「ここなら、人目につかないと思う」
「はい、先生」
路地に入ると、二人を歓迎するように、また頭上の風車がまわりだす。追って赤い筒がまわる。モスグリーンの三日月がまわる。灰色のひょうたんがまわる。藍色の笑う仮面がまわる。オレンジ色の扇がまわる。ピンクの猫がまわる。
風車とすべてのまわるものに誘われて、路地の中心まで進むと、優也よりも先に茉莉が訴えた。
「先生、パイズリさせてください!」
「えっ!」
「わたしの胸の疼きを癒すには、先生のを挟むしかないんです」
「茉莉ちゃん、それ、本気で言ってるの?」
「母さんに対抗心を燃やしているだけなのかも。でも、それもわたしの本心。正真正銘のわたしの本気です」
優也は左右に顔を向けて、路地の出口を見やる。今は人影がない。
(もし、路地を覗きこまれたら。キスくらいならいいけど、茉莉ちゃんにパイズリをさせているところを見つかったら……)
想像しただけでとんでもない。とんでもないことだからこそ、やってみたい、という欲望が燃え上がる。
顔を上げれば、自分の体温が作る上昇気流を受けて、鮮やかな風車がカラカラとまわっている。そして種々雑多なデザインのものが回転しつづける。
(ここは芸術に祝された特別な空間だ。異世界だ)
茉莉へ向けてうなずいた。
「ぼくも本気だ」
優也はまた、茉莉のブラウスのボタンをはずした。
現れた身体は、乳房だけでなく、鳩尾も腹も汗で濡れている。頭上のアーケードの照明の光を浴びて、全身が宝石のように輝き、優也の目を引きつけた。
ブラウスをはだけた茉莉は、路面に膝をついた。優也がデニムパンツに手をかけるよりも早く、茉莉の指がパンツのファスナーを下げて、中に入りこむ。
指先がトランクスの中で、優也のペニスに触れた。
「硬いです!」
「ううっ!」
優也も反射的に腰を突き出した。茉莉に意識が向いていたために、自覚していなかったが、トランクスの中が猛りたっていた。
茉莉は膨張した男根を苦労して引っぱり出して、亀頭を自分へ向ける。
この一週間で、優也の勃起したペニスに何度も間近に接しているが、いつ見ても圧倒されてしまう。優也から『ぼくのは特に大きくないから。普通サイズだから』と言われても、茉莉が肉眼で見て、直接触れた、ただひとつだけの男性器には、力強い威圧感がある。
自然と感歎の息があふれた。
「はああ……」
吐息を亀頭にふりかけながら、右手で肉幹をつかみ、左手で二つの乳房を下から支える。優也が身体を前に出して、乳房の間に挿入した。触れ合う乳肉の間を押し開いて、亀頭が奥へと進んでいく。
「ああ、熱いです」
茉莉は自分がペニスを挟んでいるのに、自分の胸を灼熱の杭に貫かれているように感じる。
両手を動かして、左右の乳房を押しつけると、いっそう優也の存在感が増す。今まで茉莉を悩ませつづけていた疼きが、すうっと消えた。入れかわりに身体が蕩ける快感が染みこんでくる。
「んっ、あああ、先生のペニスを挟んで、気持ちいいです」
歓喜に輝く声に誘われて、優也は自分の両手を茉莉の手に重ねた。
「ぼくも、茉莉ちゃんのおっぱいが最高に気持ちいいよ。パイズリではなくて、茉莉ちゃんに悦んでもらうためのおっぱいセックスにしよう」
優也は両手に力をこめて、乳肉を勃起男根に押しつける。
縦にひしゃげる乳房が、より熱く燃え上がり、亀頭と肉幹に密着する部分から喜悦の波が広がっていく。
「あっ、うんんっ! もっと感じるう!」
茉莉は自分の胸を押さえながら、朱色の美貌を左右に振る。膝立ちの下半身では、ショートパンツに包まれた尻が大きくくねった。
優也は腰を引いて、自分が作った乳圧の中からペニスを抜いていく。亀頭が乳肌に強くこすられて、たまらない快感が生まれる。
優也以上に、茉莉の胸が歓喜に痺れた。熱せられたFカップの中で、多数の悦楽の泡がふくらんではパチパチと弾ける。弾けるたびに、ひとりでに腰がうねり、内腿をこすり合わせた。
優也が腰を突き出し、腹を乳房に押しつける。しこりきった二本の乳首が腹筋にこすられて、くにゃりと折れ曲がった。
「あひいいっ!」
乳首が溶ける。茉莉は自ら上体をくねらせて、折れた肉筒を優也の腹になすりつけ、新たな快感を貪る。
「はっんんん、乳首、気持ちいい!」
優也がまた腰を引き、また突き入れる。優也が作る波に乗って、乳房が連続して形を変えつづけた。先端の乳首が右に左に倒されては、キリキリと勃ち上がる。内側では乳房の柔肉が、燃え盛るペニスにえぐられつづけた。
優也が言ったように、パイズリではなく胸のセックスだ、と茉莉は自覚する。愛撫されているのは優也ではなく、自分のほうだ。
茉莉が汗に濡れた顔を上げ、随喜の涙をためた目で優也を見つめる。
「先生、もう、もうダメです! またおっぱいでイッちゃいます!」
「前よりも早い!」
「アートの下だから!」
茉莉の真剣な言葉に驚き、優也はまた頭上を見上げた。
アーケードの風車が、パイズリ前に見たときよりも何倍もの勢いで回転して、カラカラと小気味よい音を奏でている。
(ぼくと茉莉ちゃんの身体が熱くなって、強い上昇気流を作ってるんだ)
風車の回転の勢いと、他のパーツの回転が連動しているのだろうか。優也はすべての回転数が増した気がした。まるでアーケード全体が、動きと音で自分と茉莉のセックスを祝福しているようだ。