不貞妻 詩織 視線を感じて、私……

卑しく貪欲な彼の目の動きと熱情に弄ばれ、否応なしの煩悶が詩織の身に注いだ。触れられてもないのに揺らいだ尻が宙を掻き、ロングスカートの裾をはためかす。

「ふ……っ、ァ……!」

見つかった──。反応しなければバレなかったものを、ユウゴの目が行き当たった瞬間に、ブラ奥の右乳首が悶え震えた。同時にこぼれた熱々の吐息と、短くも甲高い嬌声。今にも泣きだしそうにたわめられた詩織の美貌と、小刻みに震える様も見届けて、ユウゴも盛る。

「ふっ、うぅぅっ。あぁ、もう堪らないよ……こっち来て。ボクの足元に跪いてっ」

再びベッドに下ろした腰と、ワイシャツを押し上げる小太り腹を揺すり、新たな指令を嬉々と下す。

その彼の赤いボクサーブリーフの股座。こんもり盛り上がった山腹の頭頂部に、染みが一点形成されているのに、目が留まる。先走りのつゆが滲み、形成されたものだ。正体を気取った直後から、性懲りもなく疼いた女芯の火照りが、胸へと飛び火した。

(あ、あんなの穢らわしいだけ。見たくなんて、ない。なのに、どうして!?)

「詩織の白い肌を黒いブラが際立ててるよ。清楚な白下着より断然似合ってるっ」

歩み寄る若妻との距離が縮まるにつれて、男の鼻息が荒く、熱くなる。手が届く距離を踏み超え、あと一歩でぶつかるという至近距離にまで迫ったところで、ユウゴの鼻息が詩織の下腹部へと吹きかかり。

「ひぁ……!」

思わず喘ぎ、腹を波打たせてしまう。むず痒さに見舞われた下腹を我が手で押さえ、頽れるように屈んだ詩織を見下ろして、なおもユウゴが言い募る。

「黒、と言えば高校の時。一度だけ黒いパンティー穿いてきた事あったよね?」

「……っ!?」

疼きだしたばかりの双乳に、間髪容れずに緊張が注ぐ。目を見張った詩織の、視線による問いかけを受けて、ユウゴは極端に嬉しげな表情と声音で言い放った。

「毎日ずっと図書室と部室で見つめ続けた甲斐があった、ってあの時は思ったよ。毎日何度使っても、興奮度合いが落ちなくてね。極上のズリネタだった」

また一つ。思い出が、汚れ煤けたものへと変容する。根暗少女時代の、ただ一度きりの秘密が露見していた。追加でもたらされた衝撃に慄く詩織を尻目に、ユウゴの口は止まらない。

「あれも、今にして思えば、本当の私を見て……ってシグナルだったのかな?」

「……っ!! ちがっ……あぁ……」

言い当てられた瞬間に、当日の昂揚感が甦った。

思春期特有の自意識過剰がもたらした、ただ一度きりの過ち。こっそり買った黒いショーツを着けて登校し、スリルと、地味な自分が大人びた下着を着けているなんて知りもしない同級生達に対する不思議な優越感情を味わった。

(もし本当に誰かに見られたらどうしよう……って。はしたない想像しながら、ちっぽけなプライドを満たして……でも、それが堪らなく、心地よくて……)

誰にも知られる事なく終わったはずの戯れの時間。あの時と寸分違わぬ恍惚が背に奔る。一方で当時と違い男の味を知り、より丸みと肉付きの増したヒップがひとりでにイヤらしくくねった。

あの、破廉恥で浅はかな少女期の遊戯まで、どういう手段でかはわからないがユウゴに見られ、知られていた。突きつけられた事実に羞恥するほど、切なくも抗い難いときめきが溢れ、詩織の身震いを誘発した。

「あ、あぁ、やぁ……っひっ!」

膝から崩れ落ちるようにしてユウゴの足元へと跪き、尻を下ろした途端。感極まった様子の彼の手が伸びてきて、詩織の頭を撫であやす。男の肉々しい指はそのまま若妻の頬を飾る黒髪へと滑り、執拗に梳き愛でる。

「ふぁ……あ、や……やめ……て……んんっ」

さすられるたびビクンと跳ねる身体の過敏ぶりに恥じらいつつも、無意識のうちに詩織はユウゴを見つめ返していた。

(あの頃妄想してた通りに……この人に見られて……た。……私の妄想、現実になって、た……の?)

「ほんと、あの頃を思えば。こうして触れ合えるの、夢みたいだよ……詩織ぃ……」

うっとり呟くユウゴの右手がワイシャツの胸ポケットからスマートフォンを取り出して──小さな音を奏で、見上げる詩織の潤み顔を撮影する。

次いで黒いブラに包まれた双乳を何枚も、何枚も。角度を変えて、網膜に焼きつけるのと同様に、携帯端末へと記憶させてゆく。

「っは、あぁ……あっ……あァァ……ッ」

スマホ越しのユウゴの視線が相変わらず執拗に舐りついてくるせいで、一刻も目線を逸らせない。

監視していないと、何を撮られるかわからないから、ただそれだけの事──。

言い訳を連ねる詩織のスカートに包まれた尻が、折り畳んだ自らの足の上で悶え揺らぐ。見上げる視線の潤みは増すばかりだ。

「ボクももう我慢できないよ。詩織……口でお願い。……できるよね?」

女の焦れを察して、己の焦れを伝える男。乞い願う形ながら、実質唯一の選択を迫るユウゴの瞳は、相変わらず、ギラギラと強烈な欲を打ち放ち、詩織の身と心を執拗に舐り、湿らせていった。

(やっぱり、太くて、長い……)

赤い下着を脱いで剥き出しとなった勃起ペニスへ顔を寄せるよう言われて、従った直後。真っ先に、肉厚で長い幹へと詩織の視線と意識は向いた。

三か月前には面と向かい合わなかった逸物の、禍々しくも猛々しさを滲ませるフォルムに改めて目を見張る。