不貞妻 詩織 視線を感じて、私……

流れたそばから粘膜にへばりつく子種汁の生命力の高さを感知して、嘆きと悦び半々の激情に呑まれた詩織の意識が弾ける。

(あぁ……ま、た……ぁぁっ。じっと、見てるぅぅっ……)

背徳の熱と粘りをたらふく仕込まれて、否応なしに昂りきった膣全体が小刻みに痙攣する。ビグビグと互いに摺りつけ合った男女の下腹が波を打ち、射精真っ只中の状態で締めつけられた肉棒が、再度大量の濁汁を膣内に噴射した。

「ふぅ、ふ、うぅ……! 十二年分の想いの丈、全部全部注いじゃうよォォ!」

亀頭と膣壁を摺り合わせて、自ずと刺激を強めたユウゴが、涙声で吠え叫ぶ。

「ひっ、あっ! んひぃぃぃぃぃっ! ふぐっ、ううううぅぅ! ま、たぁぁっ、ぁあぁっ漏れ、ちゃうぅぅぅぅっ!」

白濁の子種汁を吸って一層柔くほぐれた膣肉が、追加の刺激に攻め落とされ、蜜を噴く。結合部から噴き上がった潮汁が、一層男女の性器の摩擦と密着を高めてしまう。

圧倒的な悦びに溢れ返った膣洞から乳に、尻に、頭に痙攣が波及するのを、痛感した直後。解放感と恥悦がさらに一段、詩織の性感を跳ね上げ、瞳がぐるり、裏返る。

「うぅ……ふっ、ぐ、うぅぅ……許、して……あっ! あひィッいィィィィッ!」

夫への懺悔のため、陵辱者に許しを乞うため。二つの意味の含まれた懇願を重ねる傍らで、がっちりとユウゴの手に抱き囚われたヒップの中枢に轟く、三度の絶頂衝動を食い締めた。

疲弊が広がり脱力する女体に、ドクドクと種付け振動が轟くたび、未だ脳裏に思い浮かんだままの夫の表情が掻き乱れ、奥から顔を出したユウゴの恍惚顔が映り込む。

口上通りに最後の一滴まで絞り出しきるつもりで、ゆるゆると擦りつく肉欲棒。

「あぁ……あ、ひっ! ひぁっああ───……っ!」

対する若妻の肉壺は、あまりに脆弱な防備を呪う間もなく、ただひたすらに熱々の種を受け容れていった。

全て出し終えたユウゴが詩織を解放したのは、肌を重ねてから一時間余が過ぎた、午後十一時過ぎの事。

「またここに来れば、望むだけ気持ちよくしてあげるよ」

ベッドから出て全裸姿で腹肉を揺すり、缶ビールを傾けるユウゴ。不躾で醜悪なその彼が、今後も密会を続けないかと持ちかける。

一方、もはや怒りも湧かぬほどに摩耗した精神と、五度の絶頂を与えられ疲労の極致に達した肉体を引き摺りながら、詩織はぼんやりと考えていた。

(……まだ、今からなら終電に間に合う)

部屋の主の勧めに応じてシャワーを浴びた肢体は、隅々まで洗い流してあったが、唾棄すべき男の臭いと感触がまだこびりついている気がしてならない。特に念入りに洗浄した膣内にも、まだ粘性種汁と剛直の感触が強烈に染みついている。

胸元や首筋には陵辱の印がより鮮明に、キスマークとなって刻まれてもいる。

それでも、ねちっこいユウゴの視線を振りきる事に、躊躇いはなかった。

「……今夜の事は、忘れますから」

着直した衣装の皺を伸ばしつつ、ハンドバッグの中身に欠けがないのも確かめた、その上で、二度とまみえるつもりがないのを背を向ける事で示し、部屋を出る。

エレベーターで下り、マンションを出ても、ユウゴは追ってこなかった。

夜風に冷まされた女体には罪悪感と後悔だけが堆積し、夫にどんな顔で会えばいいのか、そればかり考える。ノーパンの股が摺れるたび、苛つきが募る。

結局汁まみれのショーツはユウゴの部屋のゴミ箱へと投棄してしまった。情交の記憶の染みついた下着を、たとえ洗っても穿く気にはなれなかったし、あれを自慰の種にでもしてユウゴが留飲を下げるようなら、それでいいとも思ったから。

(とにかく、幸太郎さんが傷つかない事。それが一番、私にとって大事な事だから)

潔癖な夫には、陵辱されたという事実が前提にあっても、手垢のついた妻と変わらぬ態度で接するのは酷な事。彼に無理をさせたくないと思うから、事を公にする、法に訴えるという道はありえない。

(私が我慢して、済むのなら。明日からまたいつも通りの日常を歩めるなら)

とにかく、もう二度とユウゴとまみえる事はないのだから、一夜の悪夢と思い、早々に忘れてしまうのが最善。ざわつく胸の内を強引に納得させて、夜道を早足で歩む。忌まわしい記憶が付随するだけにタクシーを呼び留める気にもなれず、最寄りの駅まで徒歩で赴く腹積もりだった。それでも終電には間に合うはずだ。

「もう、寝ちゃってるわよ……ね」

明日も出勤する夫が起きて待ってくれている可能性は、低い。けれど、もしかしたら──淡い期待にすがり歩む詩織の足首を、そよいだ夜風が撫でくすぐる。生温かなその心地は、ユウゴのねっとりしつこい視線にどこか似ていた。

(忘れるの。それが一番、なんだから……)

首を振り、足取りを速める事でぬるい風を振り払った詩織の眦には、涙跡と、固い決意が滲んでいた。

第三章 口淫指導

悪夢の如き出来事から三か月余が経過した、春の陽気が心地よい昼下がり。

年が明け、さらに季節も移り変わった最近になってようやく、日々の安らぎを心の底から楽しめるようになった──。精神面での復調を実感しつつ、詩織は今日も自宅で専業主婦の務めを果たしていた。

前開きのボタン付き長袖シャツの上にエプロンを着け、足首丈のロングスカートを穿いた姿で台所に立ち、数時間後に帰宅する夫のために夕餉の下準備をする。