不貞妻 詩織 視線を感じて、私……

(私が泣きそうな顔で腰をくねらせるのも、唇噛んで声を堪えているのも。全部また、見届けて……っ。熱くなったおち、ん……ちんをグリグリお尻に押しつけてきた。それで私が、堪えきれずに喘いでしまうって、知ってるくせに……!)

二十階に着いたエレベーターが止まって、ドアが開いてゆく瞬間にも、彼の攻め手は緩まなかった。エレベーターの外の景色が詩織の目に留まり、焦らしの時間からの解放に期待した、そのタイミングを狙って、ユウゴの手指が陰唇を爪弾く。

『ふぁぁぅっ!』

堪らず吐き出した甲高い嬌声は確実にエレベーターの外に漏れ響き、股よりの恍惚に煩悶する若妻の胸に羞恥という快楽の種を植え足した。

腰砕けになった詩織の肩と腰を難なく抑えたユウゴの手に、さらに抱き寄せられて隙間なく寄り添う形を強いられる。その後も舐りつく彼の視線に火照らされてしまっていたがために、まるで恋人同士のような素振りでエスコートされる状況を意識する間がなかった。

(男にしなだれかかったまま、お尻に手まで添えられて入店するなんて……誤解されないわけがない……)

鼻白みと、興味本位。両極端に出迎えた視線の数々を思い出し、またスカート内の温度と湿度が上昇する。

「今もまだ、治まってないんだよね。食事中何度もお尻揺らしてたし」

(違う……っ。今日こそ終わりにするつもりで、来たんだから……)

出立前からの決心は、相手の気勢に呑まれて、とうとう口頭で伝えられずじまい。意思表示するのが苦手で控えめに徹してきた己の意気地のなさを、今更ながら痛感する。早く場を去りたい一心で詩織はワインを呷り、空になったグラスを置いた。

「じゃあ、行こうか」

先に席を立ち待っていた彼の手と視線が、尻に触れ、舐りつく。怖気と、行き先への不安を抱え、彼の手に尻を押されるように歩みだした詩織の面持ちは胸中を反映して、悪い意味で人目を惹く、沈鬱な彩りにまみれていた。

道すがら。周囲の客と店員より注がれる複数の視線を浴びて震える己の足取りを見下ろしつつ、詩織は思う。人目に触れ難い奥まった席を選んだのも、女体の焦れを誘う彼なりの策略だったのではないか、と。

(おかしくされるとわかってるのに。どうして、私は彼の求めを拒めないのだろう)

言い訳ではない本当の理由を知らしめようとするように、今またユウゴの指と視線に愛でられた不貞妻尻が嬉々と震えた。

ユウゴに誘導されるままホテルを出て、ビルの脇にある小道を歩む事、三分強。

人二人並ぶのがやっとといった狭い道幅の路地へと連れ込まれた詩織は、袋小路で改めてユウゴと向き会った。

左右を囲む雑居ビルの陰に隠れた路地裏は日中だというのに薄暗く、いずれのビルの物なのかゴミ箱がぽつんと置かれているだけ。当然、他に人影はない。薄暗がりにユウゴと二人きり、という状況が連れ込まれた直後から詩織の視線を落ち着かなくさせた。それを眺めるユウゴの方は、くっくっ、とまたいつもの含み笑いを発した後。

「ここで、おしっこして」

袋小路に追い詰めた獲物の右側壁面に手を突いて立ちはだかった上で、もう片方の手でアスファルトの地面を指し示し、告げる。

(おし……っ、え……?)

路地の入り口から袋小路までは十メートルとない。顔を上げて仰いだ詩織の視線の先には、通りを行き交う人々の姿も垣間見えていた。暗いといっても野外である事に変わりなく、人目を気にせずにいられない。

そんな状況下での男の発言が信じられず、狼狽えている間に彼の腕に囚われた。

「やっ、は、離してっ。できません……外でするなんて絶対に無理……っ」

「大丈夫。詩織なら、絶対にできるよ」

やけに自信たっぷりの囁きが、若妻の耳と心をくすぐる。次いで短いスカートの内へと易々潜り入ったユウゴの右手指が、迷う事無く膣口に接触。

「ふぁ……! や、やだっ、やぁっ……あぁ……んっ!」

ホテル内でも散々焦らされ続けていた女陰が、即座に悦びの蜜で潤み、そのヌメリでもって男の指に媚びる。それを受けて男の指が、わずかに開閉する割れ目の上をスリスリと、蜜を摺り馴染ませながら行き来した。

堪らず詩織が頽れるのを助長する男の目に、嗜虐の色が宿る。内股でしゃがむ格好となった若妻の股間に突っ込んだままの右手指で、なおも割れ目を撫で擦り、火照った女体を背後に回った自らの腹へともたれかからせる事で、ぐらつき仰け反る詩織の膝を自然と開くよう仕向けた。

「駄目。お願いだから、許し……ふぁ、ぁあ、んっ」

切羽詰まった表情で告げた詩織の膣口に、浅くユウゴの右手人差し指が潜り入る。衝撃にまた仰け反り喘いだ若妻の、開いたばかりの膝がカタカタと情けなく笑った。

「駄目っ……もし、誰か来たりしたら、っふぁ、あっ、あぁっ、ン……ッ!」

「声を聞きつけて通行人が覗くかも。……想像するだけで堪らなくなっちゃうよね。声も、どんどん我慢できなくなっちゃうでしょ」

喘ぐのをやめられないでいるのは、ユウゴの手指が執拗に膣肉を弄るせい。早鐘の如く胸が高鳴っているのも危機感からで、腰と膝が震えっ放しなのだって鼠蹊部に摺りつく彼のもう片方の手が火照っていて心地が悪いせい。

もっともらしい理由を幾つ拵えてみたところで、若妻の目は路地の先に覗く通りへと張りついたまま。まどろみ潤むその瞳から恍惚が嗅ぎ取れてしまうがために、ユウゴは自信を持って指と言葉を用い、煽り続ける。