不貞妻 詩織 視線を感じて、私……

「んっ……! あ、やっ……うぅ……ほ、本当に嫌なの、だからっ……おっ、お手洗いに行かせてぇ……」

切羽詰まった声を上げた詩織を背後から覗き見て、ユウゴの表情が一層嬉々と歪み、一緒になって屈む彼の全身も喜び弾む。その振動が、より詩織の尿意を煽る種となる。

(こんな事になるってわかってたら……もっと、どうにかなったかもしれないのに)

ホテル内はもちろん、この路地裏に連れ込まれるまで、常時ユウゴがくっついていたし、彼の支えなしではまともに歩けぬほど詩織の身には疼きが蓄積されていた。

肩、うなじ、黒髪。隙あらば吐息や指、稀に舌で舐られ、人目を忍んで行われた単発短期の愛撫によるもどかしさばかり身の内に蓄積する、道中だった。

尻にもユウゴの指が張りつきっ放しだったが、スカートの上から撫で回すばかりで一度も内側には潜ってこずじまい。時折潜る素振りを見せては焦れた女体に期待を抱かせ、ぬか喜びの後に去来する落胆ぶりを目で見て楽しんでいた、ユウゴ。

彼に肩と腰を抱き捕まえられた状態で、ネチネチとした愛撫まで施される道中、詩織の自由になる時間はほぼ皆無と言って差し支えなかった。逃れ得る機会などありはしなかったと、振り返ってみて改めて思う。

それでも、何とかしてトイレを済ませておけばよかった。男の勧めを拒めず飲み干した二杯分の赤ワインがそっくりそのまま尿意となって膀胱を悩ませ始めた今になって、しても詮無い後悔に見舞われる。

「もし誰か来ても、ボクが護るから」

折しも、通りを行き交う人々の目がこちらに向いた気がして、詩織がビクリと背を強張らせた。そのタイミングを狙い打って、ユウゴが耳打ちする。

「し、信じられなっ、いぅ、あっ、はあぁうぅぅっ」

だって彼の左手指は、堪える下腹部をしきりに撫で繰り、押しついて、失禁を促す事に執心している。右手指で膣の前壁を捏ね押し、その先、向こう側にある膀胱と尿道を刺激し続けてもいた。

肉悦を孕まされた膣が収縮するのに合わせて詩織の上体が仰け反り、背後で支えるユウゴの頼もしさを実感する。

「んぅ、っ、うぅ……っ、や、ぁぁっ……本当にもっ、漏れちゃうぅぅぅっ」

自然とすがる眼差しとなって振り向いた詩織を、相変わらずのねちっこい熱視線が出迎え、不本意な安堵が胸中に染み渡ってゆく。

「いいよ、ボクの見てる前でお漏らし……して、詩織っ!」

グッと力強く膣の前壁を押したユウゴが吠え、いよいよ差し迫った尿意の熾烈さに、震える牝腰がより一層前へ迫り出た。

(あぁ、も、もう駄目ぇぇっ……!)

「帰りの事も考えてスカートを捲らないと。ね……?」

「ふっ、うぅぅ……っン……!」

わざとギリギリのタイミングで告げる男の意地悪さに涙して、それでも意を決し、スカートを自らの手で捲り上げ、肩越しの彼の視線が露出した股間に注ぐのを感知して、なお一層の尿意と恥悦に蝕まれる。

覗き込む彼の圧に押される形で詩織の身体も前屈みとなり、頼もしい温み重みを背に感じ続ける傍らで、その彼と共に剥き出しの股間を詩織自ら凝視した。

「マン肉がヒクヒクしてる。へへ、内側の桃色肉がチラッチラ、やらしいなぁ。お漏らし直前の、詩織の恥じらい顔も素敵だよ……」

「やぁぁっ、言わないで……」

同じ事を、考えていた。尿意に咽び喘ぐ女性器を見て、卑しくも艶めかしいと感じていた。背後の男と自分が同種の感性を持ち、この事態を愉しんでいる。認めたくない現実を思わぬ形で突きつけられ、すでに小刻みに震えていた詩織の尻が緊縮。双臀の谷間に息づく窄まりがギュッと絞られ、連動して下腹部にも力がこもった。

「ほら。さっき通っていった人。こっちを見てたんじゃないかなぁ?」

「ひっ……やぁ! あっあぁ、嘘っ、嘘ぉぉぉっ」

被虐悦を煽る男の言葉を甘受し、妄想逞しく膨らませた詩織のひっきりなしに震える両膝が、重なるように内に寄る。より力みやすい体勢となって、下腹部に強い圧を自ずと付与すれば、腰から背、背から胸と脳天へと愉悦の痺れが駆け上る。

「ふっ、うぅ、や……っ、来ちゃ……出ちゃ、ぁうぅぅっ」

詩織の体感では数分とも思われた、実際にはずっと短い煩悶の時を経て──。

「ふっ、うぅ……! ふぁっ、あ、あはぁぁぁ……」

ぎゅっと目を瞑った二十八歳若妻の股座から、黄ばんだ尿液が迸った。ヂョボヂョボと音を立てて、ほかほかと湯気も上げ、大量にひりだされた尿液が、見る間に二人の足元に溜まり広がってゆく。

「は、ぁ……あああぁぁ……っ」

痛切な恥悦と、身体の内から軽くなってゆく解放感。放尿に伴う愉悦衝動。三つがない交ぜとなって、詩織の心身を揺さぶった。己の股から漏れ落ちる黄色い迸りを見つめる詩織の眼は涙に暮れ、その一方で恍惚に浸かり蕩けている。

「ほら、目を開けて前を見て。詩織のお漏らし、大勢の人が見てくれてるよ……!」

興奮の余りに息乱し、途切れ途切れの口振りでユウゴが囁きかけてきた。

「いや、あぁぁぁっ、見ないで……っ。見ないでぇぇっ」

頭を振り、舞わせた黒髪でユウゴの鼻梁をくすぐった詩織の瞳は、再度満開。真っ直ぐに路地の入り口へ──現実には居もしない数多の見物人を見いだして、よりいきんだ股から勢いの増した尿をひり漏らす。