真弓の腰に自分の腰をぶつけるようにして膣孔をえぐっていく。まろやかな粘膜が肉茎に絡みつき、根元まで埋めこむと子宮口が亀頭に吸いつくようだ。
熟れきった媚粘膜を責めこみながら幸太は至高の愉悦に浸っていた。しだいに性感が高まり、陰嚢がキュッと収縮する。このままピストンを続けていればおそらく数分も持たないだろう。
そのとき、こつ、こつ、という硬質な靴音が階下から聞こえてきた。
──誰かが上ってくる!
「えっ、あっ!?」
「離れて、浅野くん!」
さすがにこういうときは年上の真弓のほうが落ち着いていた。先ほどまでトロンと瞳を潤ませていたとは思えない態度で上体を跳ね上げると、腰の位置をずらして結合を解き、手早くショーツを身につける。
幸太はそんな彼女の冷静さに感心しながら、みずからも下着とスラックスを穿きなおした。
ほどなくして階下から一人の教師が上がってきた。国語を担当している年かさの男性教師で、幸太のクラスの授業も受け持っている。
「おや、こんなところで何を?」
男性教師から不審げに見つめられ、幸太は心臓の鼓動が跳ね上がるのを感じた。もしも二人の関係がバレればよくて停学、悪くすれば退学もありうる。そして真弓は──おそらく免職ではないだろうか。
「浅野くんからこの間の授業のことで質問を受けたんです。職員室で聞いてもよかったんですが、すぐに終わりそうな内容だったのでここですませてしまおうかと」
「そうでしたか。そういえば浅野は最近、がんばっているようですな。私の授業でも積極的に質問してきますよ」
男性教師はたちまち相好を崩し、納得したような顔で去っていく。
男性教師の姿が完全に見えなくなると、どちらからともなくため息をもらした。
「今のは危なかったわね」
台詞とは裏腹に真弓の表情はどこまでも平静さを保っていた。まだ心臓が早鐘を打っている幸太とは大違いだ。
そのとき無情にも昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴った。幸太は続きがしたくてたまらなかったが、真弓がそれを押しとどめた。
「だめよ。あたしも授業があるし、浅野くんだってそうでしょ」
「……そうですね」
正直言って幸太のほうは授業をサボってもかまわないと思ったが、さすがに真弓にまでサボらせるわけにはいかなかった。瑞々しいペニスは射精感が高まったまま痺れるような愉悦に包まれている。生殺し状態だった。
(続きがしたい──)
濃紺のスーツを内側から押し上げる双丘やヒップラインが少年の欲望をこの上もなく刺激する。何もかもを忘れて押し倒したいというどう猛な衝動がこみあげ、口の中いっぱいに溜まった生唾を飲みくだした。
「さ、行きましょ」
真弓は幸太の欲情を断ち切るようにぴしゃりと告げて、踵を返した。
眼前でタイトスカートに包まれて豊かな双尻がダイナミックにはずんでいる。幸太はなおも物欲しそうな視線で肉感あふれる臀部を追いかけていた。
放課後の図書室は閑散としていて、室内には幸太と百合の二人しかいなかった。
「ごめんなさい。待たせてしまって」
「図書委員の仕事って大変なんだね」
「毎日本棚を整理しないとすぐに溜まっていくから。今週いっぱいはがんばらないとね」
百合が楚々とした微笑みを浮かべた。
原河高校では一週間ごとに各クラスの図書委員が順番で書庫の片付けに当たっている。返却された本を書棚に整理するのが仕事だ。今週は幸太たちのクラスの番で百合が放課後に整理をしていた。
幸太は百合に頼まれ、その手伝いでここにいた。初めて身体を重ねたあの日から、百合はなにかと理由をつけて早朝や昼休み、それに放課後などできるかぎり幸太と一緒にいるようつとめているようだった。
「今日はこれで終わり。やっと幸太くんと一緒に帰れる。嬉しい」
百合が幸太の胸板にすがりついた。小柄な彼女は幸太の胸あたりにちょうど頭の位置がくる。背伸びをして首筋に軽くキスをしてきた。
くすぐったいような心地よさに幸太は小さくうめいた。
と、百合が硬直する。鼻先を幸太のうなじにこすりつけるようにして匂いを嗅いだ。嫌な予感が背筋を走りぬける。
「……幸太くん、もしかして真弓先生と会っていたの?」
百合の声にとげとげしい響きがこもった。あっと思った。おそらく幸太の身体に真弓の香水の香りが残っていたのだろう。
「えっ、そ、それは……」
嫉妬をにじませた視線でにらまれ、幸太は言葉を失った。
放課後の教室で初めて身体を重ね、朝のプールでもフェラチオをしてもらったとはいえ、幸太と百合は『付き合おう』という言葉はまだ口に出していない。幸太にいたっては『好きだ』という言葉すら口にしていなかった。
真弓の存在もあり、二人の関係は微妙なバランスの上に成り立っていると言えた。
「えっと、その」
「会ってたんだ?」
「……ごめん」
幸太は深く頭を下げた。百合とは正式に付き合っているわけではないから、とかそんな言い訳は思い浮かばなかった。ただ彼女にショックを与えてしまったことが純粋に申し訳なかったのだ。
「私じゃ、駄目なの? 満足できなかった? だから真弓先生と……」
悲しげにつぶやく百合を見て、今さらながらに罪悪感が湧きあがった。
「違うよ、僕は──」
「やっぱり真弓先生みたいな大人の女の人じゃないと、幸太くんは満たされないの?」