ヤブヌマ 侵食されゆく妻の蜜肌

『んぁッッ……やぁぁっ』

咲美の甲高く短い叫びが、耳をつんざく。

「藪……沼ぁぁっ」

傍観する他ない夫の喉から、憤怒が形を成して迸る。

それらを糧としたかのように、喜々と藪沼の肉砲身が脈打った。ゴムに覆われた突端が浅く咲美の内へ。濡れた割れ目をいともたやすく突き破り、ほんの一センチほどだが潜っていた。

ついに、藪沼の肉体の一部が、咲美に挿入された。二人が繋がったのだ。

「……ッッ! う、ぐ……ぅぅっ!」

吐き気と怖気、嫉妬。それらに炙られ増長した性的衝動と歪な欲求。すべてが一斉に、罪深き夫の胸と腰奥に侵攻した。当然のごとく処理しきれず、混濁した果てに、喉からえずき、腰から甘苦しい疼きが、同時に噴き漏れる。

一時停止して幾度画面を見返しても、藪沼の醜悪な物が、咲美の入り口に、その先端を挿れてしまっている事実は覆らない。ゴム越しだ、生で繋がったわけじゃないと言い聞かせるも、繋がっている事実をより認識するだけの結果に終わる。目を凝らすほどに現実を直視させられ、悪寒と恍惚が競るように全身に巡った。

藪沼が、浅く入れた位置はそのままに、腰を回して膣口の内粘膜を摺り始める。

『やっ……ぁっ、嫌っ、はっ、あ、っんん、ッッ!』

焦らす思惑が丸出しの奴の腰使いを、十五回は耐え忍んだだろうか。拒絶を貫かんとしていた咲美の言葉尻が、ついに甘く喘ぐ。肉棒を抱き締めるがごとく震え締まる膣口より溢れる愛液の量は、回を重ねるごとに増し続けていた。ヒクつきも増し、早く奥まで来てとせがんでいるように見える。

『ほら、ほら。溢れてるじゃん。我慢なんて、しないほうがいいってぇ』

惚け囁く藪沼と、火照りにまみれながらもなお健気に堪えるそぶりを、目や口元に表している咲美。

藪沼が顔を寄せることで、二人の唇が急接近する。確実に息がかかり合う至近距離で、まるで目で会話をしているかのように、二人はしばし静寂を共有した。

その間も、コンドームを介した男女の性器が浅い位置で擦れ合う。掻き出される咲美の蜜音が次第に大きく、慌ただしく変化する。

『はっ、う、んんっ……や、ぁぁっ』

やだ、と咲美の唇は告げていた。懸命に耐え忍び、今なお拒絶の意思を示している。彼女の心は未だ穢されていないのだ。夫の胸に一抹の安堵、次いで正反対の感情──物足らなさが芽吹き、暴れだす。

(やめろ……僕は、もう……これ以上は……)

望まない。望んでる。真逆の答えが堂々巡りし続ける。結局何も言えずに、すがるように画面を注視した。藪沼がいつ咲美に口づけるのではと気が気でなかったのもあり、視線は一直線に二人の唇に向く。

藪沼が不意に目を見開いた。一瞬後にだらしなく目尻を下げる。さらにその数秒後。

『よっしゃっ! ありがとうっ、ありがとうっ、アサオカちゃんっ!!』

(咲……美?)

何があった。二人の唇を視界の中心に据えていた夫には理解できなかった。

『やぁあっ!!』

惑い狼狽えていた心根が、直後に響いた愛妻の叫びを受け、否応なしに察する。

『ほらっ、入った! 入ってるよアサオカちゃん! ついに一つになったんだっ』

続く奴の言葉が追認した。咲美が合図をしたのか、しなかったのか。いずれにしても、藪沼の肉棒は彼女の膣内の奥深くにまで到達してしまった。ゴム越しとはいえ、夫が長きに渡って占有してきた聖域が、ついに他者の足跡を許したのだ。

『あああ、あったけ~!! この日をどれだけ夢見たことかっ……。アサオカちゃんがパートで入ってきた時から、ずっと夢見てたんだよっ』

咲美の下腹部に乗った藪沼の肥え太った腹肉が、悦び波打っていた。

『や、ぁああっ、ひっ、やっ、ぁっ』

合わせて咲美の下腹部も揺れ、同じリズムで声音も跳ねる。

『ずっとっ……可愛いなって思ってたんだよっ』

ゆっくりと、藪沼の腰が躍りだす。

『い、やっ、あっ、ひぃ、ンンッ!』

『でも絶対無理ってあきらめてたんだ……オヤジギャグ言っても、ちっともっ、笑ってっ、くれなかったし、ねッッ』

横回転の円運動で、すでに汁だくの蜜壺が捏ねほぐされていった。

咲美は咄嗟に手足を奴の背と腿に巻きつける。なんとかピストンの幅を殺そうとしての、おそらくは無意識の行動だったのだろう。しかし、それは逆効果だった。

『や、やめてくだっ、あッんッッ!』

『真面目そうで』

クリアピンクの避妊具越しに雁高を誇示する亀頭が、拒もうと締まった膣肉を割り広げ、強かに抉りながら攻め上がる。密着を強めたのが仇となり、あっさりと最奥にまで到達を許す。亀頭が悦び放った脈動は幹に伝い、咲美の膣洞内にも執拗に残響した。男の昂奮ぶりは、きゅっと縮まり上がった玉袋からも察せられる。

『やぁっあああっ、はひ……ぃぃっ』

抵抗の余地を自ら失くした咲美が、引き攣った嬌声を吐き出し、乞いすがるような眼を藪沼に向けた。

『旦那をほんとに愛してそうでっ』

藪沼の口撃は、止まらない。一転速度を上げたピストンで、蜜壺を掘っては掻き出し、また掘って。

『やっ、やめっ、あの人のっ、ことっ、はっ、言わなっ、あッッンッ!』

リズミカルな腰使いにリードされ、咲美の声音が躍る。

『それがっ、どうだ、出会って半年っ、狙い続けて半年っ、こうしてめでたくっ』