不貞妻 詩織 視線を感じて、私……

こちらにも刺激を、と焦れ疼く乳房には期待のうねりがひた奔り、荒く乱れた詩織の吐息がユウゴの鼻筋をくすぐる。

「いいよぉ。愛し合ってるって感じ、するよぉ」

独り善がりな言葉を連ねるユウゴの様が、生理的嫌悪を詩織の胸に押しつけた。

(気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い……! なのに……どう、してっ)

拒む心が強まるほど、たまりかねて動いた肢体に淫熱が染み、シーツを掻いた尻から背に恍惚が響く。

「く、ふふ……」

男が嗤い、詩織の右乳首を摘まんで引っ張った。

「んくぅッッ! うぅ……嫌……いやぁっ」

拒絶の言葉と裏腹に、詩織の瞳がトロリと蕩けた瞬間を見逃さず、ユウゴの膣内を穿る指と、乳首を摘まみ扱く指とが速度を上げる。

「ひっ、あ、あひぃぃんんっ。駄目、駄目ぇぇ、ひっ、やああああ」

詩織の性的昂揚の上昇とぴったり歩調を合わせた愛撫は、効果覿面。爪弾かれた乳首は乳房全体に恍惚の痺れを行き渡らせ、膣の上壁を穿られた股穴は蠢動の間隔を狭めて男の指に吸着する。

「はぷっ。ひひ……んぷ、ぢううううっ!」

駄目押しとばかりに左乳首を吸い立てたユウゴの歯が、浅く乳輪へと食い入った。詩織が痛みと、直後に訪れた甘い痒みに咽んだ瞬間も、男の瞳は余さず捉え記憶する。

「はひぃっ、いひゃあああああっ……!」

ひと際緊縮した膣内で蜜が噴き出るタイミングを知っていたかのように、ユウゴの右手指が膣の上壁を優しく揉み押す。それが引き金となって、ぶしゅぅっ、と勢いよく、粘りの強い蜜がしぶいた。

溜まりに溜まっていた全てを吐き出すように勢いづく蜜の飛沫が、上に乗るユウゴの下腹、特に押しつけられていた赤いボクサーブリーフの膨らみを満遍なく濡らす。そうして陰影のより際立った肉棒が、興奮度合いを示そうと猛々しく弾んだ。

あまりにも獣じみた男の逸物の挙動に心を惹きつけられたまま。

(見られてる! 全部見られ、て……私ぃぃぃぃっ!)

再来する恥悦の怒涛の勢いに呑まれ、詩織は二度目の絶頂に脳天まで浸かり込む。張りついたままのユウゴの視線を意識するたび、身の内にぶり返す波状の悦衝動。それを甘受する細腰がシーツから浮き、真上に乗った男の股間と擦れて、また解放感伴う潮汁を吹きつけた。

「はひィッ、見ない、でぇぇ……っ! んぐっ、うっ、あぁ───……っ!」

「へへ、ベチョベチョになっちゃった。これは脱がなきゃ仕方ないよね。詩織のリクエストに応えて、生チンポ見せてあげなきゃ」

うっとりと吐き出す男の禍々しさを厭う気持ちは相変わらず根付いている。逃げ出さなければどうなるか、わからぬほど意識朦朧としているのでもない。

ただ、快楽に惚ける肉体が、思うように動いてくれなかった。

「っへ、ひひっ。高校一年の時から、ずっと、ずっと好きでした」

「ひ……っ! あぁ……やめてっ、そんな目で見ないでぇぇっ……」

純朴な男子学生がするような告白と、欲情にギラつく細い眼光。対照的な二つをぶつけて、ユウゴがブリーフを引き下ろす。

「──ッッ!?」

潮蜜の温みも付け足されて火傷しそうなほど滾る剛直と、じかに触れ合った途端、声にならない引き攣りが喉を震わす。長さも、太さも、熱量も、硬さも、姿形に至るまで、夫の物とは似ても似つかない。

幾つも血管を浮かび上がらせて伸び上がる肉棒は、夫の勃起の優に倍──七、八センチほども長い。幹周りも明らかに肉厚で、ごつごつと筋ばったそれが密着状態で期待の脈を響かすたび、猛々しい振動がショーツ越しの股根を襲った。

「んくぅぅっ……! はぁ、っ、あぁ、やめて……」

強制的に与えられた恍惚の衝撃に、惑い、怯えた詩織の目に涙が浮かぶ。恐怖に彩られた視線を浴びてなお、より嬉々と滾った肉幹がショーツに浮いた縦筋状の染みに押しつけられる。凶悪にくびれた雁首と、その上に鎮座する嵩高の亀頭部はいずれも使い込まれて黒ずんでいる。

じかに肌で感じた形状と熱気、見下ろす眼に垣間見えた先端部の色艶。一様に悪辣な印象を植えつける肉勃起に、禍々しさすら覚えているのに──。

グリグリと穿られた下着越しの媚肉が、物欲しげにパクつき、恍惚を蓄積する。股間への圧を受けて腰から下は痙攣が止まらない。内に巡る痺れに耐えようとシーツを掴んだ両手の平に、じっとりと淫熱と汗がにじむ。

(駄目……駄目、駄目ェェェっ!)

──もう、抗うすべがない。諦観に陥りそうになるのを、必死の思いで踏みとどまる詩織の目を、相変わらずジッと眼鏡越しの眼光が捉えて離れない。

「あぁ、念願の……っ、篠宮さんとのセックス!」

興奮し過ぎて豚の如く鼻息を吐きつける一方で、慣れた手つきでユウゴが汁にまみれたショーツを脇にずらしてしまう。

二度の絶頂汁でドロドロの秘部を凝視される事態に際し、胸の鼓動が早鐘の如く鳴る。恐怖に慄いた眼が見開き、全身に怖気と強張りが巡った。

「ふぁ……っ! あ、あぁ、お願い……っ」

許して、と続けようとした詩織の言葉を遮って、男の腰が押し出される。ぐちゅ、と蜜と先走りの溶け混ざる音が響き、互いの生殖器に面映ゆい恍惚が突き抜けた直後。脇に寄せられたショーツから覗く、淡い陰りと濡れた割れ目が慄き震えたのを見計らい、男の酷薄な声音が響いた。