不貞妻 詩織 視線を感じて、私……

「やぁ、やめて。嗅いじゃ、やぁ……あ……! う、ううぅ……っ」

頭の後ろでユウゴの鼻がスンスンと鳴っているのに気づき、より一層の恥悦に呑まれた詩織の腰がビグリと一度、不自由な体勢の中で縦に弾む。そうして振り撒かれた尿液が、飛沫となってより遠くに飛散した。

「いい匂いだ……」

うっとり惚けた声で評されたのはきっと、髪から香るシャンプーの匂い。

(でも、この人の事だから、おしっこの臭いの事かも……)

小便の臭気を褒められたと解釈した方が、より恥悦を貪れる。左右の膝頭が擦り合わさり、力む下腹部に今すぐ指で穿り回したくなるほどの喜悦の痺れが駆け巡る。

「んぅっ……ンッッ、ンッ……!」

びゅっ……とキレよく飛んだ尿液を見送った詩織の瞳は、大通りへと向いたまま、悦びの涙を滴らす。

「帰りの事も考えてキレイキレイしなきゃね。ほら、まだお股に滴が残ってるよ?」

「んぅ……っ! は、あぁぁぁ……」

ねっとりとした熱々吐息をかけられ、耳打ちされた。ただそれだけの事で背から胸肉、腰の芯へと期待の疼きが迸る。

ユウゴの施す変態行為に身も心も馴染みゆくのを自覚して、耳まで真っ赤にした詩織が腰を振る。玉状になって股肉にへばりつく尿のつゆを、フリフリ前後左右に忙しない腰の動きで振り落とし、狭い袋小路に充満する男女の淫熱と、アンモニア臭を混ぜ溶かし、自ずから吸入して酔い痴れた。

「んはぁ……あぁ、おしっこの臭い、やぁぁ……」

日当たりが悪いから、そうそう尿溜まりは乾かないはず。換気がなされにくい分、長くアンモニア臭も残るだろう。もし、あまり間を置かずに誰かが訪れたりしたなら。

「ゴミ捨てに来た人は確実に気づくだろうね。多分犬猫の類がしたと思うだろうけど。……ね、ボクの可愛い牝猫ちゃん」

「ひっ、あぁ……今弄っちゃ、だっ……んぅっ、うぅ、やはっぁぁ……」

駄目、と拒みきれなかったのは、ユウゴの指が尿で潤んだ膣肉を摺りほぐし始めた、その不意打ちに驚いたから。

でも、そればかりではない。絶えず恍惚を運んでくるユウゴの指と、媚肉を炙ってより潤ませる熱視線が好ましく、失いたくないと思ってしまったから。

「……立って。詩織のおしっこ穴。隅々まで綺麗にしてあげる」

だから、何をされるのか薄々気勘付いていたのに、従ってしまった。

「自分でビラを捲って、奥まで見せて」

臆面もなく言い放つ彼の視線と鼻息が、おぼつかない足取りで立ったばかりの詩織の股間に注ぐ。

「んっ……う、ぁんっ……は、早く、して……」

焦らさないで、と続けようとした唇をすんでのところで噛み締め閉じて、代わりに涙潤む瞳をすがらせ、懇願した。

(早く済ませないと、誰かが来るかもしれないから。そうしたら、私も、貴方だって身の破滅でしょう!?)

誰に告げるでもなく潜めた言い訳が、空しく吹き抜けてゆく。

(奥の奥まで覗かれて……彼も私も絶対我慢できなくなる。わかってるのに。でも、だから、だからこそきっと……)

生唾を呑んだ喉元に、すぐにまた唾液のプールが作られる。唾溜まりに浸った舌が、熱吐息と共にこぼれ出たがってもいたし、何より期待を孕んだ牝腰の揺れが収まらない。

捲り上げて腹部にまとめたスカート裾がずり落ちぬよう留意しつつ、詩織は自らの十指で摘まみ留めた陰唇を少し、また少しと左右に開いていった。

(あぁ、ほら、やっぱり……じっと、見つめてきてるっ……! 四か月前にセックスした、穴の奥の奥までっ……おちんちんの代わりに視線が突き刺さってきてる!)

とうとう開ききった肉の割れ目の内側へと粘っこい熱視線が注ぐのを感じ、震えた腰は──引けるどころか迫り出して、ユウゴの眼前へと、より潤みの増した秘裂を見せつけた。染み出た蜜と尿の残滓に滑りそうになる手指に、より一層の熱がこもる。

「おしっこと愛液でヌラヌラになって……凄く、エッチだ。こもったスメルも濃厚で……嗅いで、見てるだけで、チンポ硬くなる。素敵だよ、詩織ぃ……」

当人の言葉通り、こんもりと膨れたズボン前面が、かつて結合した時の事を思い起こしてでもいるのか、繰り返し脈打ち、小太りの腹と腰を巻き込み揺らいでいた。

「嫌……大きくしないで……」

男の明らかな性的興奮を目にして、膣肉がヒクリヒクヒク、浅ましくうねったのを知覚した。絡む蜜液がニチャニチャと、広げた穴の内で糸を引き伸びている。

それを目にした男の肉棒がより一層猛り増して脈を打つ。快楽のサイクルに嵌まり込んでゆく己を意識して、男女双方が相手の性器に熱視線を注ぎ続ける。

屈んだ姿勢と、ずんぐりむっくりな体型とが相まって、荒く息を吐き、舌を突き出したユウゴの様が、まるで盛った大型犬のように思えた。その獣欲に満ちた眼光と、濡れ光り長く伸びた赤舌に、もうじき犯される。

(白昼堂々、外で……丸出しの性器を舐り回される……!)

期待を孕んだ胸が狂おしくときめき、気づけば詩織自ら前に進み出て──距離が詰まり、勃起を直視できなくなる事に寂寥感を覚えながらも──接触の時を早めていた。

「あは……ぁ、んっ!」

ヌラァと伸びた赤舌が、恥丘へと接着した瞬間。待ちに待った湿りと熱、弾力感を一挙に味わった詩織の腰から背へ、愉悦の痺れが幾筋も奔り抜けてゆく。