「こんなに乱暴にされたの、初めてよ。大人しい顔して、意外にサドなのね……」
真弓が呆然とした顔で幸太を振り返った。
「ごめんなさい。真弓先生と外でしてるんだ、って思うと、つい興奮して……」
射精を終え、ようやく理性がよみがえってくる。
幸太よりもずっと年上で気が強く、男以上にしっかりしているが、それでも真弓は女性なのだ。気遣いが足りなかったことを猛烈に反省する。
「せ、先生は本当に気持ちよくなってくれたの? 僕みたいな初心者に合わせて、気を遣ってるんじゃ……?」
「あら、そんなこと心配していたの。本当に素直なのね」
真弓が幸太の頭を軽く撫でる。
「無理して背伸びしなくてもいいのよ。あたしは、今のままの君が好きだから」
真弓の微笑みを目にして、あらためて恥ずかしさがこみあげる。自分勝手に彼女を求め、貪ってしまったことへの恥ずかしさだった。
「すみませんでした、本当に──」
「謝らないでよ。一生懸命にしてくれて嬉しかったんだから」
切れ長の瞳が柔和なカーブを描いた。
「二回もイカされたのは初めて。……乱暴にされるのも悪くないわね。犯されてるみたいな感じで、あたし、すごく感じたわ。ふふ」
「本当? 本当に気持ちよくなってくれた?」
最高の褒め言葉に、幸太は目を輝かせた。自分よりも性的にずっと熟達した女性に、初めてよ、などと言われると、胸が高揚感で満たされる。誇らしかった。
「あたしが、イク、って叫んでたのが聞こえなかった? たかだか高校生にイカされるなんて、ちょっと悔しいけど……本当によかったわ」
「嬉しい……」
幸太が頬を緩め、安堵と喜びの入り混じった笑みを浮かべる。
対照的に、真弓は艶然と表情をほころばせた。
「乱暴にしてすみませんでした」
幸太がもう一度頭を下げる。
「本当に申し訳ないって思っているなら、お詫びをしてちょうだい。もっともっと、あたしを気持ちよくさせて──」
白い指先が半萎えの肉茎を撫であげる。むくり、と早くも勃起を取り戻しつつある若幹に、幸太は自分でもあきれてしまった。
今日は三時間目が英語の授業だ。幸太は熱い視線を教壇へ注いでいた。
真弓の態度はあきらかに妙だ。いつもなら見事な発音で話す英文を、今日はつっかえつっかえ読んでいる。ときどき息を荒げ、顔を赤くしてうつむく。
(色っぽいな、真弓先生)
直接この手に抱くのではなく、こうして生徒としての位置から見つめるとあらためて真弓の魅力を実感する。知性的でいて女としての艶を併せ持つ真弓──魅惑的な人妻教師への憧憬は、彼女と一線を越えた今もけっして衰えることはない。むしろ日に日に高まるばかりだった。
「この構文は……んっ……soの後に形容詞か副詞がきて……く、ぁっ……thatの後には……あぁぁ……」
ハアハアと艶めいた吐息をこぼす女教師に、クラス中からざわめきが上がる。特に男子生徒たちは露骨に欲情の視線を浴びせかける。
それも無理はなかった。幸太の指示で、真弓は胎内に淫らな器具を仕こんだまま授業をおこなっているのだ。耳をそばだてると、実際には聞こえないはずのバイブレーターの震動音が耳元で鳴り響くような気がした。
(通販でバイブを買っておいてよかった。こんなに効果があるなんてね)
少年らしい無邪気な悪戯気分と、女を知って目覚めた獣性とがまじりあった思いを、胸の内でつぶやく。
──幸太が童貞を喪失してからすでに二週間近くが経っていた。
真弓先生に少しでも釣りあう男になろう、と決心し、以来、勉強にもスポーツにも励んできた。これまでの人生でろくに努力らしい努力をしてこなかった幸太だが、真弓のためだと思うと、不思議なほど気力が沸いてくる。
前方に目を向けると、ちょうどその努力の成果を示す機会が訪れようとしていた。
真弓が、二日前におこなった実力テストの答案を配りはじめたのだ。答案を受け取った生徒たちの顔は悲喜こもごもだった。どちらかというと落ちこんでいる者のほうが多いだろうか。
幸太も前回は似たような反応だった。なにしろクラスでただ一人赤点だったのだから。だが前回と違い、今回は自信がある。
(僕だってがんばってきたんだ。いつまでも前のままじゃない)
自分の名前を呼ばれ、幸太は教壇へ向かった。堂々とした態度で答案用紙を受け取った。この間のような無残な点数ではない。勉強の成果は着実にあらわれていた。
答案から顔を上げ、真弓に目を向けた。スーツの合わせ目から爽やかな青色のブラウスがのぞいている。胸の膨らみの頂点は固く尖っていた。ブラジャーをつけていないため、よく見ると乳首の勃起を確認できる。
もしもタイトスカートをめくれば『異物』を抱えこんでこんもりと膨らんだショーツを確認することができるだろう。ショーツに覆われた秘唇には、幸太の指示でバイブレーターが潜りこんでいた。ランダムで振動するように設定してあるため、不規則に震えるバイブに女教師の性感は翻弄されているはずだ。
実際、視線を股間へ向けると、ガーターストッキングに覆われた太ももの表面を透明なしずくがつたっているのが見えた。
(先生、濡れてるんだ。バイブを入れたまま授業してるから)
頬を上気させ、全身から匂いたつような女の香りを放つ真弓は、色艶に満ちあふれていた。自席に戻った後も呼吸を忘れて見とれてしまう。