不貞妻 詩織 視線を感じて、私……

「……っ! ふっ、ぅぅ……う、嘘ぉ……そんなはず、ない……」

スカートの内側で夜の寒気に晒される内腿が、別の冷たさに直面してもいる事は、詩織自身とうに気づいていた。露出の興奮を堪能する事で潤みっ放しの膣口から染みこぼれた蜜汁が、冷えてなお両の脚にへばりついている。新たな蜜が垂れるたび、先の蜜が下方に滴り、すでにふくらはぎにまで湿りが絡みついていた。

(こんなに、たくさん、はしたなく漏らしているんだもの。……ユウゴ君の言う通り、気づいてる人がいたっておかしくないかもしれないわ……)

果たして、膝下丈のスカートの奥から、嗅ぎ取れるほどのにおいが漏れてしまっているのか──? 疑念だったはずのそれが、じきに「もしも、そうだとしたら」との仮定に基づく被虐妄想へと進化した。

(もし、そうなら……さっきの男の人も。隣の女の子も。皆、皆……っ、私の事……露出で濡らす変態だ……って思って、眺めてた……?)

表向き平静を装い、心の中で嘲笑っていたのかも。帰りしなに蔑んでいるかも。

「はぁぅ……っ」

それだけならまだしも、見下しながら性的興奮を催している者も、中にはいたかもしれない。変態女だから犯されても文句ないだろ、なんて思われている可能性も、ないとは言えない。

むしろそうであれと願わずにいられない変態女の火照り呻く肢体に、繋いだ手より伝ったユウゴの温みが心地よく染む。

「前の時も、びしょびしょになって結局路地裏でボクが全部綺麗に舐り取ってあげたもんね。舐めても舐めても染み出して……一時間近く舐ってたら、詩織の脚腰が立たなくなっちゃったっけ。結局ボクが抱える格好で、生交尾したよね」

囁く程度の声量も、傍に寄る者がいれば盗み聞かれてしまう。ユウゴなりの演出とわかっていても、女芯の怯えと、直後に訪れる恍惚の疼きはなお健在。

「んぅ……っ! あ、やっ、ぁんんっ。お尻、や、ぁ、あっ、ひ……だめぇぇ」

加えて彼の手の甲に撫で繰られた臀部に、そこかしこから視線が注いでいる事にも気づいてしまったから、また一歩、あえて危険に踏み出した。より注目を集める台詞を故意に連ね、焦れに焦れた想いの丈をユウゴに伝えるつもりで腰を揺する。

繋いだ手をユウゴが握り返してきて、ハッと振り向いた詩織を後押しするように笑顔で頷く。不特定の視線を意識し続ける状況に、パートナーのお墨付きまで得て、元は臆病だった詩織の内に、異常とも言える積極性が芽生えていた。

「こっちをじろじろ見てる連中。二……いや、三人か。もう完全に気づいてるね。詩織の事、外で感じるスケベ女だって決めつけて、一刻も目を離そうとしないよ」

「ひぁ……っ! はぁ、あぁ……そ、んな。そんな、の……」

「頭の中ではもう犯しちゃってるかもしれないなぁ。……ボクなら、そうする」

今はこうやってじかに愛でられるけどね、と続けたユウゴが、また手の甲でスカート越しの尻肉を舐った。尻肉を押したり、押しついた手の甲で尻たぶを引っ張って、谷間に潜む窄まりを剥き出したりと、遠慮がない。

むしろ野外だからこそネチっこさを増して攻めてくる。そんな恋人の興奮ぶりを察して、詩織は誇らしい気分に駆られていった。

──露出性癖に共に興じる私達を、もっと見て。愛で合う事で互いに最も淫蕩に輝く、その様を余さず見届けて──。

「は、ぁ、あぁ……ユウゴ、くぅ、んっ……んんぅっ!」

すがり見た矢先に理解してくれた彼が、背後に回り込んで両手で乳房を揉み捏ねた。ブラジャーを着けていたのではあり得ない、たわみぶりと弾みぶり。視姦者達の網膜にも焼きついたはず。

確信してなお一層、露出性癖に溺れた変態女の身のくねりが増す。

「ふぁ……っ、あ……んっむぅぅっ」

危うく盛大に喘ぎそうになった口唇に、ユウゴの指が突き入り、塞いでしまう。

「ほら。あそこのトイレにはああやって、わりと頻繁に酔ったサラリーマンが行くから。あまり近づき過ぎない方がいいね」

忠告の傍らで、ユウゴの両手が、薄着越しの詩織の乳首を見つけ、すりすりと指腹で執拗に摺り捏ねた。

「んっ、んぅ、んんふぅぅっ」

口を塞がれているために、漏れ出るのはくぐもった喘ぎばかり、反面、閉じる事を許されないでいる口唇からよだれが垂れこぼれ、蕩けた眼、たわんだ眉、火照りきった頬と併せて明確な性的興奮を衆目の下に曝す。

「うぉっ……!?」

折しもトイレを済ませて出てきた中年サラリーマンが、眼前に迫り来る非日常的光景──野外で堂々睦み合う男女を捉え、身を強張らせて驚きの声を上げた。

その彼も間もなく酔い以外の熱に蕩けた眼で、ユウゴの手に愛でられひしゃげる乳房を二度三度舐り回してくる。前屈みの姿勢が明らかな欲情を示してもいて、視認した詩織の背に巡る痺れの勢いが増す。

背に連動し引き攣れた尻肉を、真後ろのパートナーの股間と摺り合わせ、肉棒の硬直ぶりを確かめつつ摩擦悦を貪った。

(私の恥ずかしい所を大勢の目に曝して……嬉しいんだ)

フリフリくねる詩織の腰と尻に周囲よりの視線がそそぐたび、擦れ合う肉棒が脈打ち、嫉妬の雄叫びでもってスカート越しの双臀を揺さぶった。同時に乳房を握る手にも熱がこもる。絶対に誰にも渡さない──そんな、所有宣告をされた気がして、複数の視線に炙られる恍惚も味わうさなかに、詩織の胸と尻の火照りが急膨張した。