家政婦は蜜尻女子大生 初恋の君と恋人の甘いご奉仕

「私、裕にメールしたと思うけど? あれ、し忘れてた? 紬さんの希望で二週間だけ、住み込みで手伝ってもらうことにしたの。気立てのいいお嬢さんみたいだけど、あんまりあれこれやらせたら可哀想だからね。ふんぞり返りすぎ厳禁よ」

などと呑気な返事をされ、思わず腰砕けになりそうになった。まあ、それが母親のキャラと言えばキャラなので、今さら驚きもしなかったが。

(それにしても、可愛い人だな。これじゃ勉強どころじゃなくなっちゃうよ)

裕は思わず胸をときめかせつつ、少々不安な気持ちにもなった。

実を言えば、昨夜初めて見たときから、ずっとドキドキしっぱなしだった。

遥香が高貴な猫を思わせるクール系の美少女なら、紬はほんわかとした癒し系の美女。母性愛溢れる、人のさそうな性格が全身から滲み出している。しかも──、

(ううっ、やっぱり、おっぱい大きい)

流し台に向かおうと向きを変える紬の胸元を、ついちらっと盗み見てしまう。

遥香の方が少しだけ大きい気もしたが、それでも充分以上に見事な巨乳。そんな量感たっぷりの乳房が挑むようにワンピースとエプロンの胸元を盛りあげ、ちょっと動くたびにたぷたぷとエロチックに揺れた。しかも、しかも──、

(あぁ、お尻もすごい)

紬はシンクに向かって作業を再開した。剥きかけだった桃と包丁をまな板から取り上げ、手慣れた包丁さばきで皮を剥き、果肉を切り分けていく。

花柄のシフォンワンピースの裾はふとももを半分覆うほどの長さしかなかった。ストッキングも穿いていない生足だ。ヒラヒラと揺れるスカートの裾から覗くふとももはむちむちと肉感的で、膝裏の窪みまでもがやけに艶めかしく感じられた。

だが、やはり裕の視線を釘付けにするのは、スカートのなかで蠱惑的に揺れる圧巻の臀部だった。くびれた細い腰から一転し、まるで二つのマスクメロンが並んだような迫力で、ワンピースのスカートを内側から盛りあげている。

こちらの大きさは間違いなく、遥香よりも紬の方が上だった。

(や、やばすぎる。目に毒だよ)

遥香というたいせつな恋人がいるのに、自分はいったいどうしてしまったのだと溜息をつきたくなりながら、味噌汁の注がれたお椀と箸を手に取った。豆腐となめこの具が入った赤味噌仕立ての味噌汁。裕はお椀に口をつけ、音を立てないよう汁を啜った。

「えっ」

思わず声に出して驚いた。桃を剥いていた紬が慌てて振り返る。

「どうなさいましたか、ご主人様。あの……お口に合いませんでした?」

心配そうに聞かれた。裕はぶるんぶるんとかぶりを振り、紬を見つめ返す。

「何、この味噌汁。めちゃめちゃおいしい」

世辞でも何でもなかった。母親の恵津子も料理上手でいつも裕を喜ばせてくれたが、この味噌汁の味は、母には悪いがレベルが違った。

「本当ですか。よかった」

裕の言葉を聞いたとたん、紬の顔に嬉しそうな笑顔が広がる。

一際大きく、心臓がとくんと跳ねた。

(か、可愛い)

垂れ目がちの大きな瞳が柔和に細まり、清楚な美貌が十代の乙女のような愛らしいものに変わった。出会って以来初めて目にする、無防備な笑顔だった。

「煮干しのダシで作ってみたんです。喜んでいただけてよかった」

紬は片手を胸に当て、心底嬉しそうに言った。

聞けば煮干しの頭とワタを一匹一匹丁寧に取り、水で洗って汚れとゴミを除いた上で鍋に入れた水に数時間つけ、旨味を出したのだと言う。

そのまま火にかけて沸騰させ、あくを丁寧にすくって煮込んだ末にこしらえたダシなのだと知り、裕は「そんなに手間をかけてくれたの」と絶句した。

「ご主人様に褒めていただければ報われます。それが家政婦です」

紬ははしゃぎすぎたとでも思ったのか、ほんのりと顔を赤らめ、恥ずかしそうに言ってから、流し台に向き直った。

(何なんだろう、この気持ち……)

裕はおいしすぎる味噌汁を啜って感動の溜息をつき、改めて紬を見た。

遥香という大事な人がいながら、紬を〝可愛い〟と思ってしまった──それだけでも、生真面目な裕からしたら罪悪感を覚えざるを得ない背徳的な行為だったが、実を言えば、紬に対して覚えた〝想い〟はそれだけではなかったのである。

思いがけぬ強烈さで、裕は〝不思議な懐かしさ〟も感じたのだった。

(昔、誰かとどこかで、こんなシチュエーションを体験したような……)

埃を被った遠い日の記憶を刺激される心地になる。だが、それ以上のことは思い出せなかった。もちろん、単なる勘違いの可能性もある。

(だめだだめだ。紬さんの可愛さにボーッとしてる場合じゃないぞ)

裕は心のなかで自分を叱咤した。今日はまた、遥香とデートだった。

しかも、いつもと違う、かなり特別な──。

「私もチョコとのミックスにすればよかったかなぁ」

歓声を上げたり悲鳴を上げたりしながらジェットコースターのスリルを満喫した裕と遥香は、叫びすぎた喉を潤そうと遊園地の売店でソフトクリームを買った。

「交換する?」

自分が手にしたチョコとバニラのミックスアイスを羨ましそうに見る遥香に聞いた。遥香の手にはストロベリーソフトが握られている。

唇を窄め、いじけたように美貌をしかめる姿が愛らしい。

遥香は今まで、あまりこうした表情を見せてくれなかった。