不貞妻 詩織 視線を感じて、私……

「ふぁ……む……っ、ちゅ、っちぅぅぅぅっ」

取り出したてのコンドームを先端から、挿入口の輪になった部分のみ残して口内に飲み啜る。空気を抜くための吸引音が、注ぐ視線を意識してより猥褻に勢いづく。

(私のエッチな唇を見て、我慢できなくなったんだわ。ふふ……嬉しい)

未知の行為を凝視し続ける木陰の少年少女は、寄り添う互いの身を摺り合わせ、性的興奮を発露し始めている。意識してか、無意識か。いずれにしろ、若い二人の性欲を引き出してやったとの想いが、詩織により一層の淫蕩を演じさせた。

一方で詩織の痴態を見守るユウゴの反応もまた、顕著だった。街灯の明かりの届かぬ暗がりにあっても、すでに肌が覚えている彼の熱視線は何より鋭敏に感じ取れる。彼は、性交のための道具を口に咥えたパートナーを全身隅々まで視線で舐り回した後、より硬く張り詰めた逸物を詩織の鼻先に突き出し、誇らしげに揺すってみせた。

「んふぅ……っ、ふー、ふぅ、んんぅ……」

──欲しい。早く。今宵のために準備してきた穴を、これで掻き回されたい。

劣情と恋慕の境目が曖昧になりゆく中で、蕩け眼を勃起ペニスへと注ぐ。同時に口内に全て収めたコンドームを、破かぬようにクチュクチュと咀嚼する。ゴムを濡らすためであるのと同時に、咀嚼に伴う粘着質な水音で皆の昂揚を煽る意味合いもあった。

「ああ、いいよ詩織ぃ。とってもエッチで素敵だよぉ……ひっひひ、開いて見せてっ」

ユウゴがどもるのは、決まって、興奮を抑えられないでいる時。知っていればこそ、余計に彼の請願に対する愛しさが増し、応じる身にも恍惚が巡る。

「んあ……あぁ、ん……」

期待と恍惚が混じり合った足に震えが奔っても、懸命に踏ん張りを利かせ、屈んだ体勢を保持し続ける。

望まれた通りに口唇を開き、舌を、上に乗るコンドームごと突き出して披露した。ヌラヌラと濡れ光るゴムと、歯や頬肉との間で唾液の糸が引く。咀嚼を経て粘り気の増した唾液の塊が喉に絡んでもいて、噎せ込みそうにもなる。

(このやり方も、今夜のために一生懸命練習したのよ? 危険日もお外でセックスしたい一心で)

夫と使う予定もないコンドームを大量に買い、隠れて日中、何度も何度も練習した。

どうにか噎せるのを堪えた詩織の、涙で潤んだ瞳に淫靡な艶が差し込む。

図らずも目を合わせる事となった大木裏の少女が、強張り通しの身を震わせて体勢を崩し、隣の少年に寄りかかる。

詩織の位置からは聞き取れなかったが、小声で少女の名を呼び、案じたのだろう。口を動かしながら少年が彼女の身を抱き留めた。

腕の中に収まった状態で少女の視線が再び変態露出カップルへと注ぐのを確かめて、少年も覗きを再開する。

(あぁ、きた……。ねっとり熱々の視線が……舌に絡みついてきてる……!)

ねっとりと沈着するユウゴのそれとはまた違う、青い性を強く意識させられる荒々しい眼差し。堪らずときめいた両乳房が、身震いに合わせてぶるりと震える。

背徳の疼きを蓄積しながら、詩織はコンドームを乗せた舌先を、ユウゴの肉棒の突端へと被せ。

「んっ、む、んふっんむふぅぅぅぅぅぅっ」

押し出す舌と、肉棒に添えた手指。さらには再び輪の部分だけ外に出して窄めた唇も総動員して、擦るように飲み食んだ肉棒へと避妊具を纏わせていった。

「おっ、おぉぉぉっ……」

被せ終えて唇を引き抜く際にも摩擦を付与され、ユウゴが喜悦に悶えて腰と、腹肉を揺する。濡れ光るピンク色のゴムに八割がた覆われた状態で露出した男性器。暗がりの中で異彩を放つその砲身が、雄叫び代わりに二回。目に見えて大きな脈を打つ。

ユウゴ自身のへそに張りつくのではと思えるほどの屹立具合を際立たせる避妊具の彩りに、潜む少年少女は羨望と恐れ、詩織は強烈な恋慕にまみれ、三者三様の視線を突き刺した。

「んはぁ、あぁ……ユ、ユウゴ君っ、私っ……も、もう準備、できてるから、ぁぁ」

濡れる股間はもちろんの事。期待に疼く肛門が、尻肉の谷間でひとりでにヒクリヒクヒクと蠢き通しとなっていた。

(まだ……驚くのはこれからなのよ……? あなたたちが想像もしてないような変態行為を、今から、ここでしちゃうの)

盛った犬の如く荒らげた詩織の呼吸に、感じるものがあったのか、少年と少女の目が移り注ぐ。その瞬間を見計らい立ち上がった詩織の、期待に震える手が水色スカートを緩やかに捲り上げ──。

「は、ぁ、あぁぁ……見て、ぇ……っ」

露出したての白く熟れた臀部が、若人が潜む方向に振り向けられる。そして、以心伝心抱きついてきたパートナーの手によって、双臀が割り裂かれた。

木陰の男女が息を呑んだのが気配で伝わる。それでも彼と彼女は逃げ出そうとせず、排泄用の肉穴へと視線を注いでくれた。若い二人の性的興奮と興味の強さを気取って、余計に恍惚に憑かれた詩織の尻が小刻みに躍る。

「ちゃんと今日のために穴をほぐしてきたんだね。偉いぞ」

「や、約束したでしょう? だから……あぁ。もう、焦らさないでぇ」

口でコンドームを装着させる練習と並行して、入浴時に肛門を、指と、ユウゴにもらったアナル用バイブで日々ほぐしてきた。

夫も使うバスルームで行う自己調教への躊躇いは回を重ねるごとに薄れ、今日などは昼間から夕方にかけてずっと、夫を迎えに行くのも忘れて肛門自慰に耽ってしまったほど。蕩けほぐれた排泄穴は刺激に慣れ、より上等の甘美を求めて蠢き続けている。