家政婦は蜜尻女子大生 初恋の君と恋人の甘いご奉仕

そのとき、突然ジーンズのポケットのなかで携帯電話が振動した。どうやらメールが届いたらしい。裕はスマートフォンを取り出し、画面を見た。

「あ。遥香先輩」

名前を見ただけで心が躍った。いそいそと画面を操作してメールを表示する。

「……えっ」

思わず驚きの声を漏らした。画面に表示されたメール文には──『明日、二人の記念日にしよう♪ 私、裕君と一緒に大人になりたい!』と書かれていた。

裕は両の拳を握りしめ、夜空に向かって歓喜の咆哮を上げたくなった。

「あれ?」

自宅に到着したのは、それからしばらく後のことだった。

巨大ターミナルである新宿駅から快速電車で三十分少々のところにある閑静な文教地区。整然とした家が建ち並ぶ住宅街の一角に、裕が暮らす一軒家はあった。

当然ながら、家の明かりは消えている。だが玄関に、誰かが手持ちぶさたに立っていた。薄闇のなかで動く人影に目を凝らす。どうやら若い女性らしい。

「あの、何かご用ですか?」

門扉を開けて家の敷地に入ると、裕は玄関先に佇む女性に声をかけた。

ようやく裕に気づいたらしい。女性は「あっ」と小さく声を上げると、恐縮したように居住まいを正してこちらを見た。足元には大きな鞄が置かれている。

「あ、あの。家政婦を募集しているとうかがって、来たんですが」

鈴の鳴るような、耳に心地いい声だった。

恐縮しているのか、両手の指を絡めてもじもじと居心地悪そうにする。

「あ、そうなんですか。ありがとうございます。ずいぶん待ちましたか?」

待望の家政婦希望者が来てくれたことに喜び、裕は玄関に近づいた。

「いえ。それほどでもないです」

闇のなかに立ち尽くす若い女性の姿形が、ようやくはっきり見えてくる。

(──えっ)

ひと目顔を見るなり、ハッとした。目と目が合う──身体に稲妻が走った。

清楚で淑やかな美貌を持つ美少女だった。栗色のロングヘアーが緩やかなウェーブを描いて背中で踊っている。ちょっと垂れ目がちの大きな瞳が印象的だ。

(な、何だろう、この気持ち)

自分で自分が分からない。

初めて会ったばかりだというのに、裕はなぜか、その女性に強く惹かれた。

「あの、お名前は?」

うろたえながら聞く。年上かも知れない。美少女は緊張した面持ちで頭を下げた。

あいはらつむぎといいます。よろしくお願いします」

第二章 初体験はシャワールームで全裸立ちバック

二階にまで、食欲をそそるいい匂いが漂ってきた。

母親が出張で出かけて以来、久しぶりに嗅ぐ朝食の香りだ。

「あ。お早うございます」

ダイニングキッチンに顔を出すと、裕に気づいた紬がシンクからこちらに向き直り、折り目正しい挙措で深々とこうべを垂れた。

ダイニングテーブルには昨夜裕がリクエストした和食メニュー──ご飯に味噌汁、焼き魚に緑野菜の和え物といった献立が湯気を立てて並んでいる。

紬は裕の希望に応えるべく、昨夜の内に遅くまでやっている近所のスーパーに行き、必要な食材を買いそろえていた。

「あっ、お、お早うございます」

ジャージ姿の裕は、紬に挨拶をされてどぎまぎした。

襟ぐりが四角く開いた淡い花柄のシフォンワンピースに、桃色のエプロン姿。

明るい栗色の髪が艶やかに揺れ、大きな瞳が緊張したように裕を見る。朝の爽やかな光の下でも、抜けるような肌の白さと清楚な美貌は惚れ惚れするほどだった。

「お食事のご用意ができています。お口に合うかどうか分かりませんが、どうぞ」

「ど、どうも。ありがとうございます」

裕はぎくしゃくと頭を下げて席に着いた。用意されているのは裕の分だけだ。

「あれ。紬さんは食べないんですか?」

そう聞くと、再び流し台に向き直ろうとしていた紬は居住まいを正して裕を見た。

「わたしは家政婦です。ご主人様と食事をとるなんて無礼な真似はできません」

「ご、ご主人様?」

思わぬ呼び方をされて戸惑った。誰かからそんな風に呼ばれるのは生まれて初めての経験だ。かなりの美少女である紬に「ご主人様」と敬意を表される気分は悪いものではなかったが、同時にお尻がむず痒くなるような居心地の悪さも覚える。

「あの、ご主人様なんて言わなくてもいいですよ。僕、紬さんより年下ですし」

昨夜話をした裕は、紬が二十二歳の女子大生であることを聞かされていた。

女子大生なのにどうして家政婦なんてと聞くとどうやら苦学生らしく、時間のあるときには家政婦などのアルバイトをして学業と両立させているのだと言われた。

今は大学が夏休みのため、稼ぎどきなのだと言う。

「いえ、年下であろうと何であろうとご主人様はご主人様です。それと、ご主人様」

まだ裕と話すと緊張するのか、可憐な美貌をこわばらせて紬が言う。

「はい?」

「わたしに丁寧語はお使いにならなくてけっこうです。家政婦ですので」

「あ。そ、そう? 分かりました。じゃなくて……分かった」

紬に見つめられ、裕は顔が熱くなるのを感じた。慌てて視線を逸らし、席に着く。

紬は家政婦募集の貼り紙に書かれていた母親のメールアドレス宛に応募のメールと履歴書的な情報を送り、電話でやりとりまでしていた。そして恵津子の了解をとりつけ、家にやってきたのだった。確認のため、海外にいる母親に確かめると、