不貞妻 詩織 視線を感じて、私……

(物語の中の彼女がしている事を、真似ているだけ)

都合のよい言い訳が、羞恥と理性に従いがちの詩織に積極性を付与する。

期待通りにストッキングへと伸びた彼の手が、ビィッと小気味よい音を立ててストッキングを裂いた。続けてその手指が向かう先を察して、詩織の側から腰を持ち上げ、露出した純白ショーツの表面に率先して圧を戴く。

夫の指に押されて凹んだ恥丘と、その下の割れ目に恍惚の熱が染みたのを実感した直後。ぷちゅっ、と猥褻な音を立てて、ヒクつく陰唇が蜜を吐いた。

(心臓が、爆発しそう。ああ、でも、凄く……気持ちいい)

羞恥の火照りに負けぬほど熱烈な視線を、股根に感じる。その熱が移ったみたいに火照りの増した恥丘が、夫の指腹に捏ねられるたび恍惚を蓄積した。

ストッキングの上からすりすりと、縦スジに沿って擦られるたび、汗ばんだ女の内腿が震える。ヒクつきを強めた陰唇がショーツの裏地に蜜を吐きつけて、詩織の羞恥と恍惚、夫のより積極的な愛撫を誘った。

(小説では、この後、一夜を明かした、の一文であっさり終わってしまったけど)

文字通りの夢見心地に浸り続けたい一心で、本で得た知識を総動員し、詩織なりの続きを創作し始める。

「可愛いクリちゃんだね……たくさん、弄ってあげる」

詩織の思いつきよりも先にねっとりと陰湿な声が響いたが──奇しくも同じ想像に行き着いたがために、眠りのさなかの意識が気に留める事はなかった。

割れ目の上部に咲いた豆粒大の突起が、皮被りの状態からむくり、むくむくと膨らみ始めると、指先で察した彼がそこばかり重点的に捏ね始める。

「は……ぅ! ひっ、あ、あんんっ……!?」

実際に口から寝息と共に漏れているのか。自らの嬌声がやたらと鮮烈に耳朶に届く。その違和感も、股根に轟く初めての感覚によって、じき霧散してしまった。

まるで小さな電撃が連続して股の芯に突き抜けていくような、衝撃的で、なのにひたすら甘美な感覚。

直接の刺激が過敏と見て取るや包皮を間に挟んでの摩擦に切り替えた男の指の巧みさが愛しくて、喜悦の痺れが奔る肢体をより密着させる。

「あっ、あぁ……もっと、してぇ……」

尽きぬ慕情と情欲にせっつかれて、眠る詩織の喉が鳴る。唾を飲んで潤った喉で、偽らざる気持ちを夫に伝えた。

期待を孕んだ頬が紅潮したのを見咎められた──視線の熱を浴びて悟った詩織の股にさらなる期待のうねりが湧き起こり、自然とモジモジ。下敷きのシーツを引き摺って、安産形のヒップが揺らぐ。

ひた隠しにしてきた情欲を全て解放してしまえる喜びに沸き立つ胸を、夫の逞しい手がそっと握り。

「んぅ……ひッッ!!」

クリクリと、右の乳首を摘まみ捏ねたのと同時に、潤みを増した女陰に浅く潜ったもう片方の手指が卑猥な響きを奏でだす。

「あぁ……んっ、ぅ……はぅ……ん! んん……あ……あっ!」

強過ぎず、弱過ぎもせず、詩織の好み通りの絶妙な圧力で乳房の内へと押し込まれた乳首が、そのまま指の腹で捏ね回される。その都度乳房全体に波及する快楽の痺れが堪らなく甘露で、自然に開いた詩織の口蓋が、よだれと甘い喘ぎをこぼしだす。

(あ、ぁ……っ、やっぱり……全然違うっ。いつもの幸太郎さんとっ)

現実の夫は、あまり前戯に時間を割かない。精々キスして肌を摺り合わす程度で、期待を溜めて自然と潤んだ膣に勃起を押し込むのが定番だった。

(淡白な人だから、仕方ない……って。疲れてるのにしてくれてる、ってだけで嬉しく思ってた。……なのに)

ねちっこい手つきの合間を縫って、また彼の唇が乳首に吸いついた。すっかり勃起した乳頭のしこりを確かめるように舌先で爪弾いて、舐め転がし、押しつついては唾液を塗り込める。

現実と夢想の差が広がるほどに、肉の悦びに憑かれた細腰のくねりに歯止めがかからず、胸の高鳴りも天井知らずに増してゆく。

「ちゅばっ! あぁ、美味しいよ篠宮さんのおっぱい。いくらしゃぶっても飽きやしない……。お礼にたくさん手マンしたげるね」

ショーツの上から擦りついていた太い指が脇に逸れ、鼠蹊部をなぞった。そのむず痒い刺激に焦れた尻のくねりを見定めて、太い指が二本、ショーツの脇から内側へと滑り入ってくる。そのまま滑った二本の指は、蜜たっぷりの割れ目へと浅く潜り、互いを馴染ませるように小さく前後上下に行き来し始めた。

「はぅっ、うぅ、んん……あぁ、いっ……んはっ、ぁぁ……」

乳首だけでなく乳肌にもキスの雨が降り注ぎ、強く吸い立てられた乳房が引っ張られる感覚。次いで、伸びた乳房が放され、ジンと響く疼きと共に戻ってくる。その疼きが収まらぬうちにまた舐られて、余計に甘苦しい感覚が胸全体にひしめいた。

股間では徐々に移動幅を広げた太い指が、より深い部位の膣壁を扱きだす。時に蜜を掻き出すように鉤状に曲げられた指が、強かに粘膜を穿りもした。蜜を掻き混ぜるようにくるくると回った指と指の間で、泡立った粘りの強い糸が引きもする。

乳房と股で響く、卑猥な音色の二重奏。貞淑を守ってきた詩織にとっては、全てが麻薬の如き凶悪な中毒性を伴って感じられた。

(ひっ、あっ、ああ……っ! それっ、凄い……胸とお股と同時に、なんてぇぇっ)