不貞妻 詩織 視線を感じて、私……

「きゃ……!?」

詩織の眼前数センチ先に反り勃つ剛直が、不意に脈打ち弾む。驚き顔を逸らした同い年の初心さを目の当たりにして、さらに二度脈動を繰り返した男性器の先端から、少量の滴が幹伝いに滴った。

「ひひ。詩織が見てくれてると思うと……いつも以上に敏感になっちゃうよぅ」

男のうっとり口調と、肌に纏いつく視線が心地悪い。振り払おうと慌てて首を振った詩織の、舞う黒髪からシャンプーの残り香が振り撒かれる。それは微量で、ベッドに腰かけたユウゴの鼻先までは到底届かぬはずが、肉勃起が如実に感応した。

「……っ。まずは先の濡れてる所にキスして」

ユウゴがより恍惚とした表情と声音で、今また脈打ち先走りのつゆを垂らした亀頭への口づけを命じる。

性経験の豊富さを知らしめてきたユウゴが、女性にとっての「唇を捧げる」という事の重要性を知らぬとは考えにくい。あえて屈辱的行為を迫る男の股間へと視線を戻し、眉間に皺寄せて苦悶の表情を形作った詩織が歯噛みする。

(嫌よ、おちん……ちんに、キスするなんて。汚いし、臭いし、おかしいわ……)

吐き気を催すほど強烈な拒否感情と憎しみが、恨みがましい視線となって勃起ペニスへと突き刺さる。

それすら悦びの脈動に転嫁する剛直の、果てしない欲深さに驚嘆し、息を呑む。振り撒かれた熱気を噤んだ唇の代わりに吸入した鼻腔から、脳天へ。ツンとした臭気が突き抜け、思わず噎せ込んだ。

三か月以上ぶりに嗅いだ濃密な牡の性臭が、ご無沙汰の女体の芯にさらなる渇きを付与した結果。

「……っ、は、ぁぁ……」

喘ぐように、渇ききった口蓋が上下に開き、忙しのない呼吸を余儀なくされた。

(駄目。嫌。……でも、しなきゃ。幸太郎さんに、ばれたくないから。今だけ、我慢すればいいの。今、だけ……)

未だ迷いながらおずおずと、腰を上げて肉棒の突端へと迫る詩織の唇に、ユウゴのねちっこい視線が注ぐ。それに気づいた途端に詩織の喉元に唾が溜まる。息苦しさに負けてわずかに鼻腔を蠢かせば、間近の肉棒の熱と臭いが流入した。

「んぅ……! やぁ……臭い……」

「パンツの中で蒸れてたからね。それだけ詩織を欲しがってる証拠でもあるんだよ」

懲りず惚けた言葉を吐いた男の手が、前触れなく伸びて、ちょうどいい高さに迫ってきていた詩織の左乳房を揉み立てる。

「やっ! うぅ……く、ぅ、何を……っ。おちん、ちんにキスするんじゃ……なっ、あぁ……やぁ、んんっ、それっ、やぁぁ」

黒いブラジャーごと丁寧に揉み込まれ、瞬く間に焦れったい疼きが乳肌に溜まる。

計七度揉んだ後にユウゴの指は乳房を離れ、ブラの二つのカップを繋ぐ紐と乳の谷間の間へと滑り込む。スリスリと優しく、否、わざと加減した刺激を与えて煩悶を誘うイヤらしさは、ユウゴの性根そのものだ。

憎らしいほどネチネチと煽り立てる陵辱者の思惑に、まんまと乗った尻が中腰状態でフリフリ。スカートごと恥ずかしげに揺れて、宙を掻く。

(早く、終わらせないと。また、おかしくされてしまうっ……!)

焦燥と恍惚の二重奏にせっつかれ、膝立ちとなり、唾を飲む。まだ残る唾液がねっとり糸引く口蓋を開き、陵辱者の期待の眼を仰ぎ見た。直視された、ただそれだけでブルブルと震えの収まらない肢体を、腰かけて待つ小太りの彼へと寄りかからせる。

「……っは……ん……。ちゅっ……。ん……ふ……んんぅ」

眉をひそめ、目も口もきつく閉じた状態で、詩織は男根への接吻を遂行した。

(やぁ……やっぱり臭いっ。それに熱くて、ぬるぬる……して……気持ち悪い!)

口を塞いでいるせいで鼻呼吸を余儀なくされる状況下。鼻腔に絶えず注ぐ牡臭が、息苦しさと合わさって、注意力思考力を削ぎ落とす。

丸みを帯びた亀頭部はわずかに湿っていて、強く押しつけていないと唇が滑り落ちかねない。そうして強制的に、より強調して伝わった牡の温みと弾力。いずれも始めて味わう唇が、えずきたがりながらも唾を溜めた。

悦び勇んで鼓動する肉勃起の熱が、密着した詩織の唇へと徐々に浸透する。互いの境目が曖昧になっていく錯覚に苛まれ、詩織は怯え混じりの眼を見開いた。

「ん……ふぅっ……!?」

そうして見下ろす形で直視した、黒ずみ濡れ光る肉の砲身の逞しさに、性懲りもなく女芯が揺さぶられる。

(う、嘘よこんなっ……こんな、嫌でしかない行為で、っ……興奮したりするはず、ないっ……)

「うはっ、そ、そのままじっとして。口を離さないでっ……」

腹肉を弾ませ喜んだユウゴが、また手にしたスマホで一枚撮った。荒い息を吐く彼の手がスマホを握ったまま詩織の眼前へと移動して、画面に映り込む痴態を見せつける。目を背ける間もなく、肉棒に口づける己の姿を直視した詩織の胸が強く高鳴った。

「ふ……! あ……、ひっ、ぃいぃ、っ! どっ、してぇぇっ」

あまりにタイミングよくユウゴの指腹が、ブラ越しの乳突起を押し潰す。

今宵初めての直接刺激に瞬く間に酩酊した右乳。捏ね繰られる乳首を中心として放射状に波及した疼きが、内なる淫熱を伴い、汗となり噴き漏れる。

どうして、そのタイミングで。どうして、一発で乳首の位置がわかったの。二重に問いかける詩織の目を見据え、ユウゴが事もなげに言い放つ。