羞恥心に反応するように、乳首がふるふると震えて見える。
(本当に、女の人の乳首は勃起するんだ!)
優也は感銘を受け、ギプスを忘れて、両手を巨乳へ向けて伸ばそうとした。当然、右手は揺れるだけで、左手のみが繭の右乳房に当たる。
やわらかい。はじめて感じる、未知のやわらかさだ。もっと感じたくて、強く握力をこめると、指先が白い乳肉の中に沈む。
繭が美貌を歪めて、甘くつぶやく。
「お願い。やさしく触って」
「は、はい」
興奮で、優也の声がかすれる。一度は乳肉に埋まった指を引き出し、指と手のひらを乳房の曲面に這わせた。なめらかな乳肌の上を、指が滑り、さわさわとなでさする。
「はああ、気持ちいい。そうやって胸をなでられるのが好き」
うっとりとする繭の表情と声音が、優也の全身を熱くさせる。左手に感じる乳房の肌触りが、たまらなく心地よい。股間に血流がそそがれ、勃起の勢いが射精する前よりも激しくなった。
「あっ」
赤熱する亀頭が、そっと両手で包まれる。膝立ちの腰がビクンと動き、敏感な部分に快感が流れた。
繭は手を動かさない。ペニスを強く握るのでもなく、ただ手のひらでやさしく挟むだけ。まるで幼い女児が心を安らげるために、たいせつな人形を抱くような触り方だ。
優也が漠然とイメージしていた『熟女との濃厚なセックス』とは大きくはずれている。触れ合うほどに、繭が不思議な存在に思えてくる。その不思議さが、優也を惹きつける。
使えない右手のかわりに、優也は顔を左の乳房に押し当てた。目も鼻も口も、やわらかい乳肉に密着してふさがれる。しかし鼻先にだけ、他とは異なる硬い感触が当たった。想像を超える発見に、優也は胸の内で喝采をあげる。
(乳首だ! 勃起してる乳首は、こんなに硬いんだ!)
すぐさま感動と驚嘆の源泉を、口に咥えた。唇で乳首を挟み、先端を舌で舐める。
「あひっ!」
今までより高い嬌声が、優也の耳に飛びこんできた。亀頭を包む手のひらの圧力が、やや強くなる。
肉筒をしゃぶりながら視線を上へ向けると、繭と目が合った。不思議な液体を流したように、黒い瞳がとろとろと潤んでいる。
「乳首を舐められて、あんん、とっても気持ちいい」
しっとりした歓喜の声を耳にそそがれて、優也は鼓膜を濡らされる思いがする。強い欲望が、入道雲のように湧き起こる。
(繭さんをもっと感じさせたい。繭さんの胸をもっと感じたい!)
優也は左手の指で、右の勃起乳首をつまんだ。強い力を入れないように注意しながら、親指と人差し指で桜色の筒を上下にこする。
「やっ、やはああ、乳首が両方とも、気持ちいいのっ!」
繭は意識して自分の快感を口に出す。はじめて女を愛撫する優也に、きちんと女を悦ばせていることを伝えたい。自分が、優也の手で歓喜していることをちゃんと教えてあげたい。
「すてきよ、優也くん。そのまま、乳首の愛撫をつづけて」
「ふわい!」
優也は乳首を咥えたまま返事をする。声がしこりきった女の急所を細かく振動させて、さらに繭の胸に愉悦の波を起こす。
「あっ、はひいっ、たまらない!」
繭本人の予想を超える悦楽が、乳首から乳房の奥へ伝わり、全身へ拡散していく。未亡人になってから今日までの十年の間に、男に触れたことはないが、自慰はしてきた。自分の手で乳首を愛撫するのと、男に愛されるのでは、肉体の悦びの大きさがまったく違うことに驚かされる。
記憶に強く残る夫の技巧に比べれば、優也の指も口も単調だ。それでも繭は身も心も女の喜悦に浸りきった。
「あっ、はあああっ、イッちゃう!」
嘘偽りのないエクスタシーの言葉が、優也へ向けられる。亀頭を包む両手が、キュッと握る。
優也は乳首を舐めしゃぶりながら、繭の甘い言葉を聞きもらすまいと耳をそばだてた。
「イクっ! 優也くんに乳首を愛されて、イク」
声が高くなり、かすれる。同時に、亀頭を強く握りしめる。
「イクん、んっ、あああああぁぁぁ………………」
繭の膝立ちの身体が、床に落ちた。白いビキニボトムに包まれた股間が、畳の目にこすられる。優也の唇と指から剥がされた巨乳が、大きく上下に弾んだ。
「…………んんん、ああ、すてきよ。優也くんにイカされたわ」
「胸だけしか触っていないのに!?」
信じられないという顔つきになる優也へ、繭はやさしく微笑みかける。
「言ったでしょう。わたしは夫に調教された、淫らで貞淑な女なのよ。健治さんが亡くなってから眠っていた性感が、優也くんのおかげでどんどん覚醒しているわ」
小説家らしい形容の言葉に、優也は感心させられる。
「それに、女は男と違って、何度でもイケるわ。最初は軽くイって、だんだん深く、大きくなエクスタシーになっていくのよ。だから」
繭の両手が、優也の肩にそっと置かれた。そのまま肩を押されて、背後へ身体を傾かせられる。優也は意図を理解できないまま、繭に操られて、背中を畳につけて横たわった。
優也の胴体を、立ち上がった繭がまたぐ。
「うあ」
優也が見上げる視線の先に、白いビキニが密着する熟女の股間がある。その上には豊満な下乳があり、さらに上気した美貌がうつむいて、甘美な視線を降らせてきた。
「正直に言うと、わたしは男の人の上に乗るのは得意ではないのよ。でも今の優也くんは右腕を動かせないから、わたしが上になったほうがいいと思うの」