不貞妻 詩織 視線を感じて、私……

「ああ、早く見たいよ。詩織のパンティー直視したいっ」

「へ、変態彼氏の幹本君のお願いだから、断れない……のよね?」

恋人同士との設定に沿って発した言い訳を、嬉々と彼が肯定する。

(そうよ。私は望まれて仕方なく、脱いでる、だけ……)

免罪符を得た手足が、すでに握っていたスカートのファスナーを下げてゆく。締めつけを喪失したスカートを脱ぎ落とすために腰をくねらせれば、今度はそこへ、望んだ通りの部位に、彼の細い眼差しが注ぐ。

そして──スカートを振り落とし、ブラジャーと同色同デザインの薄布一枚となった股座へ、今日一番の熱視線が突き立った。

「うは、わああ……ピンクパンティーもいいよぉ。ひ、ひひっ。染み、できちゃってるねぇ。期待、してたんだぁ。詩織は本当にスケベだなぁ」

「ち、違うの、これは……っ」

──幹本君の熱烈な視線が、そこばかりに注ぐから。彼の旺盛な劣欲にあてられたからで、元から私がスケベだったわけじゃない。

(そうよ、私のせいじゃない……)

けれどそんな言い訳とは裏腹に、視線を浴びたそばから股根は疼きを強め、腰振りもやめられないでいる。部屋に入る前から意識していた事実を知られてしまう事への羞恥すら、染みをより濃くする糧となる。

縦筋状に浮いた染みに舐りつく彼の視線の動きを意識するほどに、下肢に疼きが溜まってゆき、恍惚の証拠である蜜が、またトロリ。すでに汁だくのショーツにこぼれ、吸収されて、濃い染みを広げていく。じき、内股になって自ずと擦り合わせていないと立っていられない状況になってしまった。

「と、撮るよぉっ」

ベストショットを逃すまいと、前のめりになった彼がスマホで撮影する。

全身、局所、表情。とにかく彼の興奮の赴くまま、激写された。

「……っ、それも、その……。お、おかずにする……の……?」

男の指が動くたび、撮影の気配を察して女体が喜悦に震わせられる。撮られた瞬間に頭が茹だるほどの興奮に冒され、堪らず股座を両の手で押さえた。

撮られた胸が恍惚に震え赤らんだ、それも写真に収められる。腹部、へそ、下腹部、そしてモジつきながら手の内に隠れる股間を凝視した後に内腿へと滑り下り、舐りつく。カメラ越しにも鮮烈なユウゴの熱視線が、堪らなく詩織の情動を煽る。

(あぁ、やっぱりこれっ。この人の目が一番っ……)

肌に、そして心に堪らなくフィットする。性癖の合致ぶりを改めて思い知り、自ずと股を押さえていた手を退ける。

(幸太郎さんは、こうじゃない。私がいくらアピールしても……そっぽ向いて。見てほしい所に、目を向けてすらくれなかった)

「また染みが大きくなってる。待ちきれないんだねぇ。昨日も今朝もしたのになぁ」

胸に芽生えかけた不満感情も、すぐさまユウゴの下卑た指摘が打ち消してくれる。

そしてどうやら自分と彼とはセックスを頻繁にしている設定のようだ。その様を想像してまた、甘く狂おしい疼きが詩織の下腹の奥で沸騰した。

「だ、だって。幹本くっ、んっ……ユウゴ君の、目がイヤらしいからぁぁ」

調子を合わせれば、一層鼻息を荒らげた彼が、目のみならず言葉でも炙ってくれる。

「ひ、ひひっ。詩織が、見られて感じるからいけないんだよぉ。でも……そんな詩織がボクは大好きだから。だから……今日も。好きなだけ感じて良いからね」

幸太郎も埋めてくれなかった肉の穴の、奥の奥まで覗こうとしているかのような熱烈な眼差しを浴びせてくる、ユウゴ。恍惚を与えてくれる彼への嫌悪が薄らいだのがいつからだったかも、もう全く思い出せない。

「ふ、ぁあ……」

満たされた思いがして、詩織の口唇が火照り蕩けた息を吐く。

早く、続きを。対照的に、初めて繋がった夜以来飢えっ放しの女陰がせっつく。

「着るところも撮る……の?」

「もちろん!」

これはこれでそそるからと続けた彼のカメラ越しの視線を意識しながら、カッターシャツを羽織り、前ボタンを留めてゆく。

ブラが隠れる間際、チラ見えしている状態で一枚。ボタンを留め終え、白のシャツ生地にブラの桃色地と黒フリルが透け映った状態で一枚。上はシャツ、下はショーツというアンバランスな全体図も二枚、写真に収められた。

「つ、次は眼鏡。お願いっ」

「……ん……」

高校時代の私の痴態を映したいのね──。ユウゴの意図を察して、詩織の背にまた新たな恍惚が迸る。本当の自分を探っている身としても、過去の己との邂逅は望むところ。拒む理由はなかった。

「伊達眼鏡だから。コンタクトは外さなくて大丈夫だからね」

ユウゴの配慮に図らずも感謝、感心して手に取った眼鏡は、やはり当時身に着けていたのと同デザイン。懐かしさも込み上げつつ耳に蔓を乗せ、久方ぶりの眼鏡の着け心地を確かめた。

「髪は……昔ほど長くないから、結べないわ」

「今の詩織も、詩織に違いないんだから大丈夫だよぉ。ボクは今の髪型も好きだなぁ」

初めて抱かれた日にも告白され、その時はただひたすらに恐怖と嫌悪に駆られたのを思い出す。今は──純粋に、嬉しく思えて仕方がない。

「じゃあ、じゃあ次はスカート。ね……?」

うん、と頷いたユウゴが生唾を飲んだ。期待されている。見つめられている。求められている実感が強く湧き立ち、自然と女の下肢がしなを作った。