繭の態度はとても魅力的だが、同時に優也に疑問をいだかせる。
「あの、繭さん、質問していいですか」
「はい、なんでもどうぞ」
「その、どうして、ぼくがなにもしていないのに、えーと、イッたんですか?」
「それは、優也くんの精液を飲ませていただいたから。ああ、生身の男の人にイカせてもらうのは、十年ぶり」
「ぼくのを飲んだだけで!? そんなことが、あるんですか!」
繭の美貌に、うっとりとした笑みが浮かぶ。
「わたしはそういう女なのよ。精液を飲むだけで果ててしまう、とても恥ずかしくて淫らな身体よ」
「そんな」
「健治さんに、そう調教されたわ」
優也はまさに言葉を失った。呆然として、精液を飲んだ余韻に輝く妖艶な美貌を凝視する。
「調教といっても、誤解しないでね。健治さんは、酷いことはなにもしなかったわ。健治さんは若かったけれど、とても女性経験の豊富な人だった。もちろん、わたしとつきあってからは、わたしだけを愛してくれたわ。そうしてキスの経験もなかったわたしの身体を、ていねいに開発してくれたのよ。おかげで、わたしの身体はとても淫らになったの」
優也が意味を理解する時間を与えるように、繭は言葉をいったん切った。そして少し身体を前にずらして、顔を男子大学生へ近づける。
「もうひとつ、誤解しないでね。わたしの身体は淫らだけれど、妻の貞操はきちんと守ってきたのよ。健治さんが生きている間も、死んだ後も、他の男の手を握ることさえ考えられなかったわ」
また間を置き、さらに優也に近づく。今にも唇同士が触れ合いそうな距離。
「優也くんに出会うまでは」
本人の説明を聞いても、優也はよく理解できなかった。ただ眼前にある甘く熟した女の顔を見つめていると、自然に言葉が出る。
「キスしていいですか」
「はい! キスしてください。あ、ちょっと待って」
バネが跳ねるように繭が立ち上がり、パタパタと寝室を横切って、バスルームへ入った。繭がこれほど敏捷に動くのを、優也ははじめて見る。
「なに?」
首をかしげていると、すぐに繭がもどってきた。再び、優也の前にすすっと正座する。
「なにをしたんですか?」
「口をすすいできたの。精液が残っていると、いやだと思って」
微笑む繭の唇に、優也は唇を押しつけた。勢いがありすぎて、少し痛かったが、気にならない。
「んっ」
「うん」
優也は自分の唇に触れる唇のやわらかさに、全身を昂らせる。
(キスしてる! 繭さんとキスしてるぞ! ファーストキスだ!)
ついさっき繭にフェラチオをされて精液を飲まれたのに、ファーストキスのほうが、心がより大きく躍った。
優也はキスをしたまま、無意識に膝立ちになる。
繭も正座の腰を浮かせた。
優也は繭の身体を抱こうとしたが、ギプスで固めた右手は動かせない。しかたなく左手だけを背中の素肌にまわして、強く抱きしめる。
「んんん……」
「うっうんん」
繭も両腕を、優也の背中にまわす。
優也の胸に、ビキニトップのつるつるの感触が押しつけられ、巨乳のたわわな弾力を感じた。
先に舌を伸ばしたのは、優也のほうだった。胸に感じる乳房の圧力が、童貞男子を大胆にする。突き出した舌先で、自分に密着する繭の唇を上下に割る。
優也が舌を相手の口の中に入れると、はじめて繭の舌が動いた。自分から亀頭を咥えることを望んだ熟女とは思えない、おずおずと遠慮した動きで、繭は優也の舌と触れ合う。
ねちっ。
と、口と口の間で、あえかな音色が鳴る。
優也が味わったことのないぬるぬるした触感が、舌先から浸透した。
(舌に触ってる! 繭さんの舌、ねっとりしてる!)
もっと味わいたい。燃え盛る欲望に駆られて、舌をくねらせ、繭の舌をしゃぶる。悩ましく粘つく音色が、つぎつぎと口内から直接脳へと伝わった。
さらに舌音に加えて、繭の喘ぎも聞こえる。
「んっ、うっんん、んあ……」
優也は呼吸するのも忘れて、甘い果実のような舌を吸いつづけた。
「ふわあっ!」
長い舌同士の抱擁の末に息苦しくなり、ようやく口を離す。二人の唇の間に、唾液の透明な糸が伸びて、ふつふつと切れる。
繭は自分の唇をそっと舐めて、甘い声を投げかけた。
「胸を触ってください」
優也の返事を待たずに、両手を背中へまわし、ストラップのホックをはずした。白い三角形のカップを胸から離して、寝室の隅へ放り投げる。
解放された乳房は、自由を謳歌するようにふるるんと揺れて、優也へ向かってどっと迫った。小さいビキニのトップをはずしたからといって、たいして乳房のサイズが変化するはずがない。それでも優也の目には、ボリュームがひとまわり大きくなったように映る。
「大きい……」
はじめて生で見せつけられる巨乳の大迫力に、優也は思わずたじろぎ、あたりまえの単語しか出ない。
満々と張りつめた乳房は、自身の重さでやや位置を下げた。それもまた、たまらなく艶めかしく感じる。色白の乳球の先端には、淡い桜色の乳輪が描かれ、中心から肉の筒がそそり勃つ。
繭の乳首は、バストサイズにふさわしく、長さも太さも立派。小指の第一関節の先ほどもあり、先端を斜め上の天井へ向かってつんと伸ばしている。
自身の胸を見下ろし、繭は頬を染めた。
「ああ、恥ずかしいわ。優也くんにイカされて、乳首が勃っちゃってる」