ヤブヌマ 侵食されゆく妻の蜜肌

画面越しに慕情を訴える他ない己と、画面内で濃厚に交わる男女。藪沼を恨み、羨みながら、その藪沼に貫かれて喘ぐ咲美により熱のこもった思慕を注ぐ。歪な形と知れども離れられない、忘れじの蜜の味を、自慰摩擦による甘く切ない痺れと共に噛み締めた。

『あっ、やっ、あああっ、イッ、やはぁっあっあひぃああッ!』

画面では、先に焦れの解消された膣穴が、また繰り返し突き上げられて甘美に酔いしれている。角度的に結合部は視認できなかったが、喜々と震え跳ねる妻の熟れ尻が、事態をつぶさに知らせてくれた。

捏ね繰り回されている乳首も、左右競るようにぷっくりと、藪沼の手中で勃起し、愛でられるがまま、喜悦に戦慄いている。それが律動のたび隠しカメラの方に迫り出してきて、忌み嫌う男の手に甘え摺りつくさまを鮮明に見せつけた。

誰の手であろうと、性感を高めさせられた女体は卑しく呼応する。いかに貞操観念が強かろうと、本能的な飢えには抗えるものではないのだ。咲美は、決して例外などではなかった。

(それでも……それでもっ、僕は……!)

彼女のすべてを知りたいと願う。愛しい妻の醜い部分を覗けた瞬間の暗い喜びを、視聴しながら扱く肉竿に宿る卑しい悦びを、生涯手放せないだろう。

『イきたいならOKしてっ。でないと……』

言葉尻を待つことなく、藪沼の手と腰の動きが止まった。

焦らされた末にやっと悦を満喫し始めたところだった女の尻と背が、即座に切なさを訴える。

『……ッ、そ、んな……卑怯っ……ですっ、うぅ……ふっ、うぅ……ッッ……!』

いったん高まってしまった感度が、刺激がやんだからといって鎮まるはずもない。欲をかかずにいられぬ女の性と、悦に呑まれて崩れかけの妻の矜持。いずれが勝利を収めるか──考えるまでもない。

わずか一分弱の煩悶の末に、咲美の口唇が、夫の期待した通りの答えを紡ぎだす。

『……ぜっ、絶対に、内緒にして……くれ、ますか……』

意地悪く追いこむ男を睨み責めるのではなく、逃げ道を用意してくれたことに感謝するように媚びた上目遣いと上ずり声を捧げ、彼女は許諾の意思を示した。

『も、もちろんさぁ! 絶対秘密にするっ!』

さも予想外だったというように、藪沼が奇声を上げる。その下手な演技に気づいていたのかどうか。仮に気づいていたとしても、胸と股間の訴えに屈してしまった咲美に、刺激再来の機会を逃すという選択肢はなかっただろう。

『あと一回だけでいいんだっ! だから、会ってくれるねっ!』

ぐっと腰を押しこみながら、乳輪を指腹でなぞり、男が念押しする。それによりわずかの迷いすら断ち切られた愛妻が、より一層甘えた声音で男にすがった。

『んぁッ! ああ……は、ぅんんっ……一回、だけ……?』

本当に一度だけか、と問い質すつもりだったのか。

一度だけしか会ってくれないの? と、拗ね甘える思惑を秘めていたのか。

おそらくは両方の意味合いがこめられていたのだと思う。

「あぁ……っ、ぁ……っ、咲、美ィィッ……」

愛しき女が、肉の欲に引きずりこまれてゆく。それをこそ極上の蜜と受け止めて、卑しき夫の肉竿が悦びの脈を打ち放つ。堆積し続けた悦は軒並み弾丸となって竿の突端へと装填され、発射の時を喜々と待ちわびている。

(もうじきだ。もう、すぐっ……)

みじめで愛しい絶頂に耽溺できる。できれば、いや、必ず、咲美と共に果ててみせる。そうして得る恍惚が至福であると、すでに身をもって知っているから。

『いっ、一回……きりです……ね?』

映像の中の妻が、再び夫の嫉妬を煽る言葉を紡いだ。本当にそれだけでいいのかと問う疑問調の響きを吐くさなかに、彼女の腰が自ずからうねりを強める。

『うんっ! もちろんだよっ! 約束絶対に守るからっ、ありがとう! ありがとうアサオカちゃんっ!!』

おそらくあえて『もっと欲しいのか』とは問わなかった藪沼の腰も、咲美の求めに応ずるべく、一足飛びに元の調子を取り戻していった。

『ひぁあああんっ、はひっ、あっひあっあっあああああ───っ!』

激しく突き上げられた咲美の背が、幾度ものけ反り、小さな悦波に襲われていることを示す。背の震えがそのまま膣の締まるリズムであろうと想像すると、間断ない快感を甘受している藪沼への憎しみも天井知らずに強まった。

──咲美は、再度の密会に応じていたのだ。

前のDVDの内容だけ観て、一度きりの過ちで終わったのだと安堵していた己のピエロぶりを、自嘲せずにいられない。

(そんな僕に気づかせないように、咲美はいつも通りに振る舞って……)

妻の気遣いが、みじめさを引き立てる。それを糧として喜々としなった肉竿を、離さぬよう握り締め、懸命に扱き上げてゆく。

画面内で肉欲に陶酔している女と、日常を楚々と生きる妻。そのどちらもが紛れもなく愛しい咲美の一部であるというのなら、彼女が今後どれほど痴態醜態を曝そうと、愛情は揺らがない。

「咲美、っ……愛、してる。誰よりも僕がっ、愛してるよっ……!」

自慰しながら愛を叫ぶ。性欲盛んな中学生でもそうそうしないであろう、剥き出しの情愛をぶちまける行為に、没頭する。

画面上で肉悦に溺れゆく妻と競うように。その妻の胎内で果てるべく、性欲最優先で腰を振るい続ける男に対抗するように。自慰の摩擦と、それに伴い肉竿の内を巡る切ない痺れが、加速度的に高まっていく。