不貞妻 詩織 視線を感じて、私……

巧みに緩急のついた指愛撫を施すユウゴに翻弄され、再度、見る間に蜜壺が恍惚を溜めてゆく。

「よっぽど欲求不満だったんだねぇ。一度潮噴いてるのに、まだどんどん濃厚なおつゆが溢れて……こんなにグチュグチュになっちゃ、穿いて帰れないねこのパンツ」

「ちがっ、違います。それはっ……貴方が、お酒に何か混ぜでもして……」

夫との営みでは一度も経験し得なかった身体の変化を、男の技巧の手柄と認めたくない。仮に認めてしまえば、夫の技巧の至らなさと、我が身の欲深さをも認めなくてはならぬから。

「ははっ。それはさすがに小説に毒され過ぎ。てか、官能小説とか結構興味ある方なのかな? だったら後でおすすめ貸したげるね」

あまりに稚拙な女の言い訳を笑い飛ばすのみならず、悪ノリまでしてみせる男に対して、怒りを覚えるよりも先に羞恥に炙られてしまい、詩織の顔が歪んだ。

(逃げ、たい……このイヤらしい視線から。この場から消えてなくなりたい)

自己嫌悪と恥辱に喘ぐ詩織の心境を的確に見抜いていればこそ、嘲笑う傍らでユウゴの手指は乳輪をくすぐり、爪で乳頭の根元直近を掻きもする。なのに決して乳首自体には触れてこない。

股間も直接でなく、ショーツ越しの圧迫と割れ目への摩擦にとどまって、やはり勃起クリトリスに触れずじまい。

ニタニタといやらしい笑みを張りつけた彼の表情からして、わざと感度の高い部位を外して弄んでいるのが明白だ。

「ひっ、ぁ……くぅ、うぅ……酷い……」

乳も股も、特上の快感を体験したばかりなだけに、余計に焦燥が蓄積される。それはじきに全身に波及し、小刻みな震えと火照りとなって詩織の精神を揺さぶった。

なぜ、こうも容易く昂らされてしまうのか。ままならぬ女体の感応に歯噛みしたくとも、口を開けばひとりでに嬌声が吹き漏れる。悔しさも足されて、泣きだしたい想いに駆られながら、詩織はひたすら口を噤もうと腐心していた。

「……気づいてる? 篠宮さん、自分から腰振って、足もぱっかり開いちゃってるよ」

言われて目を向け、初めて気づく。まだパンストに包まれた状態の尻がシーツを引き摺り、まるで摩擦を堪能するが如くくねり蠢いていた。

つま先まで伸びた状態の両脚が、焦れに悶えて震えながら、目一杯左右に開き、狭間に身を置くユウゴを許容している。

「どう、して……ひっ!? あ、やぁぁ……」

自覚した途端に自虐と、それに伴う恥悦が駆け巡り、余計に焦れたショーツの奥の陰唇が、物欲しげに蠢動した。

「ね。もう、素直になっちゃおうよ。ボクのちんぽが欲しいって、言っちゃおう? 欲求不満マ○コにずっぷししたらきっと、物凄く気持ちいいよぉ?」

「そんな事っ、絶対に言わないっ……ふぁっ、あひっ、ィィああ……ッ!」

グリグリとショーツに押しつけられるボクサーブリーフの、内なる膨らみ。その容積と熱量、猛々しい脈動。否応なしに刻まれる存在感の強さが、嫌でも想像をさせる。

もし、こんな太いものが股の間の穴に突き入ったら。ムリムリと肉の穴をこじ広げられて、粘膜をこそぐ勢いで摺りつけられたりしたら──。

(駄目。駄目よ。思い浮かべたら、駄目なの……!)

「敏感乳首ちゃん。ボクがたぁっぷり慰めてあげますからねぇ……ぁむっ」

ちゅぽちゅぽと音を立てて吸われた左乳首が、悦びの呻きを発して一層尖り勃ち、口中で待ち構えていたユウゴの舌に自ずと触れた。

「ふくっ! うぅ……いやっ、はぅ……! うー、あは、ぁぁっ。ん!」

チロチロと舐め転がしては巧みに悦びを引き出す舌つきの巧みさが、そのまま詩織の脳内で肉棒抽挿の技巧に転写され、牝腰のくねりを誘った。

「おつゆたっぷりのお股も、好きなだけ可愛がってあげる。また可愛く鳴いてイクところ、見届けてあげるよ」

「ひっ! 駄目ぇっ、そこはもうっ、触ら、ないでぇっ……いや……ふっ、うぅあ!」

耳元で囁かれ甦る、恥辱の記憶。人生初絶頂を迎えた際の、ユウゴの纏いつくような視線を思い出すだけで、怖気が溢れる。なのに自然と股の付け根がキュッと、まるでもう一度潮噴きたがっているように、収縮した。

「ほら。ほらほらぁぁ」

膣の動きを気取ってすぐに、男の太い左手指がショーツの脇から内へと潜り入る。すでに蜜たっぷりの壺穴を、縦に突いたかと思えば、壁面に沿って穿り滑り、指の腹で膣肉を揉み押して、止め処もなく染み出す蜜を掠め取ってゆく。そうして得た蜜を潤滑油に指愛撫のペースを上げながら、絶えず眼鏡越しの眼光で詩織の表情を窺う。

(本気、だわ。この人……本当に、私の恥ずかしいところ、全部見逃さないつもりで……あ、あああ……っ、見られたくない。嫌なのに、私……っ、どうしてぇ!)

見届けてあげる、と告げたユウゴの粘ついた声と、卑猥に歪んだ笑顔、一刻として離れないイヤらしい視線。三つともが淫蕩の熱源となって、穿り回される股穴の蠢動を招く。

「はひっ、いあああっ、もぉ恥ずかしい音させないで……ひっんくぅぅぅ!」

ユウゴの指の動きに乗じて、掻き混ざった蜜汁がヂュポヂュポと、猥褻な音色を響かせる。正面から注ぐ彼の熱視線を浴びて一層強まった羞恥の熱が、股に染んだそばから被虐の悦に成り代わり、止め処ない蜜の生成に繋がった。