたいという気持ちのほうが勝っていた。

「おや? 今日はずいぶんと強気だなぁ」

牛島はまったく怯む様子もなく、ゆっくりと階段をあがってきた。冷たい瞳で見つめながら、獲物を追い詰めるように近づいてくる。

「こ、来ないで……警察を呼びますよ」

由香里は涙目になりながらも、侵入者をきっとにらみつけた。たとえ殴り飛ばされようとも、二度と娘に近づけるつもりはなかった。

「ほう、警察ねぇ。そりゃあ大変だな。根掘り葉掘り聞かれるらしいぞ。どんなふうに犯されたのか」

牛島はさも楽しそうに笑っている。はったりではないだろう。由香里が警察に連絡できないと確信しているのだ。

「体位だとか、声をあげたのかとか、中出しされたのかとか、なんでもかんでも聞かれるんだってな」

「そ、それでも……」

巨体が迫ってきて、思わず後ずさりする。レイプされた女の弱みか、その場にとどまることができなかった。由香里が後ろ向きに階段を昇るたび、牛島も一歩ずつ歩を進めてきた。

「それでも警察に行くのか? 奥さん、あんたはいいかもしれないが、お嬢ちゃんはどうなんだろうな。処女膜を破られたことまで話さなくちゃいけないんだぞ」

「そんな……そんなひどいこと……」

「だろ? 奥さんが警察に行けば、大勢の人間に恥ずかしい事実を知られることになるんだ。でも余計なことをしなければ、俺だけの秘密にしといてやる」

いつの間にか、完全に気圧されている。階段を昇りきってしまい、すぐ背後には娘の部屋のドアがあった。

確かに牛島の言うことにも一理あるかもしれない。警察に行けば牛島は捕まるだろう。だが、沙緒里は新たな苦痛を強いられることになる。それならば、自分が犠牲になるしかなかった。

(わたしが、守らないと……)

由香里は悲壮な覚悟で、ドアの前に立ち塞がる。娘のためなら、どんなことでもするつもりだった。

「わかりました……でも、せめて他の場所で……」

夫の匂いがするマイホームで犯されるのは耐えられない。それにこの危険な男を、できるだけ娘から遠ざけたかった。

「心配しなくていい。俺はお嬢ちゃんに用があるんだ」

「ど、どういうことですか?」

「学校を休んでるんだろう? なにしろロストヴァージンの翌日だからな。今日はお嬢ちゃんを慰めるために、出社してすぐ営業に出発したんだぞ」

牛島は今日も上司である夫に嘘をつき、外回りの営業をサボってレイプするためにやってきたのだ。

「わかったら、そこをどくんだ」

無理やりどかされそうになり、由香里は必死に牛島の腕に縋りついた。

「待ってください、お願いですから、もう娘には……」

「くどいな。今日はお嬢ちゃんとやりたい気分なんだよ」

「わたしがなんでもします、だからお願いします」

寝ている沙緒里を起こさないよう小声で、しかし懸命に懇願を繰り返す。すると牛島の表情に微かな変化が現れた。

「なんでも? 今、なんでもするって言ったか?」

まるで揚げ足を取るように何度も確認してくる。嫌な予感がこみあげてくるが、娘を守るには認めるしかなかった。

「は……はい……なんでも、します……」

震える声でつぶやいた。

胸のうちには恐怖が渦巻いている。自ら地獄に足を踏み入れた心境だった。

「よく言った。じゃあ、俺も約束してやる。交換条件だ。俺を満足させれば、お嬢ちゃんには手を出さない」

牛島ははっきり宣言すると、大きな手で由香里の肩を抱いてきた。

「契約成立だな。それじゃ、寝室に行こうか」

「そんな、家では……」

「なんでもするんだろう? 俺はこの家の寝室がいいんだよ」

とにかく怒らせるわけにはいかない。この中年男の命令に従って、満足させるしかなかった。

またしても悪魔のような男と、夫婦の寝室で二人きりになってしまった。

カーテンはレースになっているので、春の日射しがたっぷり差しこんでいる。たった今から、この明るい寝室で嬲られるのだ。

すでに牛島は服を脱ぎ捨てて全裸になっており、ダブルベッドにどっかり腰掛けている。股間の逸物は力なく垂れさがっているが、それでも夫のモノよりはるかに太くて長かった。

(ああ、いや……)

由香里は不安に駆られてうつむいた。

服を着たまま牛島の前に立たされている。先ほどから無言のまま、卑猥な目で眺めまわされていた。

「ストリップでもしてもらおうか」

それが牛島の第一声だった。いきなり襲ったりはせず、じっくりと嬲るつもりなのかもしれない。手が届く距離なのに、触れようとする素振りすらなかった。

「色っぽく脱ぐんだぞ。ストリッパーになりきって俺のチンポを勃たせるんだ」

牛島は好き勝手なことを命じてくる。ストリップを見たことのない由香里が、ストリッパーになりきれるはずがない。それをわかったうえで、無理難題を押しつけているのだろう。