『いい? 気持ちいいかいっ、アサオカちゃんっ』
藪沼の問いかけに、咲美がコクコクと繰り返し頷いている。
『言葉に出して言ってっ!』
『ぁひぃっ! い、いいっ、ですっ、気持ちイイッ!』
強く膣の上壁を摺り上げられて、瞬く間に口を割った彼女に、もはや妻の矜持は欠片もない。妻という肩書を外して、ただの女に戻った彼女は、乳頭を藪沼に抓られても喜々と喘ぐほど、身の昂りに溶け堕ちていた。
『どこがっ、どこがいいっ? ちゃんと教えてっ! でないと……』
奴は、ほんの少し腰の速度を緩めただけだ。
『む、胸っ……ちくびっ、お……股ぁぁっひぃンッ! 全部ッ、いいのおォッ!』
なのに刺激の遮断に怯える女の心が過剰反応し、あまりにもあっけなく要求に屈する。与えられる快楽に溺れきった女体が、より強い刺激を欲して自ずから忙しのない、淫猥極まりない動きを披露した。
『今日はこれで最後だからっ! だからまた一緒にっ、イこうよっ』
吠えた藪沼の肉棒を、フリフリ揺らぐ牝尻が根元まで食み呑んで、さらに回転と揺れ、そして締めつけを浴びせ、歓待する。
お返しとばかりに、藪沼の指腹が、咲美の左右乳首を磨り潰し、続けて、乳輪に沈むほど押し潰す。
目配せにより互いの意思を確かめた男女が、相手のより感じる部位を探り、愛で合いながら、高みへと駆け上ってゆく。
咲美がついに藪沼と、夫婦の営みの時同様のレベルで心を通じ合っている。
『はぁぁ……あっぐうう……っあは、あァァァァッ!』
獣のごとき鳴き声を発し続ける咲美の乳房に、奴の指が食い入り、無残にもひしゃげさせられていた。
(僕には、できない)
愛する妻が痛みに呻くさまを見たくないと思うから。ゆえに、決して成せぬこと。
それを今、目の前で他人が施している。焦らしに焦らされ感度が高止まりしている状況だからこそ引き出せた、痛みの先にある快感を、咲美が初めて味わわされている。それも、誰よりも忌み嫌っていた男の手によって──。
「くっ……うぅぅぅ!」
悔しさが、敗北感が募り積もる。そうすれば咲美が快楽を得るとわかっても、やはり彼女の泣き顔を見たくないがためになせないであろう己の不甲斐なさに、腹が立つ。
しかしそれこそが、今身の内に奔り巡る歪な悦の根幹であり、糧であるということも、重々理解している。切なさと恍惚が入り混じる悦波を浴び続けた肉竿が、いよいよ限界へのカウントダウンを、忙しく重たい脈動という形で刻み始めていた。
「咲美と、一緒に……っ、僕がっ、咲美をっ!」
実際に咲美を果てさせるのは藪沼だ。それでも同時に果てることで、疑似的でしかなくとも咲美と至福の時を共有したい。
『出すよっ、出すよぉぉっ』
前回注いだ種汁を掻き出す。そんな当初の建前をかなぐり捨て、獣欲漲らせた男が吠え立てた。悦楽の只中にある咲美も、当たり前に受け入れ、ただただ尻を振る。
『は、ひぁぁぁっ! はひ、ぃいいっ! ぁあっ、早くっ、はやっくううう!』
扉の前で待つ夫のことを慮ったのか。
(もう一秒も待てない、早く欲しいと……股座をヒクヒクさせて……っ)
カメラの位置の都合上、相変わらず結合部は視認できない。けれど、彼女の腰振りに合わせてけたたましくなる三つの音色──盛大に波打つ湯の音と、男女の肉のぶつかる音、そして嬌声──が、想像を肯定する。
『ごめん、なさいっ、智……あた、ひぃぃっ、またイッちゃう……よぉっ』
「……咲ッ、っく、うぅぅ、っ……!」
悦の高みに上り詰める寸前にあっても、妻の胸内には夫への思慕が居残っていた。
喜びに心満たされ、ゆえにつきまとう哀しさにも衝き動かされ、肉竿を強く、折れるほどに握り締める。
『っふ、おおおお! イけっ、咲美ィィィイッ!!』
同時に藪沼が、膣壺に肉砲身を、根元まで一気にうずめた。
『んひッ……いぃああああああ─────ッッ!!』
尻がたわみ潰れるほど強烈な一撃を見舞われた女の膝から下がガクガク揺れ、甲高い──周囲をまったく顧みない嬌声が迸る。
舌を突き出し、よだれと汗と、他人棒を呑み食んだ膣唇から潮まで漏らし散らして、絶頂を極めた咲美。その、ぐるりと裏返る眼差し、締まらない口唇。底抜けに浅ましく、無様で──とことん愛おしい。
「はぅッッ! は、あぁぁlっ、ああっ、はーっ、は、ぁぁぁっ!」
妻の媚態に魅入られたまま、夫の肉竿もまた自慰の果ての吐精、妻と同時の絶頂にこぎつけた。情けなさと共にこみ上げた甘露な衝動に抗うことなく、痙攣する肉の竿をなお扱き、噴き上がった種汁は、今日一発目とあって濃く、擦る手指と、床にべっとりとへばりつく。
『おっ、おぉぉぉっ! ふーっ、っふぅぅ、そうだっ、搾り取れ……っ』
咲美の背に覆い被さる男の腰が、ぐっと押しこまれた状態で固まり、小刻みな痙攣を放っている。
男の腰の震えは下肢にも伝わり、すぐ前方の咲美の脚と擦れ合う。その微細な衝撃にすら、最高潮の性感を炙られて、男女双方が荒い息遣いを整える間もなく喘ぎ。
肉悦の極みを少しでも長引かせたい。切なる想いを、目と目で意思疎通し、共有して、隙間なく寄り添った互いの腰を摺りつけ合っていた。
『ふぅっ、う、あぁぁ……は、ひぁっ、ン……まだ、出て……るぅぅぅ』