放課後の蜜肌教室 人妻女教師と優等生

「君には将来があるもの。それを壊すような真似はしたくないの」

「真弓先生……」

幸太は感動に言葉を詰まらせた。もちろん拒絶された悲しさはあるが、それ以上に憧れの女教師が自分のことを真剣に想い、考えてくれていることが嬉しかったのだ。

「勝手なこと言ってすみません」

「謝らないで。そういう素直なところも好きだけど、ね」

嬉しそうに微笑む真弓を、月明かりが白く照らし出していた。

第三章 屋上で淫らな昼休み

朝の職員室は始業前の喧騒に包まれていた。一時間目の準備を黙々と進める者、新聞の朝刊を広げのんびりと読んでいる者、隣席の教師とっている者、と過ごし方は人それぞれだ。

そんな中、真弓はひとり机の前で物思いにふけっている。

なかば無意識に左手をかかげた。薬指にはめた結婚指輪を蛍光灯の明かりに透かす。柔らかな銀色の輝きを見つめながら深々とため息をついた。

(この間の浅野くんとのセックス、本当に気持ちよかった……あんなに充実したセックスは久しぶりだったわ)

一週間前のプールサイドでの逢瀬を思い出し、甘い吐息をこぼす。スカートの上からそっと股間をさすり、若い精力に貫かれて胎内が満ちあふれるような感触を反すうした。今も秘孔に幸太のたくましいモノが埋まっているような気分だった。

(ついこの間まで童貞だったくせに、このあたしをイカせるなんて)

美貌と妖艶な肢体を兼ね備えた真弓には、人並み以上に性体験を重ねてきたという自負があった。セックスで自分を屈服させる男なんていやしない、と思っていた。だが幸太に抱かれているとそんな気持ちがあっけなく揺らいでしまう。

「浅野くん……」

今度は言葉に出してはっきりとつぶやく。もしも人目がなかったら今すぐオナニーをはじめていたかもしれない。三十二歳の熟れた肢体は若い男子生徒の肉体を思い出し、燃え盛っていた。

(あたし、いつの間にか本気になっているのかしら)

以前から幸太のひたむきなところが可愛いと思っていた。素直な性格を好ましく思っていた。

彼と身体を重ねたきっかけ自体はあくまでも寂しさを埋めるためだ。結婚して五年になる夫はセックスに淡白で、最近ではほとんどセックスレスに近くなっていた。三十二歳の女体は満たされることもなく、悶々とした日々を過ごしていた。

だからといって、相手が誰でもいいというわけではない。そんなとき放課後の教室で二人っきりになり、以前から好意的に思っていた気持ちに火がついた。

幸太とのセックスは、予想をはるかに超えて素晴らしかった。

若さも、たくましさも、力強さも──夫からは与えられたことがないほどの、気の遠くなるような愉悦に、真弓の身体は深く満たされた。

童貞ながらも懸命に真弓を悦ばせようとしてくれた幸太の一途さが、胸に響く。

だが人妻でありながら高校生の少年に溺れるなどけっして許されないことだ。深みにはまれば抜け出せなくなる。これ以上許されない関係を続けてはならない。

(そう許されないわ。続けてはいけない……いけないのに)

唇を強く噛み締めてやるせない思いに浸る。頭の中で理解はしているが、もはや感情のほうがついていかなかった。

「浅野くん……早く会いたい」

禁断の思いを胸に秘め、真弓は教え子の少年の名前をもう一度つぶやいた。

初夏の日差しを背中に浴びながら、幸太はまっすぐに歩いていた。以前は猫背気味の姿勢だったのだが、今は意識して背筋を伸ばすようにしている。自分に自信を持ち、堂々と歩くことを心がける。

「おはようっ」

教室に入ってクラスメートと挨拶を交わすときも、できるだけ大きな声で。元気よく。クラスメートの中には、そんな彼を驚いたような目で見る者もいた。

「よう、浅野」

最近よく話すようになった男子生徒の楠木が挨拶を返してくる。体育会系の少年で幸太とは百八十度性格が違うのだが、なぜかウマがあって仲良くしている。と、その楠木がそっと耳打ちしてきた。

「ところでさ、昨日いいブツが手に入ったんだ。女教師もので、生徒と教室でヤッたり、授業中にバイブ入れられたり、屋上で青姦したり──今度お前にも貸してやるよ」

「お、女教師もの……?」

幸太が真っ先に連想したのは真弓の痴態だった。誰も居ない屋上で豊満な肢体と交わる光景や、バイブレーターを仕こんだまま生徒たちの前で授業をおこなう姿を想像すると、腰の芯に灼熱した衝動がこみあげてくる。

「どうだ、想像しただけで勃ってきただろ。え? どうだ?」

「いやぁ、ははは……」

思わず苦笑いしながらも楠木や、さらにその話題に釣られてやってきた他の男子生徒たちと談笑する。以前の幸太ならありえなかった光景だ。少しでも変わろうとしていた。積極的に自分を変えていこうとしていた。

(真弓先生に、ちょっとでも釣りあうようにならなきゃ)

真弓のことが好きだという気持ちは日に日に高まっていた。相手が人妻であろうと関係ない。禁忌も、背徳も、少年の純粋な慕情の前には意味をなさない。

──やがて午前中の授業がすべて終わり、昼休みを告げるチャイムが鳴った。

幸太は脱兎の勢いで教室を飛び出す。前方には濃紺のスーツを着た背中があった。職員室へ戻ろうとしていた真弓に追いつき、声をかける。