不貞妻 詩織 視線を感じて、私……

「ちゃんと詩織を見てるから、わかるよ、ポッチがピクピク震えて待ってたのもね」

切々とした衝動に炙られる中で聞いた、求められている事を強く意識させる言葉。粘着質で偏執的なそれが、堪らなく恋しく思えてしまう異常事態にあって、詩織の視線はなお、男のかざすスマホ画面に釘付けとなっていた。

ヌルつきにまみれ、ともすれば滑り落ちそうな亀頭部に、ぴったり吸着する。そのためだけに鼻の下を伸ばし、捲れ突き出た唇を吸着させる自分。

まるでアヒルのような唇だ、と自虐した直後。詩織の喉が鳴り、また唾を飲むのと同時に、密着する亀頭に揺さぶりをかけた。

「うはっ……!」

呻いたユウゴの腰と腹肉が震え、少量のつゆ──先走り汁を詩織の口内に滴らす。

「んぅ……!」

歯先に浴びたとろみに涙目を見開き、詩織はまた口中に溜まった唾を飲む。なぜだか今度は大量に唾が溢れ出し、啜るも間に合わず、唇と亀頭との接地面から、雄々しく猛る肉幹へと垂れこぼしてしまった。その様も、スマホ画面に鮮明に記録され、視覚的に若妻の自虐悦を煽る。

(私、今こんなにもはしたない姿を曝して……。下卑た男を悦ばせて、また、全部見られてしまった……っ、あ、あぁぁぁ……)

撮られる瞬間、反射的に目を向けたために、卑猥な記念撮影に興じているように見えなくもない。それも相まって、欲望ではちきれんばかりの剛直に自ずから吸いついているようにも見える。事情を知る自分ですらそう思うのだ。

何も知らぬ他人──例えば夫が見たら、確実に誤解してしまうだろう。

俯瞰の視点で再認識した現状と、もしも夫に露見したらという恐怖。いずれも果てしのない羞恥と情動を詩織の身に注ぐ。

煩悶に見舞われた美尻が、スカートの内で汗ばみ弾む。それを見て鼻息を荒らげたユウゴの手指が、ブラ越しの右乳房全体をやんわりと捏ね上げた。

「んっ……ふ、ぅんんっ。あっ、あぁ、やぁ……もっ、もう胸はやめ、ってぇぇ」

ブラ越しの刺激では、どれだけ巧みでも物足らない。巧みであればあるほど、もしも直接されたら、との期待が強まって、焦れ呻かされるばかりだ。三か月ご無沙汰の股穴が悶えパクつき、押し込められたショーツの裏に少量の蜜を吐きつける。

女を抱き慣れた小太り男には、全てが筒抜け。

「じゃあ、そろそろ……咥えてみよっか……!」

前髪を梳かれてくすぐったさに身震いし、頬にかかる髪を揉むように愛でられて面映ゆさを噛み締める。そうして女の心と身体に甘痒さを孕ませた上で、ユウゴの左手が詩織の後頭部に触れ、そのまま自分の腰目掛けて数センチ引き寄せた。

「んぶっ!? ンッ、ンンぅ───っ!」

雁高の肉傘に捲られた唇に、小さな痺れが駆け巡る。口内の温度を凌駕する剛直の熱量に目を剥いた矢先、勢いよく突き入ってきた亀頭の迫力に、喉が引き攣れた。

初めての経験に思わず込み上げたえずきを、堪えられなかった。

「っふ! ぅぐっ、ごぷっ、うぅ……!」

「あぁ、ごめん。ごめんね。でも、ちゃんと馴らしたげるから。……ボクは君の嫌がる事はしたくないんだ」

雁首を少し過ぎた辺りまで温い口腔にねじ入れて、唾液のプールに浸した男が、喜悦に身じろぎつつ、手前勝手な詭弁を繰り出した。

(現に今、望んでもいない口淫奉仕をさせているくせに──!)

えずきに伴う息苦しさと、胃に込み上げた酸っぱい味わい、目尻に浮いた涙。全てを何とかやり過ごした矢先に、また、ユウゴの手前勝手な理屈が続く。

「だから……ね。ブラ、自分で取って。生のおっぱいをボクにちょうだい。いっぱいいっぱい弄って、またあの夜みたいに気持ちよくする。約束するよ」

また亀頭とのキス写真をちらつかせ、即時の決断を迫ってくる。どこまでも卑怯で、好きになる要素の欠片もない最低男。

涙で潤む両眼で睨みつけながらも従ったのは、早く済ませてしまいたかったからだ。

「んふぅっ……ふぅぅ……」

ブラが外れて落ちる瞬間、両乳房が解放感を覚えて嬉々と震えた。各々の中心で早くも尖り勃つ桜色の突起の求めに応じた──わけじゃない。

唾と共に嚥下した先走り汁のぬめる喉ごしが、余計に唾を溢れさせた──わけじゃない。だから、舌を亀頭に押しつけているのも、さらなる侵攻を防ぐためでしかなく、決して、また先走りのつゆが欲しくて舐りついたわけじゃない。

(だって、おちんちんから出たものが美味しいはず、ないんだから……!)

断定しなければ二十八年の人生で培った価値観が崩壊しそうで、余計頑なに強張った若妻の舌先が、先走りのヌメリに滑って亀頭を舐る。

「……っ、ふひぃ。それじゃ、ゆっくり、じっくり動かすからね……右の手を竿の中腹、左手を根元に。やんわり包むように巻きつけて」

ごく小さな摩擦に喜悦したユウゴが、先走りを二滴。脈打つ肉棒から振り落として告げる。

何も知らぬ詩織が指示通りに手を添えると、右の手の平には肉皮の内に硬い芯のある感触。左手には反り返る肉棒の強力なバネが伝わった。

加えて左右どちらにも牡の逞しい鼓動が、焼けつきそうな熱と共に伝う。

「ふぐ……っ!?」

「あぁ、ごめんごめん。詩織の手つきが心地よくて、さ……」

口中で舌の上に居座る亀頭部が、しきりに跳ね弾む。驚き目を剥くと、醜面を一層醜くクシャっと歪めた、満面笑顔のユウゴの顔に出迎えられた。