放課後の蜜肌教室 人妻女教師と優等生

と、そのとき誰かの視線を感じた気がして、幸太はピストンを中断して背後を振り返る。入り口の扉は閉まっていた。

「あら、どうかしたの……あぁっ……あ、浅野くん」

「あ、いえなんでも……気のせいみたいです」

真弓が物欲しそうな顔で抽送をせがみ、幸太はふたたび腰の律動を再開した。

図書委員の会合が長引き、百合が荷物を取りに教室へ戻ったときにはすっかり遅くなっていた。扉を開けようとして、ふと百合は眉をひそめた。

「何の音……?」

わずかに開いたドアの向こうから、ぎしぎしとなにかがきしむような音が聞こえてくる。不審に思ってドアの隙間からそっと中をのぞきこんだ。

(あっ……!)

教室の中で繰り広げられていた衝撃的な光景にもう少しで声を上げるところだった。

椅子に座った幸太の腰に真弓がまたがっている。飢えたように腰を動かすさまはまるでロデオのようだ。生まれて初めて目にするほど卑猥な騎乗姿に、純情な少女の胸は妖しくうずいた。

「や、やだ、いったいなにを……? どうして……浅野くんが、先生と」

激しいショックを受けて後ずさる。目の前の光景が信じられなかった。頭が真っ白に染まり、思考が停止する。

幸太は特別美男子というわけではないし、勉強やスポーツに秀でているわけでもない。どちらかといえば、男子生徒の中でも冴えないほうだ。だが真面目で素直な性格と、ふとした瞬間に垣間見える優しさを、百合は知っていた。

そして気がつくと、幸太の一挙手一投足をつい目で追いかけてしまう自分がいた。

ただ百合自身積極的な性格ではないし、高校一年生になる今日まで恋愛経験もなかったため、自分からアプローチをすることがなかなかできず、もどかしい思いを日々募らせていた。

いずれは彼にもっと近づきたい──それは百合の、年ごろの少女らしい願いだった。ささやかな、だがそれだけに切なく燃え盛る恋心だった。

(私だって浅野くんのことが……好き、なのに)

ずっと胸に秘めてきた思いを踏みにじられた気分だった。自分以外の女が、それも自分よりもずっと色香のある年上の女教師が幸太とセックスをしている。目の前で腰をぶつけあい、唇を重ねあっている。

(いや……浅野くんに、いやらしいことしないで。彼は、私が──)

百合の胸に狂おしいまでの嫉妬の炎が灯った。

こうして幸太と真弓のセックスシーンを目の当たりにしたことで、逆に気づかされてしまった。自分がどれだけ強く、幸太のことを想っていたのかを。

じわり、と腰の芯が熱くなる。

愕然となる百合の前で、憧れの少年と妖艶な女教師はいつまでも交わっていた。

第四章 優等生が捧げてくれた純潔

その日の朝。幸太が教室のドアを開けると、黒板の掃除をしていた女子生徒とちょうど目が合った。

艶のある黒髪は肩のところまであり、穏やかそうな容貌は可憐の一言だ。彼女──新藤百合はクラスの中でもけっして目立つ存在ではないが、近くで見ると驚くほど可愛らしい顔をしていることに気づく。額のところで綺麗に切りそろえた前髪の下で、つぶらな瞳がオドオドと揺れていた。

「お、おはよう、浅野くん」

百合はぎくしゃくとした態度で挨拶を送った。なぜか気まずそうな顔をして幸太と視線を合わそうともせず、もじもじと両手を組み合わせて指先をいじっている。顔中がうっすらと桃の色に染まっているさまは、思わず息を止めるほど可憐だった。

(あれ、どうしたんだろう? なんか態度が変だけど)

幸太は訝りながらも挨拶を返した。

百合は見た目通りのおとなしい性格をしている。口数が少なく、彼女から話しかけられた経験は数えるほどしかない。たいていの場合、挨拶を交わしてそれで終わりという感じだ。

「あ、あの、浅野くん……昨日のことなんだけど……」

「ん、なに?」

朝の喧騒の中では、声が小さくてよく聞こえない。幸太は百合の話に耳を傾けようとした。

「あのね……浅野くん、昨日の放課後に真弓先生と──」

「おーっす、浅野」

彼女の言葉をさえぎるように、楠木が幸太に話しかけてきた。

百合との話を中断し、幸太は彼のほうに向き直る。そのままなし崩し的に、昨日のバラエティ番組やプロ野球の試合結果などの雑談へとなだれこんだ。そのせいで百合との会話はそこで終了してしまう。

「この前話した女教師ものなんだけどさ、ちゃーんと持ってきてやったぜ」

「えっ、本当?」

「お。嬉しそうじゃねーか、このエロ大王め」

「え、エロ大王はないだろ。そんなこと言うなら楠木はどうなんだよ」

和やかな談笑。最近はこうして他のクラスメートと話す機会が増えたような気がする。幸太自身、以前よりも積極的に人と接するようになった。

(僕が変わることができたのは……やっぱり、真弓先生のおかげだな)

心の中でしみじみとつぶやき、あらためて美貌の人妻教師に感謝の思いを捧げる。彼女は幸太を男にしてくれただけでなく心までも導いてくれた。身も心も一人前の男になるように。

──今日の英語の授業でも真弓の美貌は際立っていた。相変わらず颯爽とした動きで教壇と黒板の間を行き来し、流暢な英語で授業を進めていく。グレイのパンツスーツ姿が凛々しい容姿を引き立たせていた。

「おい、真弓先生ってなにか変わったよな。あんなに色っぽかったっけ」